テーマ:歴史

末木文美士「日本思想史」

「日本思想史」の確立はなかなかむずかしそうだ。ともすれば、「日本思想」史に偏し、イデオロギー的な懸念がうまれやすい。それを意識しすぎると普通の歴史書になってしまう。私が知りたいのは、日本「思想史」だが、確かに西洋思想史と比べて系統立ててゆくのが難しいのかもしれない。 末木氏は、日本思想史の確立を早くから力を入れておられるようだ。私…
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大沼保昭「「歴史認識」とは何か」

「歴史認識」という言葉は、いまでは、1910年代から1945年終戦までの歴史をどう見るかという、特別な意味を持った言葉になっている。大沼氏と聞き手の江川氏は、幾つかの論点に絞って、その歴史のおさらいと、それぞれの立場の人々の認識のあり様を記している。研究者だけあって大沼氏の視点は、バランスに富み、決して偏った極端なものにならない。それが…
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加藤陽子「天皇と軍隊の近代史」

「総論 天皇と軍隊から考える近代史」を読めば、筆者のイシューのおおよそはわかる。 第1章からの本文は、その論題を詳細に展開したもので、ある意味、かなり専門的、学術的であるから、理解しにくいところも多い。いずれにしても、汲めども尽きぬ興味の湧いてくる領域であることはまちがいない。 筆者の主要な関心は、「政治主体としての軍、特に陸軍」…
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斎藤成也他「大論争 日本人の起源」

なかなか魅力的なタイトルに引き込まれるが、だからといって日本人の起源が明らかになるわけでもない。 最終章にフェイクと定評ある「竹内文書」があるくらいだから、常識にとらわれない「論争」を意図したのだろう。しかし、私のような無知な素人にとっては、もともと常識に欠けているので何が論点なのかもよくわからないのが正直なところだ。 それでも、…
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山本晴太・殷勇基他「徴用工裁判と日韓請求権協定」

2018年10月30日の日本製鐵徴用工事件に対する韓国大法院再上告審判決は、日本政府などに強い反発を招いたが、その流れは、2012年の日本製鐵徴用工事件大法院上告審判決で既に決まっていたことを踏襲したに過ぎなかった。つまり、文在寅政権の方針でもなく、保守の李明博政権の時に既に定まっていた。2018年まで実現しなかったのは、朴槿恵政権に忖…
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関裕二「検証 邪馬台国論争」

古くは松本清張などが歴史学者の世界に殴り込みをかけたかのような話題もあった、有名な邪馬台国論争だが、関連するものを読んだことはなかった。古代史は面白いとは思うが、どこかという所在地の議論にはあまり興味がなかった。 あらためて筆者がまとめた論争の経緯や、論点などを知ると、大陸・半島との関連、渡来人と縄文人、鉄の流通、出雲・吉備との関…
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徐京植(ソ・キョンシク)「皇民化政策から指紋押捺まで」

かなり古いブックレットで、1985の外国人登録に関わる指紋押捺拒否が1万人を超えるというあたりの記事が最新の内容となっている。 で、吉田清治氏の証言など、いまでは、あまり信用できない内容も含まれているので、現在では、内容全体の信頼感は若干欠けている。 それでも、おおよそは間違いではないし、筆者の主張は、そんなことでは変わらないだろう。な…
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大澤絢子「親鸞「六つの顔」はなぜ生まれたのか」

親鸞が語られるときの「六つの顔」について。それだけの顔があるということは、つまり、親鸞が何者なのかよくわかっていない、ということでもある。実在否定説まであったとか。「親鸞という実在の人物に絡みついた無数の糸を解きほぐし、「如来の化身」・「法然の弟子」・「説法者」・「本願寺の親鸞」・「妻帯した僧」・「「歎異抄」の親鸞」という、親鸞の「六つ…
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吉見義明「買春する帝国 日本軍「慰安婦」問題の基底」

副題に「日本軍「慰安婦」問題の基底」とあるように、いわゆる「従軍慰安婦」についてはほとんど触れずに、その「基底」となる、一般の性の売買について、その制度や運用を資料で追求しながら、その根底に潜むものを追っている。 プロローグに記述された二つの文章ですべてを語っているようにも思える。 「日本は明治維新直後の1872年に「太政官…
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西野瑠美子・小野沢あかね「日本人「慰安婦」」

「慰安婦」(Comfort Woman)は、実は固有名詞で日本軍従軍慰安婦を意味する言葉と読んだことがある。「性奴隷」と呼ぶ方が一般なんだと。 そんな「慰安婦」の話題は、朝鮮人慰安婦が多い。それは、90年代に、日本政府がその存在を否定したから怒りで告白した韓国人女性が現れたからだ。それから次々と名乗りを上げる人が現れた。「慰安婦」は、日…
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三谷太一郎「近代と現代の間 三谷太一郎対談集」

