米澤穂信「Iの悲劇」

「Iの悲劇」の「I」とは、「アイ、ロボット」の「I」ではなく、何かのイニシャルでもない。いわゆる、I-ターンの「I」だった。 住民が誰もいなくなったある村に移住を呼び掛けて村を再生させようとする、Iターン・プロジェクトにまつわる悲喜劇を語っている。
移住者に起こるトラブル、事件を、ミステリータッチで謎解きをしてゆく。まあ、エンターテインメントであって、別にIターンの問題をシリアスに語るものではない。にもかかわらず、限界集落の深刻な問題が浮かび上がってくる。

この小説にネタバレは許されないので、このへんで・・・。

米澤穂信「Iの悲劇」(文藝春秋 2019.9.25)
序章 Iの悲劇
第一章 軽い雨
第二章 浅い池
第三章 重い水
第四章 黒い網
第五章 深い沼
第六章 白い佛
終章 Ⅰの喜劇

<序章 Iの悲劇
昭和の大合併で蓑石村は、高齢者村民の相次ぐ死亡や孤独に暮らしを続けることに諦めた村民の移転で、誰もいない村になった

<軽い雨
新しい市長は無人の蓑石にIターンの住民を呼び込むプロジェクトをはじめ、仕事をしない西野課長と新人女性の観山、そして結局一人で仕事することになる中堅の万願寺の三人が甦り課として担当することになった。試行として二世帯が転居してきた ・・・

<浅い池
なんとか10世帯が転居してきて、開村式も開き、マスコミに乗ったため賛同者も増えた。新住民代表として勇ましい挨拶をした二十代の若い牧野さんは、水田に鯉を放し養殖して稼ごうと頑張った・・・・

<重い水
一番古い民家に移住した久保寺さんは多くの蔵書を抱えていて、近くの立石さんの子ども速人くんが絵本を見に来るようになっていた。久保寺さんは、家が古すぎ、雨漏りや床が沈むと万願寺に補修を依頼していたが予算がなかった・・・

<黒い網
河崎由美子さんは異常なクレーマーで、上谷さんの設置したアンテナの電波が身体に悪いとか、排気ガスで鉛中毒になるから家の前は車で通るなとか。そして裏が土砂くずれ跡だと不安な滝山さんにちょっかいを出しているようだ・・・

<深い沼
西野課長と万願寺は市長の要請で、プロジェクトの状況を説明に上がった。何も知らずに文句言う副市長もいたが、市長はなぜか一言も発せず、最後にねぎらう言葉もかけ、不思議だった・・・

<白い佛
若田夫妻の移住した家には木彫の円空仏が代々引き継がれてきた。若田さんはそれを傷つけることなく受け継ぐ義務があると考え、長塚さんはそれを公開して観光に役立てようという・・・

<終章 Ⅰの喜劇
西田課長、万願寺、観山の三人は、一軒一軒、移住先の家を見に行った・・・



この記事へのコメント