荻上チキ「検証 東日本大震災の流言・デマ」

読後、とくに印象に残ることもなかったけれども、流言・デマがこれほどたくさんあるのには、あらためて驚きだ。それらは、SNS等で収集して分析したもので、現地調査したりしたものではない。 だから流言・デマの発信元にその理由を調べるには至っていない。

東日本大震災では、後続の大地震が発生するとか、石油火災で有毒な雨が降るとか、埼玉の水道水は危険だとか、東京電力を装った男が押し入るから注意とか、放射性物質は鵜飼薬が効くとか、救助を求めている人がどこそこにいるとか、悪意のあるとしか思えないもの、不用意なもの、善意から発信したもの、とかいろんな種類のものがあった。残念ながら、発信の理由が分からないので、その動機も当然分からないのだが。

外国人が援助物資を独占している、ナイフを持った外国人がうろうろしている、とかの中韓の差別デマもやはり発生していた

発信した流言やデマが信じられるように、「インサイダーからの密告」という形式をとっているものが多い。 たとえば、自衛隊員が打ち明けてくれたことだけれどとか、電力会社の社員が拡散してほしいと言っていたとか、ちょっと考えれば、そんなの嘘とすぐわかることなのだが、乗ってしまうようだ。

「流言が発生しにくい環境を作るためには、重要さか、曖昧さを減らさなくてはなりません。 多くの人が興味を失えば、流言の拡散は収まりますし、多くの人が確かな情報を共有すれば、やはり流言の拡散は収まります」。 これは、オルポートとポストマンの「デマの心理学」にある、流言・デマの公式から導き出せる

    R(流言(Rumor)) = i (重要さ(importance)) x a (曖昧さ(ambiguity))

すぐに、打ち消したり、「中和」することが大事だ。 伝言ゲームを持ち出すまでもなく、「人から人へと伝えられていく「連鎖型コミュニケーション」の中では、情報の一部が強調されたり(協調)、削ぎ落されていったり(平均化)、人びとの思いに適うような形に変形されていったり(同化)することがしばしば起こ」るからだ。

荻上チキ氏の説明は平易で分かりやすい。実態は豊富な実例でたいへんよく理解できる。しかし、じゃあ、どうすればよかったのか、ということが、よくわからない。もっとも、あの当時、分かっていた人もほとんどいなかっただろうが。 



荻上チキ「検証 東日本大震災の流言・デマ」(光文社新書 2011.5.20)
序章 なぜ、今、流言研究か
1章 注意喚起として広まる流言・デマ
2章 救援を促すための流言・デマ
3章 救援を誇張する流言・デマ
4章 流言・デマの悪影響を最小化するために

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