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zoom RSS ポール・ロバーツ「「衝動」に支配される世界」

<<   作成日時 : 2015/12/26 08:55   >>

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原題が”The Impulse Society: America in the Age of Instant Gratification” この邦題が「「衝動」に支配される世界 我慢しない消費者が社会を食いつくす」・・・読後の印象も、この邦題は、まちがいはないけれど、なんとなくしっくりこない。

 「・・・私たちの社会は、たとえ、結果がどうなろうとも 「今すぐに欲しい」社会になりつつある。すなわち、「インパルス・ソサエティ(衝動に支配される社会)」となりつつある」というように、「消費者が欲しがるものを与えることに驚くほど長けた社会経済システム」が、消費者だけでなく、社会のすべてに行き渡ってしまった。 

筆者は、それを歴史的に説き起こす。 

ヘンリーフォードは従業員もそれなりの収入を得て、買える自動車を創るため、大量生産の単一モデルとして安価を目指した。 アルフレッド・スローンは、ステータスに沿ったモデルをつくり、毎年わずかなモデルチェンジで購入意欲をかきたてた。 そのあたりが端緒だ。 

「戦後のアメリカは忠誠の国だった。アメリカ人は「配偶者と結婚生活を続け、政党の集票組織から離れず、応援する野球チームも変えなかった。企業も成長の基盤を築いた地域から離れることはなかった」、つまり、多くの国民はコミュニティを尊重し、会社人間でもあったし、生産者でもあった。 

しかし、経営者もオプションで株を持ち始めた頃、株価を上げるための効率的な方法は、大規模なレイオフの発表だった。 「こうして会社人間の時代は幕を閉じたし、「この産業界で拡大するエゴイズムが最もはっきり表れていたのが、次々に押し寄せる人員削減の波だ」

「唯一増えたのは物質主義だ。 1965年から1995年までの間に、人生の最大の目標として、「金持ちになること」を挙げた大学一年生は、半分以下から75%以上に増加した」 ・・・ そう、金持ちにはなりたい、しかし、コストを払うのは嫌だ。 

そして、金持ちになる方法は、リアリティ番組で有名になること、ドットコム事業を立ち上げて一週間くらいでグーグルに売る、ゴールドマンサックスで働いて、年寄りからカネを巻き上げる・・・一生懸命働けば何とかなると言うモデルはもう存在しない、のだ。
 
これは、「資本の効率化―すなわち「どんな手段を用いてでも高いリターンをあげる」というウォール街の新しい考え方が、ウイルスのように消費者の心の中に飛び移った」ためでもある。 つまり、いまや、国中がウォール街に染まってしまった。

後で苦労すると分かっていても使ってしまうクレジットカードの濫用、経営者が自分の持ち株の価値を維持するためで、将来のための投資をしない自社株買いの流行、大きすぎてつぶせない金融は、IBG, YBG と何かあった時はもういない無責任 ・・・

そして、「経済は、即時のリターンへの欲望を中心に動いており、社会や人が本当に必要とするものを次第に生産できなくなっている」

だからといって、消費者が幸せになったわけではない。

「消費者はより多くの力を持つようになっただけでなく、その力と共により孤独になっていった」し、「自己中心的な文化に生きる人」は、良いもの、価値を問うことなく、「これがどう私の役に立つか」ばかり気にし始める。 そして、社会とのつながりをなくしてゆき、同質のコミュニティの中だけで生き始めた。 

労働者としての個人は、「労働市場全体で、「過去最高の効率を達成するのに必要なコストを吸収するために、経営陣は労働者を道具のように扱っても構わないと考えている」という思いが、どんどん広がっている」

そして、「スーパーPACからの何億ドルもの寄付金が、政治の金融化をほぼ完成させた。もはや政治は単に市場を反映するだけでなく、市場と一体化している」、そういう政治がまともに機能しなくなり、「どの先進諸国よりも公共投資の面で遅れている」、例えば、幼児保育や教育支出がGDPに占める割合は、先進37国中28位、ブロードバンドの早さでは24位、化石燃料が90%で、クリーンエネルギーは中国は米国の2倍にもなる。 

そして、訳者は以下のように要約する。

「消費者一人ひとりが自分の欲求を満たすことを何よりも最優先するようになり、社会全体でそれが当たり前になったアメリカ」、「そこでは個人が完全に市場に取り込まれてしまった結果、自己の要求を満たすためであれば、社会的な責任も他者への配慮も生態系への負荷も一切無視した、モラルの欠片も無い社会ができあがってしまった」


筆者は、当然、証券取引税など、対策を提案しているが、あまり説得力はないように感じる。 





ポール・ロバーツ「「衝動」に支配される世界」(ダイヤモンド社 2015.3.19)
第1部 この社会の主役は誰なのか
第1章 束の間の繁栄と戦後時代
第2章 すべては株価のために
第3章 脳は目先の利益を重視する
第4章 すべてが金融化される社会
第2部 壊れかけた社会の断面
第5章 「いいね!」を渇望する人々
第6章 追いやられ、捨てられた労働者
第7章 もっと新しい、もっと高額な医療を
第8章 ブランド化、マーケティング化する政治
第3部 再びつながり合う社会へ
第9章 私たちはどこへ向かうのか




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