金敬哲(キム・キョンチョル)「韓国 行き過ぎた資本主義」

「行き過ぎた資本主義」という言葉が妥当なのかどうかはわからないが、韓国社会の過酷さは大変よく分かった。 

2011年に誕生した恋愛・結婚・出産を諦めた「三放世代」が進み、あらゆるものを放棄する「N放世代」となった・・・・、5歳未満の子供たちまで英語発音能力を高めるための、舌の下側を切開して舌を長くし柔軟性を高める手術をする「大峙洞キッズ」・・・・、月に200万ウォンあまりの講義料で生活している大多数の講師たちにくらべ、数十億ウォンから数百億ウォンの年俸を得られる1%も満たない「一打講師」・・・・、教育水準とスペックは優れているが、就職難で未来設計ができない20代を表す「IKEA世代」・・・・、大手企業に入社するために必須の出身校と言われる、ソウル大学、ヨンセ大学、コリョ大学、ソガン大学、ソンギュングァン大学の「TOP5」・・・・、就職に必要な製品仕様のような、出身大学、大学の成績、海外語学研修、TOEICの成績、大手企業が大学生を対象に開催する公募展、資格、インターン、ボランティア活動の「8大スペック」・・・・、品の悪い中年男性に対して若い人が軽蔑して呼ぶ「ゲジョシ」、中高年は最後は就職先がなく、チキン屋を始めるしかないという「起承転チキン」・・・・、子供の教育のために、妻と子供を外国に行かせ、自分は韓国に残って教育費や生活費を送金する父親を指す「雁パパ(キロギアッパ)」・・・・、そのランキングを示す、「鷲パパ(トクスリアッパ)」に、「ペンギンパパ(ペンギンアツパ)」・・・・、韓国社会でよく使われる、こんな言葉の数々は、その過酷さを知らしめている。

しかし、苛酷なことは分かった。受験競争、就職、老後・・・それらの過酷なことはわかる。 ただ、この書の中にも、貧しくて餓死した人の話は,、確か出てこない。そんな事態があるのかどうかわからない。 日本社会は、こんな過酷さを表す言葉の数々は、私は知らない。でも、餓死する老人や子供のニュースはたまに聞く。日本も表に出ないだけで同程度に過酷なんではないかと怪しむのである。

そのほか、いくつか、初めて知ったことがあった。

・ 「大学受験生の中心地が大峙洞(テチドン)なら、公試生の聖地は鷺梁津(ノリヤンジン)だ」・・・そして、鷺梁津では、カップ飯も2000~3000ウォンだったのが、6000ウォンまで上がり、「地方からの公試生も物価が安い新林洞(シンリムドン)の方に向かっています」

・ 「2006年、著名な人口専門家であるオックスフォード大学のデイビッド・コールマン氏は、少子・高齢化によって地球上から消える危険国家の第一号として韓国を指名した」

・ 役員の在職期間は2年が20.9%で最も多かった。わずか1年で辞めたケースも5.4%もあった・・・「四九開花、五四落花、花二絶頂」という

・ 雇用に大きく貢献する大企業(250人以上)の数が少ない。韓国701社 米国5543社 日本3576社

・ 1988年に初めて国民年金制度が本格的に導入された・・・受け取っているのは老人全体の42%、受給者の78%は50万ウォン以下

筆者は文政権をどうも評価していない。 「硬直した労働市場、社会保障の不備、大企業の少ない脆弱な経済構造、これらによって第二の人生として自営業を選ばざるを得なかった中年世代を、文在寅政権の現実を無視した理想主義的な労働政策が、崖っぷちにまで追い込んでいる」と。また、文政権の政策か、検察による財閥への家宅捜索は日常茶飯事で、それも「積弊清算」の一環らしい、と。




金敬哲(キム・キョンチョル)「韓国 行き過ぎた資本主義」(講談社現代新書2019.11.20)
「無限競争社会」の苦悩
はじめに
第一章 過酷な受験競争とテチドン(大峙洞)キツズ
1. 大峙洞キッズとマネージャーママ
2. 何でもありの大峙洞塾業界
3. 政治に振り回される韓国の教育政策
第二章 厳しさを増す若者就職事情
1. 最悪の就職率と卒業猶予生
2. N放世代とスプーン階級論
第三章 職場でも家庭でも崖っぷちの中年世代
1. 襲いかかるリストラの恐怖
2. 我慢を続ける「雁パパ」たち
第四章 いくつになっても引退できない老人たち
1. 居場所を探す高齢者たち
第五章
第六章 分断を深める韓国社会
おわりに






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