デール・マハリッジ「コロナ禍のアメリカを行く」

ガソリンスタンドの落書き“FUCKED AT BIRTH” を見て、ジャーナリストにして大学教授の筆者は、アメリカ各地をめぐり、ホームレス、支援団体の人々、貧困問題に取り組む研究者、困窮する労働者の家族・・・などを訪ね歩き、落書きの写真を見せては感想を聞く。ただでさえ、取り残された人びとが、コロナ禍で一層辛い環境に追い込まれている。

ただ、取り組みはいいんだが、私の無理解だとは思うけれども、なにか、突込みが足りないというか、"生まれたときからどん底"って、そんなこと、今更驚愕しているのかと、むしろ、それにびっくり。ジャーナリストで教授なら、その次のことを考えてもらいたいというのは、欲張り過ぎだろうか。

・ 元ホームレス、「アメリカ独立宣言は、すべての人間は平等に作られたという。そいつは、この国最初の大嘘だ。カネがあれば大事にしてもらえる。何もかもカネ次第なんだよ」

・ ホームレス・キャンプのジョーは、郡衛生局はコロナの蔓延防止のためホームレスを動かしてはならないという命令を出しているのに、警察はホームレスを引っ張っていると不満を。

・ パイクは「パトカーで手錠をかけられたままの男を指差して、”生まれたときからドン底”はまさにあの男のことだと言った。「[あいつは]生まれてから一度も幸せや希望ってやつに出会ったことがない。刑務所や施設みたいなとこしか知らないんだ」

・ パイク自身は、「俺自身は、生まれたときからドン底だとは思っていない。今こうしているのは自分にも責任があると思う」と。「ソーラーパネルを持つジョージも、私がキャンプで会ったほかの者たちも、自分を責めていた」と。自己責任論は、日本も米国も貧乏人を窮地に追い込んでいる

・ プリンストン大学立ち退き研究所などの発行した白書によれば、「強力かつ迅速な措置が取られなければ、今後数か月で推計30~40万のアメリカ人が住居立ち退きの危険にさらされる可能性がある」という。

・ 「ロサンゼルス郡で任意の白人を一人選んだ場合、その人物がホームレスになる確率は457分の1だ。黒人の場合は44分の1」。つまり、11倍。「人の身にはいろんなことが起こる。それはランダムみたいだが、本当はランダムじゃない。あらゆる点で、ある人々には不利なことが起こり、ある人々には有利なことが起こる。不公平なんだ」

・ 「2021年から2024年までのあいだ、経済は紛争の場となるだろう。パンデミック終息とともに経済がV字回復するという希望は実現しそうにない。問題は、経済がゆっくり上昇するU字回復を見せるか、それとも大きなD(Great Depression)になるかだ」

・ 「ヘイト集団への対策は、実は経済的公平さの問題である。もしも多様なアメリカ人が社会の富を分かち合っていれば、ヘイト集団は非主流派にとどまり、新たなメンバーを集めるのに苦労するだろう」。 これはテロリズムの問題が経済問題だというのとよく似ている。

・ 「北部のシリコンバレーの中心部では、貧乏人は用心深く規制されている。パロアルト市では1997年に歩道で座ることや横になることを禁じる”シット・ライ条例”が成立したが、真の狙いは物乞いを締め出すことだ」。さらに、「2013年、市は車の中で寝ることを違法とした。また、ユニバーシティ・アベニューを囲む地域の道路を、受動攻撃的な配色を用いて管理している―紫、珊瑚色、黄緑、青でゾーン分けする標識を設けた。庁舎制限時間は二時間。午前八時から午後五時までのあいだ、市を訪れた人が車を別のゾーンに移動させたら違反切符が切られる」という。日本だって、公園のベンチはホームレスが寝られないようにしている。

・ 「ホームレス一掃はもはやニュースにならない」。「我々は問題を解決していない。視界から締め出しているにすぎない。 解決策は明らかだ。最低賃金を上げ、公営住宅を建て、西晋療養施設を増やし、教育を施す、などなど。答えは皆が知っている」のに、それが実現しない理由をジャーナリストならまとめてほしいものだ。

・ 「本署のサブタイトルは、読者を処方箋的な解決策の長いリストに導くことを意図していない」・・・「何をなすべきかは、とっくの昔にわかっている。私の旅の目的は、道中で出会った人々の声を直接聞くことだった。彼らの返答からわかるのは、我々はアメリカンドリームを構築し直して参加条件を公平にし-それは絶対条件である-真の平等を生み出すといったお題目を現実のものにせねばならないということだ。そういう陳腐な表現を、広範囲のアメリカ人にとって本当に何かを意味するよう蘇らせるのである」。 なんか、陳腐だなあ。





デール・マハリッジ「コロナ禍のアメリカを行く」(原書房 2021.11.24)
ピュリツァー賞作家が見た繁栄から取り残された人びとの物語
“FUCKED AT BIRTH” ― “Recalibrating the American Dream for the 2020s”
第一部 生まれたときからどん底
第二部 カリフォルニア
第三部 ネハダ-アリゾナ
第四部 デンバー
第五部 ミートタウン
第六部 ヤングスタウン
第七部 もしも2020年代が1930年代だったら
第八部 ニューヨーク・シティ
訳者あとがき


この記事へのコメント