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zoom RSS 山口栄一「イノベーションはなぜ途絶えたか―科学立国日本の危機」

<<   作成日時 : 2017/03/18 08:05   >>

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「日本は80年初頭から大企業の研究所における科学研究を中心に技術革新を行ってきた。 ところが、大企業は90年代後半に研究機関を次々に閉鎖・縮小していった」。 ところが、同様に研究所を閉鎖した米国(例えばベル研は90年、IBMは91年に基礎研究から撤退)は、イノベーションが続いている。 

筆者は、その違いを説明する一つの要素は米国のSBIRだという。

SBIR(Small Business Inovation Research)は、「基礎研究の成果と実用化・製品化に横たわる乗り越え難い困難は「死の谷」と呼ばれる」が、その死の谷を公的なプログラムで融資をして、起業させる仕組みだ。 政府機関が購買の一定の割合をSBIRベンチャー企業から購入するなどのルールもある。

「米国は、「イノベーションはサイエンス型ベンチャー企業から生まれる」という画期的な基本理念を礎にSBIR制度を創設し、戦略的に医薬品産業を育成しようとしてきたということがわかる」というが、日本でまねた制度は似て非なるものだ。

しかし、筆者は、制度的な仕組みだけでなく、もっと本質的な課題が日本にはあることを語る。 

日本には「科学者」はいない。 「研究者」と「技術者」がいるだけだ。  
同様に、企業には、CTOすらほとんどいないが、CSO(Cheif Science Officer)はまったくいない。 

だから、「科学研究およびサイエンス型産業創造のプロデューサー」や「科学から経済価値・社会価値を生み出すイノベーター」である科学者は、米国には居ても日本にはいない。 だから、ベンチャーの研究者の成果を、吟味して適切にビジネスに育てる指導を出来る人がいない。 

そこには、「専門家」以外を排除する空気もある。 

筆者は、原発の「専門家」より、優秀な物理学者のほうが正しい判断をできたという。 また、JR福知山線の事故も設計の過誤であって運転手ではないという。 「原発事故と転覆事故という二つの事故で、なぜ「技術経営の過失」が生じたのか。その根源をたどると、東電もJR西日本もイノベーションを要しない組織だったからではないか、という考えに行きつく」

イノベーションといえば、クリステンセンだが、その破壊型も含めたイノベーションの種類の話は、どうもわかりにくい、演繹と帰納と創発の論も私には理解不能だ。 しかし、なんとなくわかる。 さらに、異なる分野の科学者が回遊して「知の越境」するのがよいという。それも、なんとなくわかる。 そのための「共鳴場」が必要だ。

「共鳴場をつくる最も確実な方法は、大学でその研究に携わったチームメンバーが、「場」の構成メンバーとして「知の創造」を「価値の創造」に転じさせることだ」し、企業では、事業部などの枠にとらわれないレイヤーで用意するひつようがある。

しかし、筆者は結構悲観的だ。 「これは企業におけるだけでなく、物事の本質に下りて考えるという習慣が文化や思考パターンの基盤になっていない日本の普遍的な問題と言える」と。 わたしもそんな気がする。 日本では持続型のイノベーションはできるが、破壊型ができるのは余ほどの幸運に恵まれないと難しいと私は思う。




山口栄一「イノベーションはなぜ途絶えたか―科学立国日本の危機」(ちくま新書 2016.12.10)
序章 沈みゆく日本を救え
1. イノベーションを生み出せなくなった日本企業
2. どうすればイノベーションは復活するか
第一章 シャープの危機はなぜ起きたのか
1. 危機の構造−「山登りのワナ」
2. 危機からの脱出策
第二章 なぜ米国は成功し、日本は失敗したか
1. 日米の違いがどこに?
2. SBIRとは何か
3. 日本の制度的失敗
第三章 イノベーションはいかにして生まれるのか
1. 創発−科学の本質に迫る
2. 共鳴と回遊
3. パラダイム持続型イノベーションからの脱却へ
第四章 科学と社会を共鳴させる
1. トランス・サイエンスとは何か
2. 象徴的な二つの事故
3. なぜ組織の科学的思考は失われるのか
第五章 イノベーションを生む社会システム
1. 共鳴場を再構築する
2. 大学・企業の制度改革
3. 誰もが科学する社会へ

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