テーマ:歴史

池田雅之・三石学「熊野から読み解く記紀神話」

記紀神話の話はほんとうに興味深い。古代の話は神話であって実際の歴史ではないが、多少は実際の出来事の影響を受けていると想像するから、出雲にせよ、熊野にせよ、日向にせよ、神話の起源の地をあてはめたくなる。 熊野と神話にまつわる複雑な話を簡単に分解すると、イザナミの最期を記念する花の窟、天上・地上・地下の三つの世界を行き来できる神スサノ…
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小松和彦「神になった日本人」

筆者は、神社などで祀られることを「神になった」と称している。 確かに、秀吉や家康など、なんで神格化して祀るんだろうと素朴な疑問が湧くが、シンプルに考えれば、祀りたい人々、祀ることによって何らかの利益を得る人々がいるのだろう。 そのパターンを筆者は、顕彰型の神と名づけている。 本当に神として祀らざるを得なくて祀っているのは、祟りを怖れた、…
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保坂正康「近現代史からの警告」

保坂氏の歴史解説は、古い歴史学者の方法とは異なり、実証的で、ジャーナリスティックであり、いかなる意味でも偏りがない。だから、個々の人間がよく見える。それはともすれば、嘘っぽい人間賛美になりかねないが、保坂氏はいたって冷静で、かつ優しい。不思議な人である。 東アジアの近現代史は、わたしの最も関心の高いものだ。 そのなかでも、日本と日…
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水野和夫・山口二郎「資本主義と民主主義の終焉」

平成という時代を二人のリベラルな学者が読み解く。「平成」でくくるのは、何ら根拠のないことだが、そういう見方もあることは日本では仕方のないことでもある。平成は冷戦の終結とともに始まり、民主主義の終焉が強く予想される中で終わった。何にもいいことのない時代だったともいえる。筆者は、平成という時代は、「理想が終わった時代」、「戦後が終わった時代…
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荒山徹「白村江」

たいへん興味深い歴史的事件を、すこぶるユニークな想像力、いや創造力豊かな物語としてつくりあげた。古代の歴史は小説で知るのも一つの方法だ。所詮本当のことはわからないのだから。しかし、この葛城皇子(天智天皇)の白村江の戦いに向けた謀略は、ちょっと破天荒に過ぎるように私には思える。この説はある種の「日本すごい」論に通じている気さえする。半島を…
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山本太郎「感染症と文明 共生への道」

感染症は人類の歴史の大きな要素となっている。農耕定住生活に変わってから、感染症が多く出現するようになった。排せつ物が近くにあり、家畜動物との接触が増えたからだ。何度かの大規模な感染症の経験で、旧世界は、まったく感染症に無防備な新世界を難なく植民地にしてきたと言う説には説得力がある。そして、天然痘は撲滅できたけれども、しょせん、感染症をゼ…
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水沢不二夫「検閲と発禁」

これはたいへんな労作であり、良書である。 明治中期から太平洋戦争の最中まで、出版物の検閲の経緯や内容について、実際の資料に当りながら、歴史的内容を詳細に論じるばかりでなく、森鴎外や芥川の著作や随筆を、検閲を意識したと思える著述だとして、かなり勇敢に仮説を論じたりもしている。どれも、私にはたいへん目新しい内容である。  検閲と発禁に…
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松岡正剛「日本文化の核心」 

これはよくできた面白い本だ。日本の文化、日本人と日本の歴史について、知っているようでよくは知らない話、常識のようでいて本当には詳しくわからない話、そして知りたくて知るとすぐ忘れてしまう話、そんな話が満載である。 言葉遊びとは言わないけれど、言葉の成り立ちや変遷で事物のあり様を明らかにする、それで、ほほーっと感心する、という講演がよ…
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田中利幸「知られざる戦争犯罪 日本軍はオーストラリア人に何をしたか」

たいへん良い、貴重な本だ。田中氏のような地道な研究者は貴重だ。副題の「日本軍はオーストラリア人に何をしたか」というように、日本軍がオーストラリア人の捕虜に対する虐待・虐殺、オーストラリア人従軍看護婦に対する強姦・虐殺の疑いなどを、BC級裁判資料などに基づいて詳細に解説している。日本軍側の資料はほとんど失われていて、生存者も少なく、真相究…
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小川俊樹「五・一五事件」

まず、これは絶対にお薦め本だ。 二・二六事件に比べて五・一五事件はあまりよく知らないし、本も少ないように思う。犬養首相暗殺くらいしか知らない。しかし、この本を読むと、二・二六事件よりもずっと時代を転換させた事件だったとわかる。 事件により、せっかく軌道に乗りつつあった「憲政の常道」、政党政治が断たれた。昭和維新の運動を民間ではなく…
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坂靖一「ヤマト王権の古代学」