東大の政治学者である三谷氏は、学者らしい学者だ。日本の近現代の政治史についての対談を記録している。三谷氏自身の政治的主張はもちろん主題ではないが、ところどころにその片鱗がうかがわれる。しごく真っ当な見解だ。 なかでも、こんな発言が印象的だ。「安倍政権について私が一番気に掛かっているのは、今樋口さんが言われたように戦前・戦中の多くの国民の…
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チョ・セヒ「こびとが打ち上げた小さなボール」

なかなか独自の雰囲気を持った、寓話的な物語だなと感じつつ読み進めていたら、この小説は最近創作されたものではなく、70年代後半に書かれたもので、それも有名なロングベストセラー作品と知って、寓話などではなく、きわめてリアルな物語なんだと理解した。 しかしリアルな物語をリアルには描くことは70年代、80年代にはできなかった。軍事独裁政権は反体…
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山崎雅弘「沈黙の子どもたち」

目次にあるように、日本軍の大量殺害事例として、日中戦争における上海から南京事件、シンガポール占領後の華僑殺害、沖縄戦のさなかにおける自国民(沖縄住民)の殺害を挙げ、ドイツ軍とナチの事例として、スペイン内乱のゲルニカ空爆、アウシュヴィッツ、ハイドリヒ暗殺の報復にチェコ・リディツェ村の殲滅が挙げられている。そして最後は、米軍の広島・長崎だ。…
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世宗大学独島総合研究所・保坂祐二編「文書・証言による日本軍「慰安婦」強制連行」

興味深いという言葉は不謹慎かもしれぬが、慰安婦を朝鮮半島や日本内地から、満州、中国、東南アジアに送るために、内務省や警察と軍とが、知恵を絞っているのが、たいへん官僚的で興味深い。内務省や警察などは、あきらかに国際条約違反や皇軍の評判や権威を落とさぬよう、内務省は無関係というスタンスをとれるよう、いろいろな手続きを定め実視させようとする。…
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山内昌之・細谷雄一編「日本近現代史講義」

自民党の「歴史を学び未来を考える本部」、いわゆる歴史本部で三年にわたって講義した内容をもとにしているらしい。それを「あとかき」で知って、なーるほど思った。どことなく史料の出所が、ウン?と思うところがあった。田母神氏だったり林房雄氏だったり。 たが、そうと知っても、内容が極度に偏向していたとは思えない。それは、私に判断評価できるほどの歴史…
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中塚明「近代日本と朝鮮 第三版」

日本と朝鮮半島とのかかわりについて、かなり詳細に記述されている。若干、言葉遣いと視点にイデオロギーの香りを感じるが、内容は史料に基づく出来事の記載が中心だから、記述の信頼性は高いのだろう。ななめ読みでもよいから、この程度の内容は日本人ならみな、高校生程度で学ぶべきだろうと心からそう思う。歴史教育はここまでやらないと、まともな前進はできま…
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水野直樹・藤永壮・駒込武編「日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する」

日本の植民地支配を肯定・賛美する「論」に対して、それぞれの専門家が検証・反論している。日本会議に属する人々とは限らないが、肯定・賛美論者の論は、結構大雑把で、トリックに見える。それに対するカウンターは、岩波ブックレットらしく上品で、あまり強いカウンターになっていないように感じる。もっと、徹底して叩きつぶしてほしいのだが、ページ数の制約も…
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山崎雅弘「歴史戦と思想戦」

産経新聞などが展開した「歴史戦」を読み解き、それに対する反論を丁寧に展開している。 筆者は、「歴史戦」が「先の戦争中に日本政府が国家として展開した「思想戦」や「宣伝戦」の継続なのではないか」と洞察している。 ケント・ギルバート氏や黄文雄氏などの「歴史戦」の論客たちの論、というよりはむしろ「トリック」は、筆者の分析で、たわいないものと分か…
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平野久美子「牡丹社事件 マブイの行方」

「日本でも台湾でも「牡丹社事件」と呼んでいる一連の事件は、1871年に起きた琉球民遭難殺害事件と、陸軍中将の西郷従道が大軍を率いて1874年に台湾へ出兵した「征台の役」をさす」。日本ではほとんど忘れ去られた事件だが、台湾でも日本でも関係者の末裔は、現在でも細々と真相を探るために調べ、和解を模索している。 沖縄の地に深く傾倒していた筆者が…
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安田未知子「13歳の少女が見た沖縄戦」

13歳の少女に対して、一高女の校長先生は、ゴムの地下足袋を渡しながら、「これは天皇陛下からいただいたものです。一緒に死ねる人だけにあげます」と言い、牛島中将と校長先生の間の伝令役を指示した。標準語を使えるからだろう。そして、上級生には、「国を護るために学校に留まれ、今逃げていく者は国賊だ」と訓話し、玉砕の歌を歌わせました。その上、疎開し…
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加藤直樹「TRICK トリック 朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち」

