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zoom RSS ジェフリーサックス「世界を救う処方箋」は、期待どうりの名著

<<   作成日時 : 2012/09/14 11:59   >>

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アマルティア・セン氏、エマニュエル・トッド氏とならんで尊敬するジェフリー・サックス氏がアメリカの政治と社会を根底から建てなおすための処方箋。必読の書といってもよいくらい、すばらしい本。

例えば、一節、「自由市場経済を支持する保守右派の未熟なリバタリアンは、個人の自由こそ道徳や政府の唯一の正当な目標だと主張する。こうした未熟な考え方のなかでは、個人は自分に有利なことしか知ろうとせず、国税も払わず、社会への道義的な責任にもわずらわされず、他人に直接的な危害を加えないかぎり、なにをしてもよいと思いこむ。 こうした考えを表明するのがティーパーティであり、アメリカの最も富裕な層の多くなのである。

サックス氏は、政治が平均的な国民の想いとはかけ離れている。 富裕層、大企業、ウォール街、石油業界、ロビー・・・等によって政治が歪められている。 それは、2年に一回やっている選挙に金がかかり過ぎ、安定して政策を実施できないためもある。

国民もコマーシャリズムにすっかり馴らされ、考えなくなってしまった。 テレビ視聴時間がアメリカは長く、社会的信頼度の低さと相関がある。 

訳者あとがきにかかれたこの一文が、原題の" The price of Civilization" を良く説明している。
「個々の人間が衣食住と言う基本的なニーズをまかなうには、それほど巨額の金は必要ではありません。ほかの人びとを幸福にする行為が人生の充足感を得るのに大きく寄与するとしたら、税金を払うのもそれほど苦ではないはずです。困っているひとを助け、社会全体を幸福にするために税金を払うのは「文明を金で買う」ことなのです。」



ジェフリーサックス「世界を救う処方箋」(早川書房  2012.5.20)☆☆☆☆☆
第一部 大崩壊
第一章 アメリカの経済危機を診断する
第二章 失われた繁栄
第三章 自由市場についての誤った考え方
第四章 公共目的から手を引く政府
第五章 分裂した国家
第六章 新しいグローバリゼーション
第七章 八百長試合
第八章 注意散漫な社会
第二部 豊かさへの道
第九章 共感に満ちた社会
第十章 豊かさをとりもどす
第十一章 文明の対価
第十二章 効率的な行政のための七つのルール
第十三章 立ち上がるミレニアム世代

その他の印象的なフレーズを少し引用しよう。

「レーガン革命のおもな結果として生み出されたのは具体性をもった政策ではなく、政府の役割への新たな反感であり、所得援助を政府に依存する貧困層への新たな軽蔑の念であり、富裕層に社会の道義的責任を放棄させようとする新たな誘いだった。」

「リバタリアンは、富裕層がその他の層にたいして負うべき社会的責任を免除させようとしている。 ・・・ 第一は道徳上の主張であり、人はみな自由に対する最優先権をもつ・・・・第二は政治的、実践的な主張であり、自由市場のみが、政府の圧政から民主主義を守るというものである。・・・第三は経済的な主張であり、自由市場さえあれば繁栄を確保するのに十分だとする態度である」

スティグリッツの著作でも、レーガンとサッチャーの、当時、もてはやされた施策が、問題の端緒だったことがわかる。 一見、新自由主義は道理のように聞こえるし、その歯切れの良さに酔うことがある。 しかし、殆どエビデンスの無い、単なるイデオロギーであって、まともな経済政策ではなかったのだろう。

小さな政府は魅力的だ。 公務員や政治家を減らせと言う主張は小気味よい。 しかし、「市場結果の公平性と持続性を、社会への広範な所得分配も含めて保証するためには、政府に依存」 しなければならないから、それなりの規模とスキルは政府には必要なのだ。

「市場システムは、政府機関が担う三つの役割によって補完されるべきである。 つまり、インフラや科学研究や市場規制などの公共財を提供すること。所得分パイの基本的な公平性を確保し貧困からの脱出を長期にわたって支援すること。そして、未来世代の利益のために脆弱な地球資源の持続性を高めること」

「政府が直接提供するよりも民間契約者が請け負ったほうがおのずとコストパフォーマンスがよくなるという考え方は一連の誤解にもとづいている」 ・・・・確かに、こういう誤解がある。 しかし、誤解と気づくのは難しい。 あまりに政府、自治体のていたらくを見続けてきたからだ。

「今日のアメリカで最もむずかしい課題は、他者への共感である」

「私たちは、すばらしい富と生産性をもつ国家を作り上げた。だが、この国は、貧しい国民を惨めな生活環境のなかに放置して恥じず、世界の最貧国の人びとについては完全な無視を決め込んでいる」

サックス氏は目標を掲げ、その各々について、かなり細かなロードマップを作製している。

目標1. 雇用の促進と労働環境の向上
目標2. 教育の質を高め、教育の機会を増やす
目標3. 貧困を減らす
目標4. 環境破壊をさける
目標5. 国家予算のバランス
目標6. ガバナンスの向上
目標7. 国家安全保障
目標8. 国民の幸福と人生の充足度を高める

マクロ経済学者なのに、保育にまでめが行き届いているのは、さすがサックス氏だと、いよいよ、尊敬してしまう。

「エスピン=アンデルセン」の説得力のある記述によれば、スウェーデンの特徴は公教育の支援にあるのではなく、子育て中の家族を、その子どもたちがまだ小さい時から、支えることだという」

ケネディ
「私たちはこの六十年代のうちに月に行くなどの選択をしましたが、それは簡単だからではなく、困難だからです。この目標は、私たちが努力と技術のすべてを結集したとき、どこまでやれるかを測るのに役立つでしょう。」



お薦めとされている本
ジェフリーサックス「貧困の終焉」
レスター・R・ブラウン「地球に残された時間」
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