映画「THE GUILTY/ギルティ」斬新な手法、最高のサスペンス、余韻或る結末

デンマークの映画という珍しさだが、この映画の作り方はデンマークという理由ではない、クリエイターの斬新さだ。あまり詳しく書くとネタバレになってしまい、この映画の楽しみ方としてはよくない。 簡単な紹介としておく。 アスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)は、警察官で、緊急通報指令室のおべーレーターとして、通報の電話を受けている。アス…
コメント:0

続きを読むread more

映画「ウトヤ島、7月22日」

2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で起きた無差別乱射テロで逃げ惑う人々のドキュメンタリー的な映画。犯人の姿は見えない。聞こえるのは銃声と逃げる人々の叫びだけ。何が起こっているのかわからない、射撃を続けているのが、どこで何人がやっているのかもわからない、ただひたすら逃げるだけ、そういう怖い映画だ。生存者の証言に基づいた作ったフィク…
コメント:0

続きを読むread more

原田マハ「常設展示室」

私は美術のことは皆目わからない。絵を見て感動するとか、なにかを感じるということが、皆無ではないけれど、めったにない。必然的に絵に興味はもたない。それでも、原田マハの美術にまつわる小説は、たいへん好きなのだ。自分では感じないが、絵に何かを感じたり、何か心を紡ぐ人の気持ちは理解できる。特に原田マハの短編小説は、家族の想いがしみわたっていて、…
コメント:0

続きを読むread more

下重暁子「極上の孤独」

下重氏は孤独をたいへん好まれるようだ。子どもの頃からの話題や一生に一度の恋愛、そして、仕事の話・・・「孤独」の話というよりは、下重氏自身の話だ。 確かに、つまらない話題で集まって群れるよりは、ひとりでいるほうが楽しいし、気が楽だ。 ただ、下重氏は、孤独が好きであっても、常日頃、そんなに孤独感は味わっていなのではないだろうか。つれあ…
コメント:0

続きを読むread more

大沼保昭「「歴史認識」とは何か」

「歴史認識」という言葉は、いまでは、1910年代から1945年終戦までの歴史をどう見るかという、特別な意味を持った言葉になっている。大沼氏と聞き手の江川氏は、幾つかの論点に絞って、その歴史のおさらいと、それぞれの立場の人々の認識のあり様を記している。研究者だけあって大沼氏の視点は、バランスに富み、決して偏った極端なものにならない。それが…
コメント:0

続きを読むread more

上西充子「呪いの言葉の解き方」

「呪いの言葉」とは、「相手の思考の枠組みを縛り、相手を心理的な葛藤のなかに押し込め、問題のある状況に閉じ込めておくために、悪意をもって発せられる言葉だ」と、筆者は説明している。この説明は感覚的にわかりにくい。 私なりに補足すれば、説得しやすく反論しにくいが実は偏った言葉を投げかけて封じるものだ。  筆者が例示した「呪いの言葉」には…
コメント:0

続きを読むread more

映画「ナチス第三の男」

ローラン・ビネの原作「HHhH」はなかなかの感動ものだったと記憶している、細部は忘れてしまったが。 そのベストセラー「HHhH」を脚色た映画である。だから、ハイドリヒがナチスの幹部になるまでの経緯にも詳しく、ハイドリヒ暗殺部隊の動きにも詳しい。 ラインハルト(ジェイソン・クラーク)は、優秀だが、酒と女にだらしない。海軍提督の友人の…
コメント:0

続きを読むread more

映画「ビール・ストリートの恋人たち」

1970年代のニューヨーク、コンビニで恋人女性ティッシュにまとわりつく白人男性を店から追い出したことで、白人警官に目をつけられて強姦事件の犯人にでっち上げられたファニー、なんとか再審請求して無罪を勝ち取り刑務所から出してあげたいと奔走するティッシュの家族たち・・・しかし、現実はなかなか思い通りにならない。 70年代の理不尽な人種差別を権…
コメント:0

続きを読むread more

メイ・サートン「74歳の日記」

メイ・サートンは1912年ベルギーに生まれ、4歳の時に父母と共に米国に亡命、成人して英語教師、劇団主宰などを経て、詩人、作家、エッセイストとして活動、多くのファンを得たが、1995年に亡くなった。鹿が庭に出るような自然豊かなメイン州に独居し、体調と相談しながら著述、朗読、講演活動などを精力的に行っている。 73歳の二月末に軽い脳梗…
コメント:0

続きを読むread more

映画「バイス」、すごい映画

これは文句なくすごい映画だ。好きな映画でも楽しい映画でもなく、すごい映画だ。 まず、キャスティングがすごい。これだけ芸達者なメンツをそろえて共演させているなんて。 次いで、それがみな実在の人物で、大物政治家とその関係者で、実際の物語と銘打っているのだから、その大胆さがすごい。 そして、映画の編集、構成がユニークかつ古典的なのに斬新ですご…
コメント:0