この本は日本人必読の書だ。工藤美代子・加藤康男の「関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった」という本の、朝鮮人虐殺を否定する方法、つまりトリックを明らかにして詳らかに解説する。こういうことは絶対必要だ。自民党都議が小池知事に勧めたように、歴史修正主義者が、この本に書いてあるからと勧めたその場で、否定する本を読めとカウンターできる。 しか…
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藤原彰「餓死した英霊たち」

日中戦争、太平洋戦争の戦死者230万人のうち、140万人は餓死あるいは栄養失調がもとになった戦病死といわれる。戦闘による戦死は半分以下だ。こんな体たらくで、何が英霊だ、何がこれらの人たちのおかげで現在があるだ。まともな国、まともな軍なら、この140万の大半は死なずに済んだろうに その代表的なものは、ポートモレスビー攻略戦、ガダルカ…
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加藤直樹「九月、東京の路上で」

都知事が朝鮮人虐殺の異例の言葉を記念日に語ることをやめただけでなく、いま、朝鮮人暴動は実際にあって、自警団がそれと戦ったと信じる人々が増えているらしい。この本のように、どんなに実際の証言が公開されても、認めたくないことは認めないようだ。そんな人がいま韓国に対しては何言ってもいいんだと、白昼のテレビ番組で韓国たたきをしている。  巻…
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伊藤孝司「無窮花ムグンファの哀しみ」

映画では、「慰安婦」にされた朝鮮人女性のドキュメントを2,3回観ましたが、書籍では読んだことなかったと思います。今回初めて、彼女たちを取材した伊藤浩司氏のまとめたドキュメンタリーを目にしました。従軍慰安婦は、日本政府も軍の関与を認めていますが、実態は、「関与」どころではなく、拉致・強制連行・詐欺まがいの口利きに始まり、まさに連行・奴隷的…
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山崎雅弘「戦前回帰 「大日本病」の再発」

戦前・戦中の日本を覆っていたものは、国体とよぶ定義し難い概念と、国体明徴を徹底し、それに抗う者たちを排除してゆく、そんな空気だった。もう周知の話ではあるが、筆者が光をあてているのは、国家神道を軸とする非合理的な観念がまともな考え方を押しのけてゆく姿であって、政治権力そのものではない、まさに「大日本病」としか呼びようのない病的な空気であっ…
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星亮一編「「朝敵」と呼ばれようとも」

官軍と戦い戦死したか、もしくは投降した幕府側の人々で、筆者グループは「殉国の志士」と呼ぶ。確かに、薩長土肥の人々や浪人たちが維新の志士なら、こちらも志士だろう、負けると分かっても戦わざるを得ない殉国の志士。 目の付け所は、とてもいいし、私もかなり興味あるから手に取ったのだけれども、全体的に記述が薄く、経歴を記すだけでページが尽きて…
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林えいだい「筑豊・軍艦島 朝鮮人強制連行、その後」

以前、長崎軍艦島が世界遺産に登録されるという話があり、韓国から抗議があったと聞く。そのときはずいぶん細かいことに文句言うものだと思ったが、この本を読むと、これなら私でも抗議したかもしれないと思いなおす。それほどに、軍艦島(端島)は朝鮮人、中国人の犠牲が大きい。筆者も言う。 「端島は観光資源ではなく、炭鉱犠牲者、とりわけ朝鮮人、中国人の追…
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金時鐘「朝鮮と日本に生きる 済州島から猪飼野へ」

日韓の話題で、韓国側が「親日派」を非難していたことかあり、日本側がなんだなんだ、なぜ親日を非難するんだと問題にする、というやりとりがあった。日本人はついこの間の歴史すら知らないのだとおもう。金時鐘氏の「朝鮮と日本に生きる 済州島から猪飼野へ」を読むと、1945年の「解放」後に、いかに米軍と植民地時代の「親日派」が反共のために韓国民衆を蹂…
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映画「ひろしま」

1953年8月に作られながらも、配給会社松竹の米国や政府に対する忖度から大手チャネルでは公開されず、細々と自主上映などで公開されてきたという。そしてなぜか、NHKが今年放映した。 作成時のドキュメンタリーも含めて。公開を辛抱強く続けてきたのは、撮影時の監督助手だった肩の息子さん、そしてさの遺志を継いだお孫さんという。  原作は「原…
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垣根涼介「信長の原理」

垣根涼介氏は私には初めての体験だ。一般にはかなり受けて読まれる作品なのだろうと思うが、私には、あまり受けなかった。歴史小説は好きなジャンルだが、基本的にみな嘘だと思っている。講釈師見てきたような嘘を言い、である。その傾向としては、司馬遼太郎氏のように自分の史観にかなうように創り上げたものか、現代社会を投影して人間関係などを創り上げたビジ…
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