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zoom RSS マイケル・ブース「限りなく完璧に近い人々」

<<   作成日時 : 2017/07/30 16:10   >>

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皮肉屋の英国人が、評判高く裕福な北欧の国のあらさがしを500頁に渡って繰り広げた。 もっと簡潔に語ってくれればいいのに、孤独の好きな人々の検証に街角で声をかけるとか、微に入り細に入り、実験しながらインタビューしつづけるので膨大な情報量になる。

おおざっぱにいって、世界一の豊かさ、教育システム、幸福といわれる国々にも、辛い歴史があり、種種の問題もあり、弱みも少なくない。それでも、やはり、私はあこがれる。 その最大の理由は、みな無口で独りでいることの好きな人々の国だという点だ。

厳密に言うと、「スカンジナビア人とは、もともとバイキングが支配していた土地(すなわちデンマーク、スウェーデン、ノルウェー)の人々だけを指す言葉だそうだ」

近く公開される映画でも話題になった「サーミ」の話は、ほとんど出てこないけれども、ラップランドの「ラップ」は、北欧では差別用語になって使わないらしい。



<デンマーク>

バイキングの末裔、総中流階級いや無階級社会、世界で一番幸せな国、かつては大国だったけれどいまは野心を捨てた小国、山のあるノルウェーが羨ましい国、ルター派の強い国・・・デンマークは豊かな幸せな国との印象が強い。しかし、皮肉屋の筆者は、こうも言う。 「鉄道は事実上破たんしているし、医療の質は低いし、学校は喜劇的なまでにお粗末だ。デンマークのこうした危なっかしい公共サービスの状況を考えるほど、デンマーク国民が、納めている税金に見合う価値のあるサービスを受けていると、いまだに信じている理由は、自分たちの税金がどのように使われているか、じつははっきりと認識していないからではないか」

「私はデンマークで、「仕事が生きがい」という人にはほとんどお目に掛かったことがない」

「「ニューヨークタイムス」紙はデンマークを「世界で一番、失業するのに適した場所」と呼んだ。失業手当の額は就労時の給与の最大で90パーセント、給付期間は最長で2年間まで受けられる。

「かつてのようなヨーロッパの大国でなくなったデンマークは、引きこもり、ぐっと小さくなった国土に残っているわずかな資源をかき集め、二度と外に向かって野心を持たないと決意した」

高い税金に文句を言わないのは、税に見合うサービスを受けていると思うから

ヤンテの掟・・・自分をひとかどの人間であると思ってはいけない、とか、誰かが自分のことを気にかけてくれると思ってはいけないネトカ、サンテモーゼの小説に出てくるデンマーク人の特質

「スカンジナビア人の心の奥底にある何かが、ルター派の信仰を生んだ土地の人々以上に、その教義をずっと強く受け止めた。ルターの教義は、北欧の地において、はるかに堅固な足掛かりを得た。 それはおそらく、スカンジナビア地方の人々はより独立心が強く、より貧しく孤立した共同体に生きていたからだと思う」




<アイスランド>

ヴァトナ氷河、グドルフォス滝、間欠泉ストロックルなど、荒々しい自然で有名なアイスランドは、もともとノルウェーからの政治犯や犯罪者の逃亡先だった。人口わずか30万余の国だから、何をするにも人手がないが基本的に水産業と農業の国だ。その漁業の漁獲量割当から端を発した経済破綻の傷が今も癒えない。それでも、グーグルの誘致で有名になったが、寒冷気候と地熱を利用したサーバー集積に期待を広げている。

アイスランド国民は世界で一番、一人当たりの購入書籍が多いとか、人間関係の緊密な社会で縁故や排他性につながっているとか目新しい。 でもいちばん興味深いのは、半分以上の人が、妖精(隠れた人々)の存在を信じているか存在の可能性を認めている、ということだ。

経済破たんの一因は、ヨーロッパからよりもアメリカから影響を受けて来たからだと言う説もある。



<ノルウェー>

ノルウェー人は国旗を持ってお祝いすることが好きだ。「この種の国家的ロマン主義は、いまだにスウェーデン人に、第二次世界大戦中にナチスに同調してしまった不快な記憶を呼び覚ます。 一方ノルウェー人は、北欧諸国のなかでどの国よりも決然とドイツ軍と戦った」ため、愛国的になっても痛みはないのだろう。「22/7」と呼ばれる虐殺事件の犯人が属していた右翼政党が事件後に躍進するくらいだから、ノルウェー国民が右寄りなのは明確だし、難民の受け入れも少ない。「ノルウェーの人種差別主義者の差別は、差別であることを認めないタイプの人種差別です」・・・「つまり、私たちは善良な人間で、人種差別は悪人のやることだから、私たちは人種差別主義者ではない、という理屈です」

ノルウェー人を揶揄する面白いジョークがたくさん挙げられているが、「ノルウェーに移住したいと考えている人たちに向かっては、うまく付き合わなければならないことが二つあると必ずアドバイスしています。一つは寒さと暗さです。それが耐えられないようなら別の場所を選ぶべきです。もうひとつは男女平等です」も、ジョークではないが面白い。

ノルウェー人はヨーロッパ的な封建制度も持ったことはなく、集落も作らず、独立して、分化よりも自然と深いつながりを持って生きて来た。 そして、必要最低限なもので、どうにか食いつないできた人たち。 だから国民は、飽食や過剰消費を嫌い、蓄えることを常に意識する。 それで石油で得た富もいたずらに消費することなく、ファンドをつくり、堅実な蓄積を重ねている

