遠藤誉「チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車」

「チャイナナイン」に続けて遠藤誉氏の「チャイナギャップ」を読む。この本は今年2月の新しい本だし、お薦め。 遠藤氏は吉林省長春に生まれ、7歳のとき、街を包囲した八路軍のために、弟を餓死させ、あまりの惨状に記憶喪失になり、自分も流れ弾に当たって死線をさまよった。 その体験が中国に対する複雑な思いにつながり、独特の人脈をつくり、遠藤氏ならではの情報の把握になって、読者を驚愕させる。

尖閣の帰属に関係する、ルーズベルトと蒋介石のヤルタ密談の話を中心に、南京政府の官僚を父に持つ江沢民が出自の批判を避けるために、一層強い反日の行動をとってきたとか、習近平は愛国教育を続けるとか、日本嫌いのルーズベルトとキッシンジャーは特別でなく、米中はつながっているとか、・・・ 沢山の話題が語られていて興味が尽きない。

なかでも最も衝撃的なのは「おわりに」で明かされた、駐中日本大使館の外交官が遠藤氏を刺して中国政府に密告したという話だ。国益を考えず自分の立場だけ考える日本人社会の文化を嘆いている。

ヤルタ密談において、日本を嫌うルーズベルトの琉球諸島を中華民国にあげようという提案を断った蒋介石、密談の経緯や蒋介石が断ったことを後悔しているという話は、2008年1月16日の人民日報に掲載されていて、公になっているとのことだ。

キッシンジャーが日米安保は日本の軍事化を抑えるためであり、日本には戦略がないと周恩来に酷評していたとか、ルーズベルトが日本嫌いだったとか、これらの親中嫌日の気風がアメリカにあるのではないかと危ぶんでいるようだ。  しかし、日本に戦略がないとの評は、哀しいかな、あたっているとおもう。

そういえば、習近平がオバマと最近会談したとき、安倍晋三氏は、日本と中国の違いは、日本にはアメリカの基地があるということだと、語ったような記憶がある。 なにか妙な違和感を覚えた。 おもねり、というのではないかと。

清華大学は、義和団の乱の賠償があまりに高額だったため、アメリカが請求をやめ、かわりに建てた米国留学のための予備校が前身だ。 だから、もともと米中は親密な関係があり、清華大学出身者には、米国に対する親近感がある。 朱鎔基、胡錦濤、習近平と三代続いている。

尖閣問題「棚上げ論」は、最近になっていろいろ否定論が出ているが、それは強弁。 72年の田中首相も、78年鄧小平来日時の福田首相も、中国側の棚上げ論を否定もしなかった。

鄧小平が改革開放をぶちあげても、誰も信用しなかった。 又自由に何か言ってすぐに逮捕される危険があるから。そこで鄧小平は日本映画を導入した。高倉健の「君よ、憤怒の河を渡れ」と、栗原小巻の「サンダカン八番娼館 望郷」で、裸体がでてくるという衝撃的な、大盛況となった。そのあとが「鉄腕アトム」。

1992年2月 領海法を制定し、尖閣を領土と明記している。 日本の国有化より前に「棚上げ」を変えているのに、日本側は殆ど反発もしていない。

微博に政府に雇われたとツイートしているのを見て、日本の識者はそれみたことかというが、あれは、政府を困らせてやれという、嘘である

尖閣に上陸した香港の保釣行動委員会のメンバーは、徹底した反共の人々。政府の差し金だと言う日本の識者は、中国政府の力を高く買いすぎている。

デモ隊をバスで送迎するのは一般市民を巻き込まないようにするためであって、それを官製デモの証拠と主張するのは中国の真相をあまりに理解していない人々だ



遠藤誉「チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車」(朝日新聞出版2013.2.28)☆☆☆☆☆
はじめに 日中領土問題解決のために
第一章 中国の対日外交 揺れ動く軸足
第二章 「カイロ密談」 中国、尖閣領有権主張の決定的矛盾
第三章 愛国主義教育はなぜ始まったのか 甦った反日感情
第四章 逆行して膨張する反日感情
第五章 チャイナ・セブン 中国新政権と対日外交
第六章 米中構想を見逃すな
おわりに カイロ宣言に翻弄された人生


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