トニ・モリスン「「他者」の起源」

私のここ数年の最大の関心は、なぜ日本人は東アジアの人々に対する差別感情をもつようになったかという問題だ。 それとはもちろん環境も歴史もまったく違うけれども、アメリカ人、(「アメリカ人」という言葉は白人を内包している)の黒人に対する差別の「起源」が分かれば、多少は参考になるかもしれない、というのがこの本を手にした動機だ。しかし、残念ながら、この本は、私の手にあまる内容で、理解しにくいものだった。体調のすこぶるよい時にまた読み直したい。

「いかにしてわたしたちは人種差別主義者や性差別主義者になるのか? 生まれながらの人種差別主義者はいない。胎児のときから性差別主義的傾向があるわけでもない。講義や教育ではなく、前例によってわたしたちは「他者化」を学ぶのである」


訳者の森本あんり氏は、建国の当時からの「アメリカの黒人」の位置が無視されている、そういうほんとうのことをトニ・モリスンは見つめ続けているに違いない。

「トニ・モリスンが掘り起こすのは、このような歴史的な「アメリカン・アフリカニスト」の存在の隠蔽の構造です。建国の最初から白人による「アメリカン・アフリカニズム」の精神構造が築かれていたのです。かれらは意識しながらなぜ隠さねばならなかったのだろうか。おそらく「アメリカの黒人」の存在を無視しない限り、独立宣言に記されている「すべての人間は平等に造られている」という建国の基本理念に矛盾が生じるからなのでしょう」



トニ・モリスン「「他者」の起源」(集英社新書2019.7.22)
ノーベル賞作家のハーバード連続講演録
日本語版読者に向けて 森本あんり
ターネハシ・コーツによる序文
第一章 奴隷制度の「ロマンス化」
第二章 「よそ者」であること、「よそ者」になること
第三章 カラー・フェティッシュ(肌の色への病的執着)
第四章 「ブラックネス」の形状
第五章 「他者」を物語る
第六章 「よそ者」の故郷
謝辞

訳者解説 トニ・モリスンとアメリカ社会
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