続きを読むread more

岡和田晃「反ヘイト・反新自由主義の批評精神」

何の偶然か、岡和田氏という、いまどき稀有な批評家を見つけた。まだ、こんな人がいたのかと、それは大変な驚きであり、60年代、70年代に一気に引き戻された気分だ。だが、哀しいかな、私の読解力、忍耐力は、あの当時の一割にも満たない。つまり、読み続けられないのだ。残念ながら半分も行かずにギブアップ。  そのなかで、いつか手に取って…
コメント:0

続きを読むread more

映画「アリータ:バトル・エンジェル」共演陣の豪華さにびっくり

クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリという、そうそうたる顔ぶれが共演するって、なんなんだろう、こんな漫画みたいなSFファンタジーに。 イド(クリストフ・ヴァルツ)がゴミ捨て場で拾ってきたロボットのような頭部と部品を、自ら修繕して、サイボーグの少女を再生させて、アリータと名づけた。元妻らしきチレン(ジ…
コメント:0

続きを読むread more

加藤陽子「天皇と軍隊の近代史」

「総論 天皇と軍隊から考える近代史」を読めば、筆者のイシューのおおよそはわかる。 第1章からの本文は、その論題を詳細に展開したもので、ある意味、かなり専門的、学術的であるから、理解しにくいところも多い。いずれにしても、汲めども尽きぬ興味の湧いてくる領域であることはまちがいない。 筆者の主要な関心は、「政治主体としての軍、特に陸軍」…
コメント:0

続きを読むread more

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

ブレイディみかこ氏は、私がかなり信頼している書き手の一人である。彼女の書き物からは、必ず何がしらの示唆や知恵を授かる。イギリスはブライトンの、まるでケン・ローチの映画を見ているかのようなリアルな格差社会の姿を知ることができる。今回は、息子が公立校の中では再上位ランクのカソリック小学校から、真逆の地元の公立問題中学に入学、多様性と格差に直…
コメント:0

続きを読むread more

斎藤成也他「大論争 日本人の起源」

なかなか魅力的なタイトルに引き込まれるが、だからといって日本人の起源が明らかになるわけでもない。 最終章にフェイクと定評ある「竹内文書」があるくらいだから、常識にとらわれない「論争」を意図したのだろう。しかし、私のような無知な素人にとっては、もともと常識に欠けているので何が論点なのかもよくわからないのが正直なところだ。 それでも、…
コメント:0

続きを読むread more

中原昌也他「映画のディストピア」

私のイメージするディストピア映画は、どれも似通っている。一握りの富裕層があらゆる権力を握っていて、圧倒的多数の貧民が、荒んだ狭い地区にひしめきあって貧しい暮らしをして、暴力的に管理されて働かされる。酷い場合には、彼らは殆どゾンビになっている・・・・その環境に疑問をもって戦いを挑むヒーロー、ヒロインが現れる・・・といったものだ。 し…
コメント:0

続きを読むread more

映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

この映画の面白いところは、辻一弘氏(現カズ・ヒロ氏)のメイクアッブで変身したゲイリー・オールドマンの演技もさることながら、ウィンストン・チャーチルがいかに当時のイギリスで偶然生まれた首相であって、英国が徹底抗戦に傾いたのは、ぎりぎりの選択だったという事実だ。 政敵から見れば、ウィンストン・チャーチルは、口先だけでごまかす、勇ましい…
コメント:0

続きを読むread more

映画「マイ・サンシャイン」

邦題を「マイ・サンシャイン」と名づけたのはどうしてなのだろうか。両親と暮らせない子どもたちを引き取って面倒見ている女性ミリー(ハル・ベリー)とその隣人オビー(ダニエル・クレイグ)の妙な男の人生に陽のあたる祝福でもしたかったのだろうか。原題は「KINGS」、これはあきらかに、ロドニー・キングとともにあると言いたいのだと思う。だから、たぶん…
コメント:0

続きを読むread more

米澤穂信「Iの悲劇」

「Iの悲劇」の「I」とは、「アイ、ロボット」の「I」ではなく、何かのイニシャルでもない。いわゆる、I-ターンの「I」だった。 住民が誰もいなくなったある村に移住を呼び掛けて村を再生させようとする、Iターン・プロジェクトにまつわる悲喜劇を語っている。 移住者に起こるトラブル、事件を、ミステリータッチで謎解きをしてゆく。まあ、エンターテイ…
コメント:0

続きを読むread more

湯川聡「よくわかる最先端白内障治療」

この手の実用書はあまり記録することはないのだが、よくまとまった分かりやすい本なので記録しておく。 私も眼科の医師と白内障・緑内障の手術を同時にするかどうか相談している。白内障の手術自体は比較的簡単に考えているが、それでもレンズの選択、事後のケアなど、考慮することは少なくない・ ・・・レーザーによる白内障手術の進め方 1. …
コメント:0