「オスロ市民は世界で二番目に裕福で、平均年収は約880万円。こんな物価の高い国に暮らしているのだから当然だろう。過去に訪ねた都市のなかで、公共交通機関の運転士から料金について謝罪を受けたのはここだけだ」 最短距離を移動するのに路面電車は50クローネ、やく700円




<フィンランド>

北欧各国は、ハイコンテクストな文化で、期待、経験、背景、遺伝子まで同じように似ている人々だから、言葉によるコミュニケーションの必要性が低く、フィンランド人もひどく無口らしい。 「フィンランド人は饒舌な人間を信用しない。もし一度に四、五分以上喋りつづける人がいたら、何かやましいことがあるのではないかと疑い始める」というから、私もヘルシンキに住みたい。アメリカではシャイはバカと同じだが、フィンランドでは、節度や慎み深さ、進んで人の話に耳を傾ける優れた資質の表れと捉えられる。似ていると言われる日本人でさえ、フィンランド人の率直さやぶっきらぼうさには驚くという。

フィンランド人が大切にするスィス(sisu)は、忍耐力やスタミナ、男らしさを表す言葉だそうだ。フィンランド人の男は深酒するというイメージだが、そんなに酒量は多くないと言う説もあり、単なるイメージかもしれない。ロシアとの戦いや三分の一が餓死したというスウェーデン支配の記憶、ソ連と戦うためナチスと共闘した歴史への辛い想いか、単に高い緯度のせいで暗いためか・・

今、フィンランド最大の強みは世界一の教育システムと男女平等だ

「フィンランド人と日本人は似ていると言われる」・・・「ボディランゲージをほとんど使わず、聞き上手であり、対立を好まない」・・・「が、その日本人でさえ、フィンランド人の率直さやぶつきらぼうさには驚く」

フィンランドはキリスト教文化とロシア正教文化に引き裂かれているとみる見方もある

マンネルヘイムはマーシャルプランを拒否した。 NATOにも加盟しなかったからソ連との関係は心配するものではなかった

銃の所有率ではアメリカ、イエメンに次ぐ第三位・・・しかし、ヘルシンキにクマがでるというし、おおかみもいる狩人の国だから・・・学校で発砲事件が起きても・・・

フィンランド女性はヨーロッパで最初に参政権を手にした




<スウェーデン>

「スウェーデン人は、人目に立つことをデンマーク人以上に恐れていて、自分の業績を自慢したりひけらかしたりせず、なにごとにつけ控え目に表現し、謙遜する傾向がある」というが、デンマーク以外は皆こんな傾向に聞える。「あなたがしゃべればしゃべるほど、スウェーデン人は耳を傾けます。そしてよけいにしゃべらなくなります」

スウェーデンは結構嫌われている。スウェーデンは世界第八位の武器輸出国で、「「平和と中立を掲げながら、同時に大規模な軍需産業を育成してる」のは恥知らずな偽善的行為だとフランスからも指摘されている」し、「スウェーデン人の行儀の悪さは香港の中国人に匹敵する世界最低のレベルだ」・・・列に横入りする、まだ人が降りているのに列車に乗り込む、道をふさいでも気にしない、カバンを蹴飛ばしても謝らない・・・

デンマークが右寄りになりつつあるがスウェーデンはずっと社会民主党政権で移民を受け入れ続けて、デンマークは6%くらいなのに外国生まれのスウェーデン人の人口は15%近くにも上る。ただその移民はうまくいっているのか、筆者は疑問視している。スウェーデン人は不平等を隠すのがとても上手だ。

筆者はスウェーデンをある意味全体主義国家だと言うが、ダウンは、そうではなく、過去百年に渡ってスウェーデンに作用している力は、近代主義、モダニズムだという。

ノーベル平和賞だけノルウェーで選ばれるのはノルウェーがスウェーデンに支配されていたからではないか

「スウェーデンにおいて、文化はあまり重要視されていません。私たちは、芸術面ではなく、技術面で創造性を発揮する国民です」







マイケル・ブース「限りなく完璧に近い人々」(KADOKAWA 2016.9.30)
<なぜ北欧の暮らしは世界一幸せなのか?>
はじめに
デンマーク
第一章 幸福
第二章 ベーコン
第三章 ジニ
第四章 ボッファー
第五章 ニワトリ
第六章 バイキング
第七章 72パーセント
第八章 ホットタブ・サンドイッチ
第九章 マルハナバチ
第十章 デニムのオーバーオール
第十一章 ベティナ靴店
第十二章 ディキシーランド
第十三章 垂れた乳房
第十四章 幸福幻想
アイスランド
第一章 ハッカティ
第二章 銀行家たち
第三章 デンマーク
第四章 妖精
第五章 蒸気
ノルウェー
第一章 ダーンドル
第二章 エゴイスト
第三章 新たなクヴィスリング(売国奴)たち
第四章 自然と生きる
第五章 バナナ
第六章 オランダ病
第七章 バター
フィンランド
第一章 サンタ
第二章 沈黙
第三章 アルコール
第四章 スウェーデン
第五章 ロシア
第六章 学校
第七章 奥さんたち
スウェーデン
第一章 ザリガニ
第二章 ドナルドダック
第三章 ストックホルム症候群
第四章 人種の融和
第五章 カタルーニャ人
第六章 ソマリア人のピザ屋
第七章 政党
第八章 罪悪感
第九章 ヘアネット
第十章 階級
第十一章 玉軸受

おわりに






スウェーデンを知るための60章 エリア・スタディーズ
明石書店
村井 誠人

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