映画「バイス」、すごい映画

これは文句なくすごい映画だ。好きな映画でも楽しい映画でもなく、すごい映画だ。 まず、キャスティングがすごい。これだけ芸達者なメンツをそろえて共演させているなんて。 次いで、それがみな実在の人物で、大物政治家とその関係者で、実際の物語と銘打っているのだから、その大胆さがすごい。 そして、映画の編集、構成がユニークかつ古典的なのに斬新ですごい。

クリスチャン・ベイルのチェイニーは若い時から晩年までそのメーキャップ、姿形話しぶりの演技は神業だ。妻のリンは、あまり見たことのない厳しい顔のエイミー・アダムス、スティーヴ・カレル のラムズフェルドは、ラムズフェルドという政治家のメチャクチャな内実を余すところなく伝えている。それに輪をかけているのが、サム・ロックウェルのジョージ・ブッシュだ。リンのいうところの「残念な息子」であるジョージのアホさ加減がピッタリという、適材適所が素晴らしい。

映画によれば、ブッシュもラムズフェルドも、そしてチェイニーも、あまり根拠はなくとも、初めからイラク侵攻をしたかった、そのための工作を悪気なく進めてゆく姿には恐ろしくもなる。酔っ払いで無口であまり頭のよくないディック・チェイニーが嫌われ者ラムズフェルドにインターンシップしたことがキャリアーのきっかけだったのは、まったく示唆的である。そういう当事者には耳障りな内容を気にせず作っているのはすごいことだ。

映画としての作り方もすばらしい。 しょっぱなのタイトルが大きな活字でまるで無声映画のようだ。それに黒子のような、狂言回しのような語り手が現れたり、ジミーカーターの当選で、野望がついえたチェイニーが田舎に引っ込んで余生を静かにくらしましたとさ・・・と終わるかのようなタイトルエンドの出現とか、とにかく作り方が面白い。 

モデルも内容も好きではない世界だが、映画としては、私の今年のベストテンにはいりそう・・・・。



映画「バイス」( アダム・マッケイ監督 VICE 2018)




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