田中利幸「知られざる戦争犯罪 日本軍はオーストラリア人に何をしたか」

たいへん良い、貴重な本だ。田中氏のような地道な研究者は貴重だ。副題の「日本軍はオーストラリア人に何をしたか」というように、日本軍がオーストラリア人の捕虜に対する虐待・虐殺、オーストラリア人従軍看護婦に対する強姦・虐殺の疑いなどを、BC級裁判資料などに基づいて詳細に解説している。日本軍側の資料はほとんど失われていて、生存者も少なく、真相究…
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鈴木純「まちの植物のせかい」

どこにでもいる身近な植物を「植物観察家」の鈴木純氏が、徹底した接写の写真を使って、植物の意外な真実?を明らかにする、私にとっては、大変すばらしい、魔法のような本だ。 ただ、雄蕊や雌蕊をたんねんに探すとか、私から見ればかなりマニアックなので、真似はできないな。 たとえば、ムシトリナデシコは、茎に茶色のべたべたがあるが食虫ではないとか…
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映画「マイ・ブックショップ」

自由な息吹と同時に、根強い保守的な権力のいじめが徹底する、なかなか英国らしいストーリーの、英国らしい映画だ。原作は、ペネロペ・フィッツジェラルドの「ブックショップ」。 時は50年代末、レイ・ブラットベリーの「華氏451」やウラジミール・ナボコフの「ロリータ」が出版され、英国の辺鄙な田舎町にも読者が出始めた頃。フローレンス・グリーン…
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韓国ドラマ「マザー 無償の愛」は地味だが名作だ

放映されているほとんどの韓国ドラマは、録画してみる。CMの間にドラマがあるからだ。 このドラマは見続けることができない。途中で止めて一休みしないと、気が重く、体調もなんだか悪くなりそうな気がしてしまう。それでも、やはり、ひきつけられたように見続ける。  カン・スジン(イ・ボヨン)は鳥の生態の研究者。孤独で強靭な精神をひとりで育んで…
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韓国ドラマ「ホテル・デルーナ」

WowoW放映中のドラマ「ホテル・デルーナ」も、そろそろ佳境に入り、どんな終わり方をするのか興味がひかれるところだ。なんたって、アイ・ユーが次から次に服をとっかえひっかえして、その魅力をふんだんにばらまいているドラマだ。 内容的には、「主君の太陽」と「トッケビ」を合わせたような、転生と幽霊と愛の物語だ。 アカデミー賞で言えば、作品賞は無…
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パオロ・ジョルダーノ「コロナの時代の僕ら」

イタリアはローマに在住の物理学者にして作家のパオロ・ジョルダーノ氏の随想である。ミラノの惨状が起こり始めるころ、感染症、コロナに直面した今を語っている。 理系頭脳の理性的、合理的見方と、たいへんまともな世界観、倫理観に裏打ちされたメッセージが心に染み入る。 といっても、それほど記憶に残るようなもの珍しい言説を語っているわけではない。ただ…
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小川俊樹「五・一五事件」

まず、これは絶対にお薦め本だ。 二・二六事件に比べて五・一五事件はあまりよく知らないし、本も少ないように思う。犬養首相暗殺くらいしか知らない。しかし、この本を読むと、二・二六事件よりもずっと時代を転換させた事件だったとわかる。 事件により、せっかく軌道に乗りつつあった「憲政の常道」、政党政治が断たれた。昭和維新の運動を民間ではなく…
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黒井千次「老いのゆくえ」

黒井千次ともあろう作家の書く「老い」だから、さぞ、興味深い、深みのある話がちりばめられているのだろうと、ほのかな期待はしたが、みごとに振られた。 あとがきを見たら、きちんと書いてあった。「可能なかぎり率直に、老いていく自分を描き、その感覚や感情を記していくことを目指した」と。「事実、<老い>の進行は数知れぬ失敗や事故や異変を…
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韓国ドラマ「まぶしくて-私たちの輝く時間」 地味だが珠玉の小品

ファンタジックだが地味な恋愛ドラマが、突然妙な婆さんストーカーと年寄り達の話に転換し、それが、全体の三分の二ほど過ぎると、劇的な驚くべき転換となる。やや粗削りだけれども、珠玉のドラマ、珠玉の小品、といってもよい。 私好みの韓国ドラマのベストテンには必ず入る作品だ。 キム・ヘジャ(ハン・ジミン)は25歳、アナウンサー志望だが、うまく…
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金敬哲(キム・キョンチョル)「韓国 行き過ぎた資本主義」

「行き過ぎた資本主義」という言葉が妥当なのかどうかはわからないが、韓国社会の過酷さは大変よく分かった。  2011年に誕生した恋愛・結婚・出産を諦めた「三放世代」が進み、あらゆるものを放棄する「N放世代」となった・・・・、5歳未満の子供たちまで英語発音能力を高めるための、舌の下側を切開して舌を長くし柔軟性を高める手術をする「大峙洞…
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メーガン・C・ヘイズ「幸せに気づく世界のことば」

たいへん楽しい、絵本のような本だ。 文章はともかく絵が素晴らしい。 世界各国の言葉で、筆者が「Happiness Passport」と思うような言葉を集めて、なぜその言葉が幸福につながるのかを、文化や背景、人びとの思いを解説している。そんな、素敵な本ではある。 当然のことに、そこには筆者の幸福感が滲み出ている。 筆者は、作家であり…
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ブレイディみかこ「This Is JAPAN 英国保育士が見た日本」

この本も間違いなくお薦め本である。ブレイディみかこ氏の著作は過去何冊か体験していて、その都度、目からうろこの発見をしている。大所高所からみた話ではなく、地べたの英国生活、保育士の体験、それらを通した確かな視点が、半端ない批評にまでなっている とくに要約することもないが、日本の新自由主義的過酷さは、英国に引けを取らないし、人権に対す…
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リチャード・パワーズ「オーバーストーリー」

これは素晴らしい本だ。わたしにとって今年最高の小説と言っていい。600ページを超える大作だから一気に読むことはできなかったが、大河小説のように、群像劇のように、壮大なスケールで、時代を俯瞰してゆく。まるで巨木の先端から世界を見るように。 展開してゆく。 訳者あとがきに訳者が要約したものが挙げられている。 「「オーバーストーリ…
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テッド・チャン「息吹」

映画「メッセージ」の原作、「あなたの人生の物語」の作者、テッド・チャンの待望の二冊目らしい。ひどく寡作な人らしい。 映画「メッセージ」はたいへん感動的な素晴らしい映画だった。原作と100%同じではないが、この映画のように、一つの解釈を経た作品を味わうのが、テッド・チャンの小説のよい読み方かもしれない。というのも、それぞれたいへん興味深い…
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マルクス・ガブリエル「世界史の針が巻き戻るとき」

日本人の聞き手にインタビューしたものをまとめた本のようだ。だから、日本の話題もあるし、聞きやすい(読みやすい)けれども、だからといって、「新実在論」がわかりやすくなるわけではない。 「今我々に起きている危機―価値の危機、資本主義の危機、民主主義の危機、テクノロジーの危機―の現状を解説して解決策を探り」、それらの危機が集約される「表…
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今村夏子「むらさきのスカートの女」

読み進めてゆくうちに、きっと大きな事件や、話の転換が起こって、「むらさきのスカートの女」と「黄色いカーディガンの女」に大きな変化が起きるにちがいない、との期待が高まるが、とくに、どうってことのない、それほどのことでもないが、ひどく微妙な展開になって・・・いったいぜんたい、この小説はなんなんだろう、と、不思議な思いで終了する。 いつ…
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