なかなかおもしろい。よくロマンがあるといわれる古代史だが、古墳や遺跡の研究成果だけでなく、「日本書紀」などの記述も明らかに否定的なところ以外を参考にしつつ、大胆な想像?を繰り広げている。私には正解は当然わからないけれども、筆者がかなり踏み込んだ洞察をしているように感じる。筆者はあとがきでこんなことを語っている。「古墳はあくまで墓であって…
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V.E.フランクル「夜と霧」

さて、このあまりにも有名な本も、断捨離を生き残って積まれていた、いつも読んだ気になっていて最後まで読まなかった本のひとつ。今回、パンデミックの影響で図書館からの供給が止まり、長年の宿題を果たすいい機会になった。とはいえ、200ページ足らずの本ながら、きちんと読むのは至難の業。別に難しいことが書いてあるわけではないのに、立ち止まらないと自…
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フェリペ・フェルナンデス=アルメスト「人間の境界はどこにあるのだろう?」

10年以上も前の本で、なおかつ、あまり明解な答えがあるとも思えない、むずかしい問い、「人間の境界はどこにある?」を投げかけて、結論的にも、やはりわからないという、あまり読む意味を見出せない書物ではある。それでも最後まで到達したのは、やはり、この考察にも興味深い歴史があるからだ。 人間と人間でないものを分けるのが難しいのは、生物学的…
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NHK ETV特集「義男さんと憲法誕生」

恥ずかしながら、鈴木義男(ギダンさんと呼ぶ)という、こんな素晴らしい人がいたのかと、初めて知った。 福島に生まれ、法学を学び、東北大学教授時代、軍事教練は殺し合いを教えることと反対して大学を追われ、弁護士として治安維持法の罪に問われた人などを弁護、敗戦後日本社会党の衆議院議員となり、すばらしいタイミングで憲法改定に新たな条文や条項を追加…
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山崎雅弘「1937年の日本人」

まず、お薦め本と書いておく。あとがきにこんな一節がある。「国民が一丸となって、挙国一致で国難に立ち向かう。一見すると、すばらしい光景に見えますが、国の指導部に戦略眼や理性的な判断能力がない、つまり「無能」である場合、真面目な国民全員が一致団結して政府の方針に従えば、国はどんなことになるのか」。 1937年のことではなく、まるで現在のこと…
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末木文美士「日本思想史」

「日本思想史」の確立はなかなかむずかしそうだ。ともすれば、「日本思想」史に偏し、イデオロギー的な懸念がうまれやすい。それを意識しすぎると普通の歴史書になってしまう。私が知りたいのは、日本「思想史」だが、確かに西洋思想史と比べて系統立ててゆくのが難しいのかもしれない。 末木氏は、日本思想史の確立を早くから力を入れておられるようだ。私…
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大沼保昭「「歴史認識」とは何か」

「歴史認識」という言葉は、いまでは、1910年代から1945年終戦までの歴史をどう見るかという、特別な意味を持った言葉になっている。大沼氏と聞き手の江川氏は、幾つかの論点に絞って、その歴史のおさらいと、それぞれの立場の人々の認識のあり様を記している。研究者だけあって大沼氏の視点は、バランスに富み、決して偏った極端なものにならない。それが…
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加藤陽子「天皇と軍隊の近代史」

「総論 天皇と軍隊から考える近代史」を読めば、筆者のイシューのおおよそはわかる。 第1章からの本文は、その論題を詳細に展開したもので、ある意味、かなり専門的、学術的であるから、理解しにくいところも多い。いずれにしても、汲めども尽きぬ興味の湧いてくる領域であることはまちがいない。 筆者の主要な関心は、「政治主体としての軍、特に陸軍」…
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斎藤成也他「大論争 日本人の起源」

なかなか魅力的なタイトルに引き込まれるが、だからといって日本人の起源が明らかになるわけでもない。 最終章にフェイクと定評ある「竹内文書」があるくらいだから、常識にとらわれない「論争」を意図したのだろう。しかし、私のような無知な素人にとっては、もともと常識に欠けているので何が論点なのかもよくわからないのが正直なところだ。 それでも、…
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山本晴太・殷勇基他「徴用工裁判と日韓請求権協定」

2018年10月30日の日本製鐵徴用工事件に対する韓国大法院再上告審判決は、日本政府などに強い反発を招いたが、その流れは、2012年の日本製鐵徴用工事件大法院上告審判決で既に決まっていたことを踏襲したに過ぎなかった。つまり、文在寅政権の方針でもなく、保守の李明博政権の時に既に定まっていた。2018年まで実現しなかったのは、朴槿恵政権に忖…
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関裕二「検証 邪馬台国論争」

