キム・スヒョン「私は私のままで生きることにした」

キム・スヒョンはイラストレーターにして作家。 この本は韓国で60万部を超えるベストセラーになった、読めば読むほど、韓国社会で生きることの過酷さを感じる。こんな文章が端的に表している。 

「画一的な社会の姿は、ひとつの答えだけを追い求める
 個人の姿に引き継がれた
 だから私たちの社会では、体脂肪は17%、
 体重は48kgでなければ不健康とされ、
 明るくて控えめな性格で、
 一流大学を出て大企業に努めなくてはならなくなった。
 高いハードルの先にひとつの正解を用意しておき、
 正解したら病的なまでに褒めたたえ、間違えたらとことん侮辱する。
 そこで誤答したと見なされた人は
 たった一人でその不条理な状況に耐えなくてはならない」

固定的な価値観に裏打ちされて、年収がどのくらいか、大企業に所属しているか、どこに住んでいるか、ソウルの一流大学卒か、・・・たとえば、こういったことをプレッシャーとして、人生の選択を進めてゆくが、当然、思い通りに行かないことが起きる。「ドラマのセットのような暮らしができると思っていたのに、子どものころに軽蔑していたような生活に足を踏み入れてしまう。その事実を受け入れることができるだろうか・・・」

人に厳しい態度を取る人が多いことに、「「侮蔑感」の著者のキム・チャンホ教授は、こうした現象について、人並みに成功しないと認められない社会で虚しさを埋めるためのいちばん簡単な方法は、他人を侮蔑することだと言っている」。 そう、上手くいかなければ、他人にあたるのだ。

筆者は、人を侮蔑したり、侮蔑されたりの関係を、「モーツァルトがサリエリよりも幸せだったという証拠はない」と、粋な言葉で敷衍している。 「私たちは、表面だけ見て他人の人生の重みを測るけど、他人の目に映る自分の姿がすべてではないように、私たちの目に映る他人の姿もすべてではない。人はそれぞれ、傷や不完全さを抱えている。傷のない人生なんてない」と。 そして、人の言葉や態度は気にするなと。 

「自分の人生からすぐに消えていく人たちに心のエネルギーを使うことも、感情の無駄づかいなのだ」。 そんな人のことに気を遣うな。「気を揉んだって、うめいたって、憎んだって、彼らはどうせあなたの人生から去っていく人なのだから」と。

そして、心配なんかするなと。コーリー・テン・ブームの言葉を紹介する。 「心配しても明日の悲しみが減るわけではない。心配は今日を生きる力を奪うだけだ」

・・・

とまあ、こんな調子で、"to do list" が繰り広げられてゆく。 "to do list" という言葉にしたのは、たくさん、方策を挙げたかったのかもしれない。 どれも、警句のような皮肉にみちたものではなく、具体的で、明るく、実践的だ。

しかし、これは韓国の話だけではないだろう。 ひとごとではない。日本もそんなに変わらない。 「精神科医のキム・ヒョンチョルは、ハンガリー、日本、韓国の共通点として 「寄り道が許されない社会」といった」


そのほか、興味深い話題をいくつか。。。。

・ 「6.25心性」いうものがあるという。「朝鮮戦争という非人間的な惨事を経験した韓国人が身につけた極端な生存競争、物質万能主義、手段を選ばない個人主義など」。聴いてみないと分からないものだ、そんなものがあるとは。

・ 「潔癖な関係を求める人が行き着く先は、「独りぼっち」

・ 「火病(ファビョン・・怒りを抑えるあまり、痛み、息苦しさ、不眠などの身体的症状を引き起こすストレス障害)は、韓国社会に特有という意味で、「韓国病」といわれるようになった。感情を抑圧したニセモノの調和のなかで、個人は病み、人間関係は腐っていった」

・ 「希望というのは、もともと条件が付いている」

・ 「自分が幸せであることを人に照明しながら生きることは最も不幸な生き方」

・ 「生きていれば、おかしなことも起こりうる、人生にはこのくらいの無駄はどうしても必要だ、人生は常に効率的なんてことはありえない、初めての人生だから自分にはちょっと難しかった、と思おう」

・ 「世の中には人と会うのが苦手な人もいるように  かけっこが苦手な人もいるように  同じ問題でも体感する難易度は違う。
 





キム・スヒョン「私は私のままで生きることにした」(ワニブックス 2019.3.5)
はじめに
Part1 大切にしながら生きていくためのTo Do list
Part2 自分らしく生きていくためのTo Do list
Part3 不安にとらわれないためのTo Do list
Part4 共に生きていくためのTo Do list
Part5 より良い世界にするためのTo Do list
Part6 いい人生、そして意味のある人生のためのto do list


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