続きを読むread more

映画「バハールの涙」

女性戦場ジャーナリストのマチルド(エマニュエル・ベルコ)は、同業の夫を地雷で失くし、娘を置いて戦場を駆け巡っている。娘との電話だけが生きがいでもある。そんなマチルドが、ISとの戦闘に果敢に挑む女性だけの部隊と出会った。隊長のバハール(ゴルシフテ・ファラハニ)は、クルド人弁護士で夫と息子との幸せな日々が、ISの来襲で一瞬で吹き飛び、夫は射…
コメント:0

続きを読むread more

ブロニー・ウェア「死ぬ瞬間の5つの後悔」

「死ぬ瞬間の5つの後悔」というタイトルだけでは、想像つかない側面がある。それは、筆者ブロニーの半生記でもあるという面だ。 「5つの後悔」は、ブロニーが介護の仕事をして看取った人々の思いなどを挙げているが、それ自体は必ずしも目新しいものではない。 この本の特色は、ブロニーの並外れたポジティブな人生観、しかも不遇や孤独や鬱のときも経験したう…
コメント:0

続きを読むread more

トニ・モリスン「「他者」の起源」

私のここ数年の最大の関心は、なぜ日本人は東アジアの人々に対する差別感情をもつようになったかという問題だ。 それとはもちろん環境も歴史もまったく違うけれども、アメリカ人、(「アメリカ人」という言葉は白人を内包している)の黒人に対する差別の「起源」が分かれば、多少は参考になるかもしれない、というのがこの本を手にした動機だ。しかし、残念ながら…
コメント:0

続きを読むread more

山折哲雄「老いと孤独の作法」

山折哲雄氏の著作はよく目にしていて、基本的には信頼に足る哲学者だと思っている。 ただ、仏教哲学とそれに裏打ちされた思想を好ましいものとして受け止めてはいるが、決してよく理解しているわけではない。 この新書本は、2005年から2018年にわたって文藝春秋などに掲載されたものをまとめている。とくに根幹の議論があるわけではないので、興味を惹い…
コメント:0

続きを読むread more

柚木麻子「マジカルグランマ」

柚木麻子氏はたぶん初めての体験だ。諧謔というのだろうか、ちょっと苦いところもあるが婆さん女優の、自分が有名になって好きな仕事したい、というはた迷惑な我が儘し放題だが応援せざるをえなくなるような頑張り。 「マジカルグランマ」とは、作中登場人物のある女性が、正子が大好きな「風と共に去りぬ」のスカーレットの乳母であるマミーをマジカルニグ…
コメント:0

続きを読むread more

映画「いつだってやめられる} シリーズ

渋谷文化村のル・シネマで上映されていた「いつだってやめられる」シリーズ、変な題名の変な映画と思っていたが、WowoWで上映されていた。ル・シネマで上映するくらいだから一定の評価を得られている映画なんだろう。 確かに、一級のエンターテインメントといっていい。ただ、私が何よりも、この映画でびっくりしたのは、その映像の色彩感覚だ。 予算…
コメント:0

続きを読むread more

映画「テルマ」

ラース・フォン・トリアー監督の親類と言われるヨアキム・トリアー監督の作品。予告編を見て、本編をみたいと思っていたが見逃していた。 Wowowで放映され、たいへんうれしい。期待に違わず、すばらしい映画だった。ホラー映画は基本的には嫌いなのだけれども、ときに美しいホラー映画が出現することがある。たとえば「私のオオカミ少年」「ぼくのエリ200…
コメント:0

続きを読むread more

ポール・コリアー「エクソダス 移民は世界をどう変えつつあるか」

見かけとは異なるが、内容はたいへん学術的なものだった。移民を取り巻くイデオロギーも感情論もまったくなく、移民について、データや研究せてかに基づく実証的な方法で、政治的、経済的、社会的な影響やダイナミズムをとらえようとしている。 読みにくいわけではないが、精緻な言及でたいへん読み応えがあって、残念ながら期限内に読み切れなかった。 全…
コメント:0

続きを読むread more

映画「マリッジ・ストーリー」

皮肉な警句作家なら、結婚とは、愛し合っているかどうかに関わらず傷つけ合いと罵倒し合いをゴールとする制度である、というかもしれない。そして、離婚とは、夫も妻も敗者となり、弁護士だけが勝者となる闘い、というかもしれない。もっとも、アメリカ社会では、という前提がつくかもしれない。 私の大好きな名作である「フランシス・ハ」の監督であるノア…
コメント:0

続きを読むread more

映画「ジョジョ・ラビット」

ヒトラー・ユーゲントをある意味茶化したブラック・コメディと思いきや、意外にシリアスな展開になり・・・・。ウサギも殺せないと馬鹿にされながらも、立派なヒトラー・ユーゲントの団員になるのだと、尊敬するヒトラーにいつも心のなかで語りかけるジョジョ。 しかし、ジョジョの両親はドイツは愛しているが反ヒトラーの活動をしている。母親ロージイ(スカーレ…
コメント:0

続きを読むread more