映画「希望の灯り」

映画とは不思議なものだ。マーヴェルの映画とは真逆の世界、これといったストーリーも、事件も戦いもない。ヒーローもヒロインもいない、口数の少ない、どこにでもいる青年と中年の孤独なおじさん、おばさんたちだけ。そして、宇宙でも都会でもなく、巨大なスーパーマーケットの通路でささやかな希望を見いだそうとする人々の物語。

原作は、クレメンス・マイヤーの「通路にて」という。 ドイツの人なら説明なくわかるのかもしれないが、どうやら統一後あまり時がたっていない頃の旧東ドイツ、ドレスデン近くで、潰れた人民公社を吸収合併したスーパーマーケットで働く人々の、日々の「ままならない日常」を描いたものと言う。 初めはドイツに来た移民の苦労話かと誤解していた。 主人公である新人の在庫管理担当クリスチャン(フランツ・ロゴフスキ)だけではなく、上司になる中年のブルーノ(ペーター・クルト)、菓子部門の魅力的な先輩女性マリオン(ザンドラ・ヒュラー)をはじめ、みなそれぞれ辛い、哀しい想いを耐えながら、必死に耐えて生きている、と伝わってくる。いっぱいのコーヒー、深夜のビール、ひとときのチェスや語らい、そして寝ることが明日への原動力になる。ブルーノの長距離トラック運転手だったころの楽しさ、郷愁を思い出す、遠くを見る表情が哀しい。 

あまり馴染みのないドイツ人俳優だが、ザンドラ・ヒュラー、どこかで見たと思ったら、「ありがとう、トニ・エルドマン」に出ていた。全く違う印象にびっくり。役者だ。


映画「希望の灯り」( トーマス・ステューバー監督  IN DEN GANGEN 2018)
IN THE AISLES



オフィシャル・サイト
http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/


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