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zoom RSS ベアテ・シロタ・ゴードン「1945年のクリスマス」

<<   作成日時 : 2016/09/20 08:28   >>

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ベアテ・シロタ・ゴードン氏はキエフ生まれの両親の下、1923年、ウィーン生まれのオーストリア人。ピアニストの父親が山田耕作に請われて来日、東京音楽学校(芸大)教授となったことから、5歳から15歳までの10年間、東京乃木坂で過ごした。

その後米国に単身留学、両親は戦中出国できず軽井沢で耐乏の日々を送る。ベアテさんは6か国語の語学力を活かしタイム誌のリサーチャーなどをして糊口をしのいだ。終戦を迎え、ベアテ氏は両親の安否を気遣い、GHQに応募、民政局の一員として厚木に降り立ち、様変わりした日本を目にした。
自伝の本だから、両親の歴史、乃木坂での暮らし、米国での暮らし、日本に戻ってからのGHQの仕事、憲法草案作成の経緯、米国帰国後の仕事、市川房江氏との交流、アジア・ソサエティでの呼び屋の仕事・・・と続くが、やはり私の関心は憲法草案作成の過程だ。 

ベアテ氏は博士、中佐とともに人権条項のチームに配され、特に女性の人権について担当した。日本で暮らし、日本女性の木蝋を知っているから男女同権に関する多くの条項を提案した。その中には、妊婦と保育への公的援助、非嫡出子の平等、長子の単独相続廃止、養育は夫婦合意の必要、児童の医療無料化、児童の雇用禁止、女性の職業制限撤廃・同一賃金、最低賃金は国際基準、母性の保護・・・など、人権全体で41条も草案がつくられたが、憲法ではなく個々の法律で制定すべきなどの理由で31条まで削られ、若いベアテ氏は反論もできず残念だったと回顧している。

 男尊女卑傾向のある改憲派男性が読めば、やはりGHQは一週間で憲法をつくり、日本に力で押しつけたじゃないか。しかも、22歳の若い女がつくったものじゃないかと、我が意を得たりとばかり利用されるだろう。
しかし、経緯を詳らかにすれば、その前日本政府がつくった草案が明治憲法と殆ど同じだからマッカーサーとしてはGHQがモデルをつくるしかなかった。天皇は元首のまま、国民は臣民のままだし、人権はおろか、国民主権でもない憲法を認めることができるはずもない。

モデルは理解し、受け入れてくれると思うが理解しなかったら力づくでも受け入れてもらう、ということだ。それを持って、押しつけられたというなら、押しつけられても仕方ないだろう。敗戦国が明治憲法と同じものを作っても意味ないだろう。

一週間というのは、2/1の毎日新聞のスクープで、日本側の草案がまったく明治憲法と変わらないものと知ったGHQが、2/13の日本側との秘密の会合までに、草案のモデルをつくる必要があったからだ。 更にマッカーサーが急いだのには、もっと深い事情がある。2/26には極東委員会が発足し、そこには、天皇の戦犯訴求をしたいソ連、豪州、ニュージーランドも参加するので、その時までに、新憲法の骨格を決め、天皇を守りたかったという背景がある。

だから、押しつけ憲法だと攻撃する手合い、なぜか右傾の人が多いが、彼らは、新憲法を受け入れず天皇が戦犯になった方が良かったとでもいうのだろうか。新憲法は嫌だ、天皇はそのまま、民主主義も嫌だ・・・これは敗戦国としては贅沢すぎる。

ベアテ氏らは、この九日間、殆ど徹夜状態で、他の仕事を置いて憲法草案作りに集中したわけで、むしろ、一週間で作り上げたにしては素晴らしい出来だと誉めるべきだろう。月に一回の会合で一年掛けるより、この九日間の方がよほど密度が濃いだろう。

ベアテ氏は確かに若いが、別にベアテ氏だけでつくったものではない。人権の委員会は、ベアテ氏を含む3人で、中佐と博士だ。 民政局は民間人、それも大学教授クラスの人が多く、決して素人集団ではない。法律のプロの松本丞治よりはよほどいい仕事をした。

必ずしも押しつけとは言えない、という理由に、GHQの草案をもとに、一条一条GHQと日本側が協議を重ねている。例えば、土地の国有化などのレッド条項は日本側が拒否したし、GHQの草稿にあった一院制は、貴族院を残したい日本側の抵抗で二院制になった。男女同権を謳ったGHQ案は、日本側に日本には適さないと拒否されたが、ケーディス大佐の、日本女性のためにシロタが書いたのだと説得すると受け入れたという。・・・だから、GHQ案そのままではないのだ。


ベアテ・シロタ・ゴードン「1945年のクリスマス」(朝日文庫2016.6.30)
T 焦土の日本に帰る
U 父と母の町・ウィーン
V 乃木坂の家の日々
W 大戦下のアメリカで暮らす
X 日本国憲法に「男女平等」を書く
Y 既婚女性とやりがいのある仕事
Z 新しい道 アジアとの文化交流


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