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zoom RSS 山岸俊男「「日本人」という、うそ」

<<   作成日時 : 2016/01/13 18:28   >>

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最後の章で筆者の著作の動機がわかる。企業の不祥事、いじめをはじめ、日本社会の諸問題に対して、伝統的な日本らしさや武士道精神を思い起こし、道徳・倫理の教育を強化すればよいという意見が強い。筆者は、社会心理学の研究を通して、それに強い危機感をもっている。


社会には、「安心社会」と「信頼社会」の二種類ある。「安心社会」は、「メンバー同士の相互監視や制裁といった仕掛けを通じて、集団内部の安定を維持し、よそ者との関係を持つことは歓迎されない。「信頼社会」は、自らの責任で、リスクを覚悟で他者と人間関係を積極的に結んでいこうという人々の集まり」。 安心社会≒武士道≒統治の倫理≒閉鎖的日本の農村社会と、信頼社会≒商人道≒市場の倫理≒都会の個人に立脚する社会という連想がなりたつ。

「市場の倫理 統治の倫理」は、ジェイン・ジェイコブズの理論だそうだ

二つの社会のモラル体系は全く異なり、決して混ぜてはならない。「最終的には「何をやっても構わない」という究極的な堕落を生み出すことになってしまう」からだ。

日本は、大きく言って安心社会から信頼社会に移り変わろうという時期であって、異なるモラル体系である武士道精神に求めるのはまちがいだという。




この主論の前に、日本人らしさなんてないんだ、日本人の「和」なんて、それが得だからそういう態度を取っているだけのこと、デフォルト戦略として謙遜しているだけ ・・・ といった、実験に基づく論理は、おもしろい。  文化伝統で日本人らしさがあるわけではなく、生き抜くための戦略。 江戸時代の武士が滅私奉公なのは、ほかに行けないから、常日頃から忠義を示しておく方が得だというだけ。 その証拠に、戦国時代の武士は、自己アピールの塊だった? 




そのほか、いろいろ、興味深い話題も満載。

・ 「二十世紀の社会科学における。最大の誤りの一つは、「タブラ・ラサの神話」を信じたことにありました。・・・白板に書くように教育すれば人を造れると考えたのは間違い ・・・ なのに、道徳教育を強めたいという政治家が多い。 「二十世紀において国民に対する倫理教育・道徳教育に最も熱心だったのは旧ソ連や中国といった社会主義国家でした」・・・だからいくら道徳教育をしても、美しい国はつくれないし、徹底したモラル教育は利己主義者たちの楽園をつくる。


・ 「日本人は自分たち日本人のことを集団主義的な傾向があると考えているが、但し自分だけは例外」と考えている集団である」 それは、他人の行動を見て、それが本心からの行動だと勘違いする、「(原因)帰属の基本的エラー」と呼ばれる事象だ。  同時に、 「集団主義の社会で個人主義者が排除されるのも、人々が「個人主義者は嫌われるだろう」と”予言”することがそもそもの原因になっている」、いわゆる、「予言の自己実現」である。 


・本当のところ、「日本人一人ひとりの心の特性は集団主義どころか、むしろアメリカ人よりも個人主義的な色彩が強いのではないか」 ・・・ 分かりやすく言えば、 「「人を見たら泥棒と思え」という日本人に対して、アメリカ人は「渡る世間に鬼はなし」ということわざに近い行動をしている」


・「農村のような集団主義的社会とは本質的に「信頼」を必要としない社会であり、逆に都会のような、いわば個人主義的な社会とは本質的に「信頼」を必要とする社会」


・「社会的ジレンマ」・・・協力し合えば全員が得をするのに他人を信じられないために非協力的行動をとってしまう。 そして、「社会的ジレンマの多くは、他の人たちがどの程度、協力行動をとっているか、非強力行動を選んだかによって、がらりと結果が変わってくるのです。そして、その塩目となる比率のことを、心理学では「臨界質量」と呼びます」


・臨界質量に達しない数の協力者がいても、元の木阿弥で、非強力で安定状態になってしまう。一気に臨界質量以上の状況を作らないといけない、それはコストがかかる


・ネットオークションがレモン市場」化しないのは、評判、それもポジティブな評判のもつ呼び込み効果か。 個人の老舗ブランド化。 評価=悪い評判は、ネット社会では名前を変えてリセットされるので有効にならない




山岸俊男「「日本人」という、うそ」(ちくま文庫 2015..10.10)
第一章 「心がけ」では何も変わらない
第二章 「日本人らしさ」という幻想
第三章 日本人の正体は「個人主義者」だった
第四章 日本人は正直者か
第五章 なぜ、日本の企業は嘘をつくのか
第六章 信じる者はトクをする
第七章 なぜ若者たちは空気を読むのか
第八章 「臨界質量」が、いじめを解決する
第九章 信頼社会の作り方
第十章 武士道精神が日本のモラルを破壊する








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内 容 ニックネーム/日時
ジェイン・ジェイコブズの書評・批評をしているプログを探していて、当プログにたどりつきました。

2016年はJane Jacobs生誕100周年です。日本でも、いくつか企画が進んでいます。その一つが「ちくま大学」の「ジェイン・ジェイコブズの思想と行動」
http://peatix.com/event/136573
です。ジェイコブズの『市場の倫理 統治の倫理』も取り上げます。本邦初(!)の倫理学者による本格批評です。

『市場の倫理 統治の倫理』はながく絶版になっていましたが、2月にはちくま学芸文庫から再刊されます。藤原書店の『環 別冊』でも、ジェイコブズ特集が進行中です。5月ごろには刊行されるでしょう。6月には明治大学での国際シンポジウムも計画されています。いまちょっと予定は立ちませんが、Max PageとTimothy Mennel編の『ジェイン・ジェイコブズ再考』も翻訳されます。
塩沢由典
2016/01/15 18:09

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