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zoom RSS 伊地知紀子「消されたマッコリ」は、隠れた戦後史

<<   作成日時 : 2015/08/27 15:28   >>

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和歌山の北、大阪府岬町に多奈川という街がある。 1938年の国家総動員法・国民徴用令によって、当時「日本人」だった半島の朝鮮人を「強制連行」して、一部がこの多奈川の街の大日本工機とか川崎造船などの軍需工場に徴用されたらしい。

そして、敗戦(解放)によって、講和条約発効直前、法務府の通達によって、「日本人だった朝鮮人」は「外国人」となり、日本政府は、いわば、彼らをほったらかした。 出入国管理令による強制送還の対象にもなった。 

就職の世話もされず、当然、朝鮮人を雇う企業もなく、故郷に帰る金もなく残った朝鮮人も、自ら選択して残った朝鮮人も、帰りたくとも朝鮮戦争で帰れなくなった朝鮮人も、みな貧窮していた。  生活のために、持っていた酒造りの技術で、マッコリ(上澄みは清酒、下はドブロク)、焼酎などを作り始め、やはり貧しい日本人が販売したり、日本人労務者に小売して生活の足しにしていた。 なかでも、「多奈川一級酒」は、近隣の「福田2級酒」などと並んで、名を馳せたらしい。 

当然、密造のために、警察・税務署は、「暁の急襲」と称される手入れを重ねたり、警官による朝鮮人射殺も発生するほどの事件になった。 酒の密造という罪のわりには、過剰とおもわれる捜査、摘発は、地裁の裁判官をして、日本国憲法・基本的人権の精神に反するという、差別問題化されもしたようだ。  


筆者は、現地で、生存している関係者への聞き取り取材し、文献、新聞などの資料も丹念にあたり、かなり冷静な筆致で紐解き、記述している。 引用の記述も出典が明確であるし、学術的な色彩もあって、感情的にならない、良い本になっている。 

歴史修正主義や排外主義が無視しにくい、いまという時に、筆者の言う、「草の根」の調査が下敷きとなっていることは、心強い限りである。 

なぜ、多奈川の酒なのだろうかという、素朴な疑問は、補章の説明で明快になった。 筆者の祖先がこの地に関係していたようだ。 

ところで、「ほろよいブックス」のわりには、マッコリの製造そのものについても、けっこう堅い文章だったので、印象が薄かった。 隠れた戦後史の勉強にはなるが、ほろ酔いにはほど遠い。(笑) 






伊地知紀子「消されたマッコリ」(社会評論社2015.5.31)
第1部 多奈川一級酒
 第1章 瓦の村から軍需工場の町へ
 第2章 敗戦/解放と「多奈川一級」酒
 第3章 「暁の急襲」と多奈川事件
第2部 酒がつなぐ暮らし・人・生き様
 第4章 生きんがために
 第5章 受け継がれていくもの
補章 路地の横道

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