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zoom RSS ジョゼフ・E・スティグリッツ「世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠」

<<   作成日時 : 2015/08/26 08:55   >>

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お薦め本だ。 私は、最近、経済学は現実の課題に対する処方箋を作れる「学」になりえていないのではないかと思っている。 フリードマンや竹中平蔵などの経済学者は世のためになっていないのに、政権の政策を左右する。  アマルティア・セン、ジェフリー・サックス、ポール・クルーグマン、そして、この人、ジョセフ・E・スティグリッツは、世のため人のためになっている経済学者なのに、十分政策に反映できていない。 

この4人の著作は、出来る限り読みたいと思う。 この本は、ニューヨークタイムスなどに掲載された、60本弱のコラム記事や論文などをテーマ別に整理し、若干の解説を付け加えたものだ。

「世界の億万長者85名が所有する資産価値が、世界人口の下位半分、すなわち30億人分の資産価値に匹敵すると指摘」(2014)される現在、「上位1%が所有する冨は、世界の総資産の半分に迫りつつあり、このままいけば、2016年には、1%と残り99%の資産額が肩を並べるという」見通しだ。  そして、2008年もアメリカの失敗。  「個々の失敗の原因は、ほとんどひとつに帰着する。市場には自己調整能力があるのだから、政府の役割は最小限にすべきという考え方だ」 そして、「今日、不平等はふたたび劇的に拡大している。過去三十年で決定的に実証されてきたのは、主犯のひとりが、“トリクルダウン”理論であるという事実だ」  

スティグリッツ氏は、ただ正義ではないから不平等が悪だと言っているわけではない。 経済的にも正しくないからだ。「最上層に金が集中すればするほど、総需要が低下するという因果関係は、単純明快で揺るぎがない」、そして、 「不平等拡大は機会縮小と表裏一体の関係にある。 機会均等が崩壊することは、最も貴重な資産である人材を最も生産的な方法で活用できないことを意味する」。 さらに、「不平等をもたらす歪みの多く−市場の独占力や利益集団に対する優遇税制−は、経済の効率性を毀損する」からだ。 つまり、平等社会の方が国全体が豊かになるのだ。

不平等は経済の問題というより、政治の選択の問題だ。 「金融危機の直前、ブッシュ大統領は予算がないという理由で、貧困層の子供向けの健康保険法案に拒否権を行使した。他方、銀行業界を救済するための7000億ドルの予算は、突然どこからともなく湧き出してきた。 正道からはずれた一企業を救うための1500億超も同様だ。 要するに、富裕層のセーフティネットに出す金はあっても、貧困層のセーフティネットに出す金はないのである。 当時の論調は、銀行を救えば経済も救われ、結果として全員が恩恵をこうむるというものだった。 もちろん、これはむき出しのトリクルダウン理論にすぎず、当然ながらまったく効果がなかった。 最富裕層が繁栄を謳歌する一方、一般市民の暮らし向きは四半世紀前より悪化してしまった。」

TPPも企業のために、他国の規制を回避する手段になっている。 そして、米国流にみならう日本の行方も、あやしい。
  


その他、興味深い言葉



・「経済成果を測る真の指標と言えるのは、平均的な家庭の暮らしがどう向上したかだろう」・・・GDPでは指標にはならない

・「会社の業績が良好なら、最高経営責任者はストックオプションの形で巨額報酬を受け取り、業績が不振なら、ほぼ同じ額の報酬が別の形で与えられるのである」・・・これを不正義と言わずになんていおう

・「経済学者たちは、自己利益の追求が社会の福祉を向上させると銀行に信じ込ませた。経済学者たちは、市場を放置しておけば民間セクターが繁栄を謳歌し、社会全体がその恩恵を受けると監督官庁に信じ込ませたのだ」・・・なぜ、経済学者によってこんな差ができるのだろう。 経済学は、「学」としていい加減なものなのに権威を持ちすぎるのだ。 

・「この連邦最高裁の決定(シチズンズ・ユナイテッド判決)は、無制限な企業献金に扉を開き、発言権の平等に悪影響をおよぼし、“アメリカ様式の腐敗”という風土病を国内に蔓延させた」 ・・・ こんな結末が分かりきったことをなぜ決めてしまうのだろう

・「要するに、経済面の不平等の大部分は、レントシーキングの結果とみなせる」・・・「レントシーキング」の意味がいまひとつわからないが、要するに、努力せずに不法に儲かる「レント」探しなのだろう。

・「最上層からのトリクルダウンではなく、中流層から上下に冨を伸ばしていくのが最善の方法である、という理解もすでに広まっていた」・・・・・「わたしは正反対のトリクルアップを試すべきだと主張した」 ・・・日本はまだトリクルダウン理論が隆盛を誇っている。 

・「ピケティの議論は不平等を資本主義の自然な結果ととらえている。」・・・ここが、スティグリッツとの違いだ。 しかし、「資本主義」には、政治と結びつくという習性、属性があるのではないかる そう考えれば、言っていることの違いは小さい。 

・「実態は、強者から弱者を守る“法の支配”ではなくなっている。むしろ、強者が弱者から搾取できる“法の支配”なのだ」

・「今日のアメリカでは、「万民のための正義」という誇り高き主張は、もっと控えめな「弁護士費用をまかなえる人のための正義」に置き換えられつつある。 そして、まかなえる人の数は急速に減少している」