古くは松本清張などが歴史学者の世界に殴り込みをかけたかのような話題もあった、有名な邪馬台国論争だが、関連するものを読んだことはなかった。古代史は面白いとは思うが、どこかという所在地の議論にはあまり興味がなかった。 あらためて筆者がまとめた論争の経緯や、論点などを知ると、大陸・半島との関連、渡来人と縄文人、鉄の流通、出雲・吉備との関…
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徐京植(ソ・キョンシク)「皇民化政策から指紋押捺まで」

かなり古いブックレットで、1985の外国人登録に関わる指紋押捺拒否が1万人を超えるというあたりの記事が最新の内容となっている。 で、吉田清治氏の証言など、いまでは、あまり信用できない内容も含まれているので、現在では、内容全体の信頼感は若干欠けている。 それでも、おおよそは間違いではないし、筆者の主張は、そんなことでは変わらないだろう。な…
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大澤絢子「親鸞「六つの顔」はなぜ生まれたのか」

親鸞が語られるときの「六つの顔」について。それだけの顔があるということは、つまり、親鸞が何者なのかよくわかっていない、ということでもある。実在否定説まであったとか。「親鸞という実在の人物に絡みついた無数の糸を解きほぐし、「如来の化身」・「法然の弟子」・「説法者」・「本願寺の親鸞」・「妻帯した僧」・「「歎異抄」の親鸞」という、親鸞の「六つ…
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吉見義明「買春する帝国 日本軍「慰安婦」問題の基底」

副題に「日本軍「慰安婦」問題の基底」とあるように、いわゆる「従軍慰安婦」についてはほとんど触れずに、その「基底」となる、一般の性の売買について、その制度や運用を資料で追求しながら、その根底に潜むものを追っている。 プロローグに記述された二つの文章ですべてを語っているようにも思える。 「日本は明治維新直後の1872年に「太政官…
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西野瑠美子・小野沢あかね「日本人「慰安婦」」

「慰安婦」(Comfort Woman)は、実は固有名詞で日本軍従軍慰安婦を意味する言葉と読んだことがある。「性奴隷」と呼ぶ方が一般なんだと。 そんな「慰安婦」の話題は、朝鮮人慰安婦が多い。それは、90年代に、日本政府がその存在を否定したから怒りで告白した韓国人女性が現れたからだ。それから次々と名乗りを上げる人が現れた。「慰安婦」は、日…
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三谷太一郎「近代と現代の間 三谷太一郎対談集」

東大の政治学者である三谷氏は、学者らしい学者だ。日本の近現代の政治史についての対談を記録している。三谷氏自身の政治的主張はもちろん主題ではないが、ところどころにその片鱗がうかがわれる。しごく真っ当な見解だ。 なかでも、こんな発言が印象的だ。「安倍政権について私が一番気に掛かっているのは、今樋口さんが言われたように戦前・戦中の多くの国民の…
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チョ・セヒ「こびとが打ち上げた小さなボール」

なかなか独自の雰囲気を持った、寓話的な物語だなと感じつつ読み進めていたら、この小説は最近創作されたものではなく、70年代後半に書かれたもので、それも有名なロングベストセラー作品と知って、寓話などではなく、きわめてリアルな物語なんだと理解した。 しかしリアルな物語をリアルには描くことは70年代、80年代にはできなかった。軍事独裁政権は反体…
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山崎雅弘「沈黙の子どもたち」

目次にあるように、日本軍の大量殺害事例として、日中戦争における上海から南京事件、シンガポール占領後の華僑殺害、沖縄戦のさなかにおける自国民(沖縄住民)の殺害を挙げ、ドイツ軍とナチの事例として、スペイン内乱のゲルニカ空爆、アウシュヴィッツ、ハイドリヒ暗殺の報復にチェコ・リディツェ村の殲滅が挙げられている。そして最後は、米軍の広島・長崎だ。…
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世宗大学独島総合研究所・保坂祐二編「文書・証言による日本軍「慰安婦」強制連行」

興味深いという言葉は不謹慎かもしれぬが、慰安婦を朝鮮半島や日本内地から、満州、中国、東南アジアに送るために、内務省や警察と軍とが、知恵を絞っているのが、たいへん官僚的で興味深い。内務省や警察などは、あきらかに国際条約違反や皇軍の評判や権威を落とさぬよう、内務省は無関係というスタンスをとれるよう、いろいろな手続きを定め実視させようとする。…
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山内昌之・細谷雄一編「日本近現代史講義」

自民党の「歴史を学び未来を考える本部」、いわゆる歴史本部で三年にわたって講義した内容をもとにしているらしい。それを「あとかき」で知って、なーるほど思った。どことなく史料の出所が、ウン?と思うところがあった。田母神氏だったり林房雄氏だったり。 たが、そうと知っても、内容が極度に偏向していたとは思えない。それは、私に判断評価できるほどの歴史…
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