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zoom RSS 山田優・岩井勇人「亡国の密約 TPPはなぜ歪められたのか」

<<   作成日時 : 2016/09/09 15:22   >>

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TPP何でも早わかりといった類の本ではない。 ウルグアイラウンドを巡る農林官僚、農林族、米国の動きに全体の半分ほど頁を割いているのは、日米の「交渉」には、密約が必ずあり、TPPも同様だと筆者はみているからだろう。 

ウルグアイラウンドにおいて、米国は、日本のコメも例外なく関税化を要求したが、日本は、塩飽氏を中心とする農林官僚だけで極秘の交渉を重ね、関税化を逃れる代わりに、ミニマム・アクセス(MA)枠によるコメの輸入を消費量の8%まで拡大するとことで決着した。 そこには、その半分は米国からの輸入とするというシェア維持の密約があった。

このとき、米国は、ブッシュ政権からクリントン政権に変わっており、取引額ではわずかのコメに引っ張られ、ラウンド全体が成立しないことを恐れた。 日本は細川政権に変わっていたが、農林官僚が頼りにしたのは、羽田孜氏以外は自民党の農林族であった。 

自民党は、TPP絶対反対というイメージで衆院選を戦い、TPP参加をうたう見通しの甘い野田民主を抑え、政権奪還した。 二ヶ月後、安倍政権は前のめりにTPP参加表明して、明らかな公約違反をしたが、「聖域なき関税撤廃」を前提としないのだからいいという論理だ。 

安倍政権は、遅れての参入のため、オバマの要求する条件をすべてのんで、さらに、かんぽ保険にアフラックの代理店をさせたり、 ラムズフェルドの関係するギリアド・サイエンシズ社の高価なC型肝炎治療薬を保険適用にしたり、米国に配慮を重ねて参入した。 

当初は中国も潜在的TPP参加国であったが、南沙諸島、AIIBの動きで、オバマは、日米主導による合意に一層傾いた。 日本のメディアは、日米間で厳しい交渉があり、甘利が頑張ったと報道されていたが、日本は殆ど譲歩を重ね、別に厳しい交渉を甘利が勝ちとったという面は見られない。

農林省も、農林族も、今回、ほとんど蚊帳の外に置かれ、すべて官邸主導で進められた。 JAも抵抗勢力として残ったが、JAの主力は、もはや金融機関なので、準組合員規制をちらつかされるだけで、安倍政権の軍門に下った。

大筋合意には、まだまだ曖昧な、玉虫色の部分が多いが、野田政権がゴールとしていたイメージとあまり変わらない。 コメの関税率はそのままだが、MA枠の輸入には、米国特別枠が儲けられ、一層の赤字が進むことは必定だ。 本当に、TPPが国益に適っているのか、はなはだ疑問。

安倍政権は、TPPは、安全保障の一環とみているので、関税の問題は殆どは譲歩を重ねている。 ところが、オバマ政権は、あくまでも、多国籍企業と米国の実利を追求していて、そこはまったく見方が異なる。 


山田優・岩井勇人「亡国の密約 TPPはなぜ歪められたのか」(新潮社2016.6.25)
第1章 いまも霞が関を彷徨うウルグアイラウンドの亡霊
第2章 日米農業交渉秘録
第3章 国内了解への道
第4章 国家貿易存続の代償
第5章 TPP 日米再「激突」という虚構
第6章 TPP 農業交渉の罠
終章 実利追求型に徹する米国のしたたかさ

そのほか、興味を惹いたディテールをいくつか・・・・

「2012年に始まり、2013年4月に決着した、いわゆる「日米事前協議」において、米国側は、理不尽な要求をいくつも示した。 それは、牛海綿状脳症(BSE)対策で日本がとった米国産牛肉の輸入制限撤廃、米国の生保大手アフラックの保険商品の郵便局窓口販売拡大、かんぽ生命の新商品凍結、米国側の自動車関税撤廃の長期猶予、米国製輸入自動車の簡易認証枠の拡大 −などである。
 結果から言えば、安倍政権はこれらをほとんど「丸呑み」したのだ。・・・交渉結果を見ると、ほぼ米国の要求通りとなっている」 ・・・  遅れて参加するための入場料

谷内正太郎内閣特別顧問・・・日米同盟は、ビスマルクのように、騎士と馬の関係、日本は馬だとしても、騎士のいうとおりに動くとは限らない、というが・・・

「結果として、当選した自民党議員のうち七割近くが、選挙公約でTPP傘下に反対を表明していた」・・・「ウルグアイラウンドで・・コメ市場の部分開放を受け入れたことをフレームアップして細川政権を攻撃し、倒閣へと追い込んだ1993,94年のときのことを教訓にしているように思える。農業問題はいったん火がつくと、容易には収束しない。自民党はそれを分かったうえで、政争の具として利用したのだ。TPP推進で選挙を戦えると考えた野田の見通しの甘さとは、まさに好対照だった」

数寄屋橋二郎で、オバマと安倍は大枠ができた・・・コメは国家貿易を維持、牛肉は9%・・・・

「細川内閣成立による自民党支配の終焉や、小選挙区制の導入で「族議員」の崩壊が始まって以降も、農業版の政官業「トライアングル」はなお堅固であり、後の「小泉改革」を経て弱体化しながらも影響力を温存してきた。
 安倍政権にとって「岩盤規制」の元凶となっているこのトライアングルは、構造改革や国際競争力の強化など新自由主義的な観点からのみならず、政治の意思決定システムを官邸主導にするためにも、解体しておく必要があったのだ」

「共済・保険分野は、当初はTPP交渉の焦点ではなかった。しかし、安倍政権がTPP交渉に前のめりになるのを見たオバマ政権が、いわば「入場料」を払わせるべく、日本の保険市場を標的にしたのである。 これに競争条件が有利な共済の存在を苦々しく見てきた日本の民間の保険会社が便乗する。準組合員制度に制限を設け共済の事業を抑制するよう、安倍政権を煽ったのだ」

「萬歳は、JAグループの主力事業が金融にシフトしていたことに、あまりに無頓着だったと言わざるを得ない。規制に縛られた金融機関が、当局に逆らうことなど、そもそもできるはずがなかったのである。」

「安全保障の観点を最大限に強調する安倍政権と、経済的な利益、とりわけグローバル企業の利益を追求するオバマ政権との間で、TPPの捉え方が根本的に異なることを安倍はどこまで理解していたのだろうか。オバマは国内調整に苦しみながらも、日米交渉では米国の利益を貪欲なまでに追求し、それをしっかり確保していく」

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