・「配管工が稼いだ賃金と、(長期的)投機から転がりこんでくる利益が同額のとき、前者の税率の方が高い理由を、一体選挙民にどう説明したらいいのか」

・「社会がうまく機能するには、最低限の連帯感と一体感が必要となる。そして、公平な税制が存在しなければ、目的を共有しているという感覚は生まれない。もしも人々が政府を不公平であり、1%の1%による1%のための政府だとみなすなら、アメリカ合衆国の民主主義に対する信頼は間違いなく消滅するだろう」

・「わたしはアメリカ社会のさまざまな側面を説明してきた。冨の不平等、所得の不平等、教育と医療を受ける権利の不平等、機会の不平等。 しかし、おそらくアメリカ人が機会均等より大事にしているのは、法のもとの平等だろう。 今や不平等はアメリカの理想の核心をも侵しているのだ」

・「最悪な例をひとつあげよう。TPPのもとでは、企業は国際調停機関に損害賠償を申し立てられるが、現地政府による不公正な徴用を訴えるならまだしも、規制の結果として失われた潜在利益の逸失分まで請求が可能なのだ」・・・現にフィリップ・モリスはウルグアイの喫煙規制を訴えた

・(自由貿易圏交渉は)「間違いなく真の自由貿易制度の構築を目的としていない。隠された目的は、貿易体制を管理すること。 この場合の“管理”とは、西側諸国の貿易政策を長いあいだ支配してきた利権に奉仕するという意味だ」

・「この間、大きな四つの変化があった。」・・財政力を超える減税、二度の金のかかる戦争、メディケアの導入後、政府が薬価の価格交渉力を10年も禁じられた。そして、世界大不況 」




ジョゼフ・E・スティグリッツ「世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠」(徳間書店2015.5.31)
プレリュード
<ブッシュ氏の経済学の成績・・・2007.12>
<資本家は欺く・・・2009.1>
<ある殺人事件の考察・・・2009.7>
<金融危機から脱出する方法・・・2008.10>

第1部 アメリカの“偽りの資本主義”
<えせ資本主義から抜け出すために>
<1%の1%による1%のための政治・・・2011.5>
<1%の問題・・・2012.5.31>
<低成長と不平等は政治決断の結果であり、わたしたちは別の道を選択できる・2014.11>
<不平等のグローバル化・・・2013.2.6>
<不平等は選択の結果・・・2013.10.13>
<21世紀の民主主義・・・2014.9.1>・
<偽りの資本主義・・・2014.9>

第2部 成長の黄金期をふり返る
<わたしには夢があった>
<キング師がわたしの研究に与えた影響・・・2013.8.27>
<アメリカの黄金時代という神話>

第3部 巨大格差社会の深い闇
<底辺から浮かびあがれない暮らし>
<機会均等、アメリカの神話・・・2013.2.16>・
<学生ローンとアメリカンドリームの失墜・・・2013.5.12>・
<一部のための正義・・・2010.11.4>
<残された解決策はひとつ・・・2012.8.12>
<不平等とアメリカの子供・・・2014.12>・
<エボラと不平等・・・2014.11.10>

第4部 アメリカを最悪の不平等国にしたもの
<税金を払わないのは誰なのか?>
<富裕層のためアメリカ型社会主義・・・2009.6.8>・
<99%に不利な税制・・・2013.4.14>
<グローバル化は収益だけでなく税金にも影響を与える・・・2013.5.27>
<ロムニー理論の誤謬・・・2012.9.20>

第5部 信頼の失われた社会
<フェアプレー精神は衰退した>
<デトロイト破綻からの間違った教訓・・・2013.8.11>
<我ら誰も信じざる・・・2013.12.11>

第6部 繁栄を共有するための経済政策
<誤まったグローバル化が人々を苦しめる><政策が巨大経済格差を形成するしくみ・・・2012.6.22>
<ラリーサマーズではなくジャネットイエレンがFRBを率いるべき理由・・2013.9.6>
<常軌を逸したアメリカの食糧政策・・・2013.11.16>
<グローバル化のマイナス面・・・2014.3.15>
<自由貿易という言葉遊び・・・2013.7.4>
<知的財産権が不平等を拡大するしくみ・・・2013.7.14>
<特許を与えないインドの英断・・・2013.4.8> 
<極度の不平等を是正する・・・2014.3.20>
<危機後の危機・・・2013.1.7>
<不平等は必然ではない・・・2014.6.27>

第7部 世界は変えられる
<成長する国々をめぐる旅>
<モーリシャスの奇跡・・・2011.3.7>
<不平等なアメリカが学ぶべきシンガポールの教訓・・・2013.3.18>
<日本を反面教師ではなく手本とすべし・・・2013.6.9>
<中国の国家と市場のバランスを改革する・・・2014.4.2>
<街へと導く光・・・2014.5.7>
<地球の裏側から見るアメリカの幻影・・・2014.7.9>
<スコットランドの独立・・・2014.9.13>

第8部 成長のための構造改革
<“雇用なきイノベーション経済を”改革する>
<アメリカに本来の機能を取り戻させる方法・・・2011.9.7>
<回復の足を引っ張る不平等・・・2013.1.19>
<雇用記・・・2012.1>
<潤沢な時代の稀小・・・2008.6.6>
<成長のための左傾化・・・2008.8.6>
<イノベーションの謎・・・2014.3.9>
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