安田浩一「愛国という名の亡国」

安田浩一氏の著作は、それなりに目を通しているので、この本に格別新しく感じるトピックはなかったように思う。 「愛国」というところに引かれて手にしたのだが、殊更「愛国」について書き下ろしたものではなく、現在の右翼、政権を批判する人を貶めるデマ、沖縄や在日・中韓に向けられるヘイト、差別・・・などの広い話題を集めているが、それらが底辺で「愛国」につながっている。

もう一度、リマインドしたトピックをいくつか挙げておく

・ 小池知事は虐殺された人も地震で死んだ人と一緒に悼むという。当時、被害者のひとりは、「朝鮮総督府の役人から「このたびのことは天災だと思ってあきらめるように」と言われたという。「まさに都知事の言葉と同じ、天災死と同じように扱うことで、結局、虐殺の事実を見えないようにしている」」

・ 札幌市内のマンションの一室で2人の遺体が発見されたのは、2012年1月20日のこと・・・姉はひと月ほど前に病死、知的障害を持つ妹は1月初旬に凍死と見られる・・・生活していけないとの相談を三度もしたにもかかわらず、市の担当者は「保護の要件である懸命な求職活動」を伝え帰す。「極力、生活保護申請に至らせまいとする行政の”意思”」

・ 在特会メンバーの「意識の中には、多額の税金を納めているであろう”納税者としての河本”といった視点は存在しない。とにかく「税金が無駄に使われた」という思いが、排他的な気分も相まって、自制の効かない怒りを沸騰させているのだ」

・「生活保護を見直せ-「河本騒動」を端緒に湧きあがった怨嗟の声に、政府は珍しく迅速に対応したのだ。数万人規模の反原発デモが何度繰り返されようとも「大きな音だね」としか反応しなかった、あの野田内閣が、である」・・・だから枝野氏が野田氏と組むのは、本来はマイナスなんだけれどね。まあ離れる票より増える票が多いという計算何だろうが。

・ 生活保護の「利用率はそれほど高くない。全国民の1.6%という数字が、それほど危機的なものでしょうか。これはヨーロッパ諸国などと比較すれば相当に低い数値です」「ドイツの利用率は9.7%、フランスは5.7%、イギリスは9.3%」・・・「生活保護を受給できる資格を持った人々のうち、実際にどれほどの人が受給しているかを示す「捕捉率」に関しても、日本は相当の低水準」で、2割程度。一方、ドイツは64.6%、フランスは91.6%、イギリスも50%を超える。社会保障費全体に占める生活保護の割合も約3%、GDPにおける生活保護費の割合は0.5%で、 OECD加盟国平均の7分の1。 これでは、「生活保護費が財政を圧迫している」とは言えないだろう。不正受給額の全体の需給が国占める比率は0.38% 微々たる率


安田氏の言いたいことは、ここに現れている・・・「そんな社会でよいのか。貧困が自己責任だと突き放され、福祉に頼ることが恥とされ、バカにされ、不正を疑われるような社会にしてしまってよいのか。流布されるデマに基づいて貧困者が差別される現状は、ヘイトスピーチが抱える問題と根は一緒だ。それは社会的強者による排除の思想に他ならない」。「私が差別を憎むのは、強靭な理念や確固たる思想があるからではない。差別の向こう側に、戦争と殺戮が見えるからだ」







安田浩一「愛国という名の亡国」(河出親書2019.7.30 )

第一章 愛国という亡国
朝鮮総連銃撃事件
民衆とともにある「本物の右翼」はいるのか
本土右翼が沖縄で反基地運動に奮戦中
森友学園理事長と右派市民団体の不可解な点と線
26歳の右翼活動家は、なぜ保守系出版社を襲撃したのか
「その先の右」へと走る自民党

第二章 移民を拒む移民国家
移民を拒む移民国家
国際交流の美名のもとで
「僕を日本にいさせてください」

第三章 デマと愛国・沖縄編
デマと愛国・沖縄編
無自覚な沖縄差別の深層
「嫌沖」の空気
小池百合子の知られざる沖縄蔑視発言
野中広務の「沖縄への思い」とは何だったのか

第四章 時のなかの生
本田靖春、「拗ね者」と自称したノンフィクション作家
笹川陽平、父良一の七光りの影
池口恵観、「黒幕」と呼ばれた「炎の行者」

第五章 ヘイトの現在地
ヘイトの現在地
ヘイトスピーチ包囲網
ヘイトスピーチ解消法と「ニッポンの覚悟」
虐殺の事実を否定するのか
生活保護バッシングが映し出すもの


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