澤田瞳子「日輪の賦」

澤田瞳子氏の二冊目の本は、友人のお薦めの、この本。たいへん面白く、よくできた物語小説だと感心する。前回の「落花」が平将門が活躍する平安後期、今回は大宝律令がつくられた時代だ。ロマンあふるる古代史の物語と言えばひどく陳腐な物言いだが、豪族の集合体から律令を基にした中央集権国家、倭から日本、大王(おおきみ)から天皇という、新たな国づくりに燃えるという、なかなかダイナミックで、こころ踊る物語でもある。

リベラル左翼と自称する私でも、それなりに国を愛する気持ちはあるから、こういう国づくりの「改革」の話は、肯定的な気持ちにはなる。しかし、だ。物語の前半では「改革」という言葉が頻出するので、ちょっといやな気分だった。「改革」という言葉を振り回す現代の政治家はロクなものがいない。「改革」と言えば済むと思っている。この小説もその類かと思ったのだ。でも後半はそんなとはなかった。

新しい国家体制をつくると言えば、明治維新とそれに続く坂の上の雲を想起させる。新しければよいというものではない、明治維新は西洋の植民地化は避けられたという意味では成功だが、現在にいたるまで史上初めて異国に牛耳られる結果になったという意味では失敗で、間違った国づくりだった。では大宝律令の国づくりは成功だったのか。残念ながら私にそれを評価する歴史知識はないが、明治維新と同じような触感を持つ物語となると、そこは、あまり好きではない。

むしろ、あまり考えずにエンターテインメント小説ととれば、琉んくなく超一級の小説だ。

地方豪族と中央の大王とが構成する国家ではなく、しっかりした律令による中央集権国家体制を築くことによって、この国を大唐にも及ぶ凌ぐ強い国家にしたいとする人々を描く。故大海人王子の妻讃良大王(持統天皇)、中大兄王子の孫で大友王子の息子である葛野王、功臣中臣鎌足の息子ながら不遇な藤原不比等らと、若い理想に燃える官僚・大舎人である廣手、首名、崩壊した百済から流れてきて百済で果たせなかった夢を見る人々、それに対する抵抗勢力の豪族・高官、不満王族などだ。そのうえ、弓矢に強い男装の麗人や職人まででてくるなど、いろいろなエピソードを組み込んで、サービス満点でもある。

澤田瞳子「日輪の賦」(幻冬舎時代小説文庫 2016.6.10)
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