Dora_PaPa_san's_Pages

アクセスカウンタ

zoom RSS 小島毅「近代日本の陽明学」・・何でも抱える行動主義が日本的

<<   作成日時 : 2017/04/01 12:24   >>

トラックバック 0 / コメント 0

私は日本人の中韓を差別する心や「国体」に従う心の成り立ちを知りたいと常々思っている。わずか200頁余の教科書のような本書はかなり参考になった。

朱子学に比べ、「心即理」「知行合一」「良知」を旨とする日本の陽明学は、特に定まった体系があるわけではなく、行動主義が肝である。腐敗官僚や米独占の商人に怒った大塩中斎の行動はその代表的なものだという。

日本の陽明学の祖と言われる中江藤樹や熊沢蕃山についての記述はほとんどない。 近代の行動に焦点を当てている。

大塩中斎は、水戸学的朱子学の頼山陽とは共感し合っていたらしい。水戸学は、光圀の「大日本史」に始まり、神道重視、国体概念、南朝正統、天皇長子接続など、大義名分論を掲げ、明治維新から昭和軍国主義にいたる思想の源流をなしている。「水戸学と陽明学なるものが、如何に緊密なる黙契の下に明治維新の革命を醸成し、鼓吹し来れる」。

この本が挙げる、会沢正志斎、吉田松陰、河井継之助、三島中洲、三宅雪嶺、西郷隆盛、井上哲次郎、幸徳秋水、新渡戸稲造、山川均、大川周明、安岡正篤、三島由紀夫・・・とつながってゆく人びとは、学者あり、政治家ありで、陽明学を名乗っているとは限らない。

別に教説があるわけではない。「良知にしたがって誠実に生きていく実行主義そのものである」から、キリスト教徒も社会主義者も巻き込んでいる。 高杉晋作は、「キリスト教は陽明学に似ている。日本帝国の崩壊の原因となるのは、必ずやこれだろう」と語っていたそうだ。

皇太子であった大正天皇は、王陽明の四句教が気に入って座右の銘にしていた。

 善も悪もないのが心の本来のすがただが
 善や悪が生じるのは意が動くから
 善と悪とわきまえるのは良知のはたらきで
 善を選んで悪をしないのが格物ということだ

陽明学者は、国家主義を支え、国体を護持し、武士道を尊ぶ。 アヘン戦争の不様な敗北を受けて、朱子学を奉ずる儒者の言説は説得力を失ってゆく。「松陰において国体論は神国論と結合する。すなわち、「日本は他に比類なきすぐれた選ばれた国だ」という自己陶酔である」

さらに、「東アジアの大国であった清に勝利したことで、この判断は微妙に変化しはじめる。実は日本こそ東アジアの古き良き伝統の継承者であり、それゆえに旧套墨守の中国や朝鮮とは違って、国際社会の一員となることに成功したのだ―そうした言説の登場であった。従来、「開化」か「国粋」かという二項対立で語られていた路線問題が、「伝統精神を保存しながらの文明化」という一本の流れに統合されていく」

三神礼次の「中国への言及は両義的である。 基礎的教養の土壌としての中国文化と、軽侮の対象としての現代中国と」・・・「前者の文脈では「漢」と呼び、後者の意味では「支那」と呼ぶ」・・・「古来、必ずしも蔑称ではなかった「支那」は、この頃を境として日本人の優越感を満足させる呼称として一般に定着していく。 明治には「日清戦争」と相手側を正式な国名で読んでいるのに、昭和には「支那事変」と呼ぶ (日華事変というべきだろう)という言説は示唆に富んでいる。

本筋でないが、三島由紀夫の、自民党に属しながら自民批判を繰り広げ、やたらとサムライと称したがる石原慎太郎への批判がおもしろい。「昔の武士は、藩に不平があれば諫死しました。さもなければ黙って耐へました。 何ものかに属する、とはさういふことです」・・・組織の内部にいながら、外部の人間にむかって内部批判を公言する、そうした無責任な心性こそ、武士道精神に背く「西欧化」の賜物にほかならないと。

最後に筆者の本音が披露される。 「テロリズム撲滅のために某国に全面協力してきたはずの首相の口から、後継者問題をめぐって「政治家は吉田松陰のようであれかし」と、老中暗殺を図ったテロのイデオローグを賛美する国会演説が出てくるようでは、未来は暗い」



小島毅「近代日本の陽明学」(講談社2006.8.10)
エピソードT 大塩中斎 やむにやまれぬ反乱者
エピソードU 団体論の誕生 水戸から長州へ
エピソードV 御一新のあと 敗者たちの陽明学
エピソードW 帝国を支えるもの カント・武士道・陽明学
エピソードX 日本精神 観念の暴走
エピソードY 闘う女、散る男 水戸の残照

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
小島毅「近代日本の陽明学」・・何でも抱える行動主義が日本的 Dora_PaPa_san's_Pages/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる