テーマ:

吉川徹「分断社会と若者の今」

社会学という学問は、領域によっては、どうも好きになれないところがある。学問としては、論の証明や根拠が必要であって、社会意識については、アンケートのような方法がよくつかわれる。その数字をもとに多変量解析などで分析される。しかし、いわゆる社会調査などの質問や回答の選択肢には、どうしても曖昧さが免れず、曖昧な結果を集めて解析しても誤差が大きい…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

尹東柱ユンドンジュ「空と風と星と詩」

映画「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」や、NHKの「こころの時代」で、尹東柱を知った。詩は中学高校の頃にはよく読み、時には手慰みに書くこともあった。しかし、いまでは詩はまったく別の世界のものだ。それでも、尹東柱の詩は、どこか心に残る。それは、その澄み切った抒情性、素直さ、そして、隠れた強さと言ったものだ。 金時鐘氏は、こんな解説…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

水野直樹・藤永壮・駒込武編「日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する」

日本の植民地支配を肯定・賛美する「論」に対して、それぞれの専門家が検証・反論している。日本会議に属する人々とは限らないが、肯定・賛美論者の論は、結構大雑把で、トリックに見える。それに対するカウンターは、岩波ブックレットらしく上品で、あまり強いカウンターになっていないように感じる。もっと、徹底して叩きつぶしてほしいのだが、ページ数の制約も…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

山崎雅弘「歴史戦と思想戦」

産経新聞などが展開した「歴史戦」を読み解き、それに対する反論を丁寧に展開している。 筆者は、「歴史戦」が「先の戦争中に日本政府が国家として展開した「思想戦」や「宣伝戦」の継続なのではないか」と洞察している。 ケント・ギルバート氏や黄文雄氏などの「歴史戦」の論客たちの論、というよりはむしろ「トリック」は、筆者の分析で、たわいないものと分か…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

平野久美子「牡丹社事件 マブイの行方」

「日本でも台湾でも「牡丹社事件」と呼んでいる一連の事件は、1871年に起きた琉球民遭難殺害事件と、陸軍中将の西郷従道が大軍を率いて1874年に台湾へ出兵した「征台の役」をさす」。日本ではほとんど忘れ去られた事件だが、台湾でも日本でも関係者の末裔は、現在でも細々と真相を探るために調べ、和解を模索している。 沖縄の地に深く傾倒していた筆者が…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

安田未知子「13歳の少女が見た沖縄戦」

13歳の少女に対して、一高女の校長先生は、ゴムの地下足袋を渡しながら、「これは天皇陛下からいただいたものです。一緒に死ねる人だけにあげます」と言い、牛島中将と校長先生の間の伝令役を指示した。標準語を使えるからだろう。そして、上級生には、「国を護るために学校に留まれ、今逃げていく者は国賊だ」と訓話し、玉砕の歌を歌わせました。その上、疎開し…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」

なんとも不愉快で後味の悪い小説だった。前提知識なく読み始め、途中から読むことをやめようかと思うほど気分の悪くなる小説だった。2016年5月10日、巣鴨のアパートで東大生5人がひとりの女子大生に対する強制わいせつで逮捕されたという実際の事件を基に作られたフィクションである。当時、慶応大生や芸能人の性犯罪が続いて話題になっていた記憶は微かに…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

望月衣塑子・前川喜平・マーティン・ファクラー「同調圧力」

「同調圧力」は、私が相当気にしていて。もっとも憎むもののひとつだから、期待して読んだが、あまり同調圧力の根幹に触れなかったような気がする。よく考えてみれば、望月衣塑子、前川喜平、マーティン・ファクラーの3人はもっとも同調圧力に遠い、同調圧力に押しつぶされない人々ではないか、だから、たぶん体でわかっていないから伝わらないのだろう。 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

澤田瞳子「落花」

あまり知らない音楽の世界で、興味を惹かれるようでもあり、異世界ですぐ忘れてしまうようでもあり・・・天皇の血を継ぐ皇族の一員でありながら、音楽を究めた父親、敦実親王に疎んじられて仁和寺の僧にさせられた寛朝。それなりに楽器は究めたのに認められず、梵唄に生きようとする。一度宴の席で耳にした僧、心慶の梵唄、「落花」に心を奪われ続け、坂東…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

加藤直樹「TRICK トリック 朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち」

この本は日本人必読の書だ。工藤美代子・加藤康男の「関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった」という本の、朝鮮人虐殺を否定する方法、つまりトリックを明らかにして詳らかに解説する。こういうことは絶対必要だ。自民党都議が小池知事に勧めたように、歴史修正主義者が、この本に書いてあるからと勧めたその場で、否定する本を読めとカウンターできる。 しか…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

藤原彰「餓死した英霊たち」

日中戦争、太平洋戦争の戦死者230万人のうち、140万人は餓死あるいは栄養失調がもとになった戦病死といわれる。戦闘による戦死は半分以下だ。こんな体たらくで、何が英霊だ、何がこれらの人たちのおかげで現在があるだ。まともな国、まともな軍なら、この140万の大半は死なずに済んだろうに その代表的なものは、ポートモレスビー攻略戦、ガダルカ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

加藤直樹「九月、東京の路上で」

都知事が朝鮮人虐殺の異例の言葉を記念日に語ることをやめただけでなく、いま、朝鮮人暴動は実際にあって、自警団がそれと戦ったと信じる人々が増えているらしい。この本のように、どんなに実際の証言が公開されても、認めたくないことは認めないようだ。そんな人がいま韓国に対しては何言ってもいいんだと、白昼のテレビ番組で韓国たたきをしている。  巻…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

伊藤孝司「無窮花ムグンファの哀しみ」

映画では、「慰安婦」にされた朝鮮人女性のドキュメントを2,3回観ましたが、書籍では読んだことなかったと思います。今回初めて、彼女たちを取材した伊藤浩司氏のまとめたドキュメンタリーを目にしました。従軍慰安婦は、日本政府も軍の関与を認めていますが、実態は、「関与」どころではなく、拉致・強制連行・詐欺まがいの口利きに始まり、まさに連行・奴隷的…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

山崎雅弘「戦前回帰 「大日本病」の再発」

戦前・戦中の日本を覆っていたものは、国体とよぶ定義し難い概念と、国体明徴を徹底し、それに抗う者たちを排除してゆく、そんな空気だった。もう周知の話ではあるが、筆者が光をあてているのは、国家神道を軸とする非合理的な観念がまともな考え方を押しのけてゆく姿であって、政治権力そのものではない、まさに「大日本病」としか呼びようのない病的な空気であっ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

原田マハ「美しき愚かものたちのタブロー」

幼い頃我が家は貧しかったので、比較的裕福だった伯母が親代わりに映画などの行楽によく連れて行ってもらった。そのなかで記憶しているひとつが、西洋美術館の松方コレクションである。モネの睡蓮の絵は素晴らしく、その絵が掲載されているカタログ冊子を買ってもらった姉が羨ましかったものだ。おそらく西洋美術館が1959年6月にオープンした直後、多くの…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

星亮一編「「朝敵」と呼ばれようとも」

官軍と戦い戦死したか、もしくは投降した幕府側の人々で、筆者グループは「殉国の志士」と呼ぶ。確かに、薩長土肥の人々や浪人たちが維新の志士なら、こちらも志士だろう、負けると分かっても戦わざるを得ない殉国の志士。 目の付け所は、とてもいいし、私もかなり興味あるから手に取ったのだけれども、全体的に記述が薄く、経歴を記すだけでページが尽きて…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

林えいだい「筑豊・軍艦島 朝鮮人強制連行、その後」

以前、長崎軍艦島が世界遺産に登録されるという話があり、韓国から抗議があったと聞く。そのときはずいぶん細かいことに文句言うものだと思ったが、この本を読むと、これなら私でも抗議したかもしれないと思いなおす。それほどに、軍艦島(端島)は朝鮮人、中国人の犠牲が大きい。筆者も言う。 「端島は観光資源ではなく、炭鉱犠牲者、とりわけ朝鮮人、中国人の追…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

辻村深月「朝が来る」

佐都子と夫の清和は武蔵小杉のタワーマンションの高層階に住む、しつかりとした、きちんとした生活を築いている。それでも、息子、朝斗の通う幼稚園でトラブルが起こり、孤立してしまうこともあった。しかし、二人は朝斗を信じることで乗り越える。きちんとした人生だ。 一方、片倉ひかりは、ピアノ発表会の都度、家族で行くレストランを楽しみにしていた普…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

宮下洋一「安楽死を遂げるまで」

日本でも早く安楽死法が成立して欲しいと思う。筆者宮下洋一氏が取材した患者の中にも、安楽死法が成立して何時でも死ねると思った時から、安楽死の選択をしないで済んでいるという人がいる。選択肢があるということはとても意味のある事だ。 筆者宮下洋一氏は、とくに安楽死の専門家でも、長らくこの問題を考えつづけたというわけではなさそうだ。だからな…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ジョセフ・E・スティグリッツ「世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠」

スティグリッツ氏の主張がたいへんよくわかるたくさんのレポートをテーマによってまとめ、それらに氏自身の解説を加えたもの。 氏の主張を私なりに簡潔にまとめると、アメリカはレーガン政権以来の間違った政策によって極端な不平等社会となっている。不平等は経済的に見ても成長の阻害になるから、経済政策として今の米国のような極端な不平等をなくさないとい…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

金時鐘「朝鮮と日本に生きる 済州島から猪飼野へ」

日韓の話題で、韓国側が「親日派」を非難していたことかあり、日本側がなんだなんだ、なぜ親日を非難するんだと問題にする、というやりとりがあった。日本人はついこの間の歴史すら知らないのだとおもう。金時鐘氏の「朝鮮と日本に生きる 済州島から猪飼野へ」を読むと、1945年の「解放」後に、いかに米軍と植民地時代の「親日派」が反共のために韓国民衆を蹂…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

アーシュラ・K・ル=グウィン「空を駆けるジェーン」

アーシュラ・K・ル=グウィン「空を駆けるジェーン」(講談社 2001.9.20) ル=グウィン氏とみて、ひょっとして「ゲド戦記」の作家かなと思ったら、やはりそうだった。こんなファンタジー絵本も書いていたなんて。 ジェーンは、仲の良い異父兄弟とともに田舎に住んでいたけれども、どうしても変化を求めたくて、ひとりで街に出た。 しか…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

辺見庸「月」

「1★9★3★7」をはじめ、その独特の言葉をつむぎだす辺見庸氏の最新作は、明らかに昨年の相模原の津久井やまゆり園における障害者殺傷事件を素材としている。素材というよりも、ひょっとしたらいろいろと取材をして、かなり実態に近いのではないかと考えてしまうが、恐らくかなりは辺見氏の創作だろう。 なぜなら、キーちゃんと呼ぶ入所者の思いを通し…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

マリー・ンディアイ「三人の逞しい女」

「ンディアイ」と「ン」で始まる姓は珍しい。筆者はセネガル人の父とフランス人の母との間に生まれた。訳者の解説によれば、17歳で最初の長編小説が絶賛された天才的な作家でプルースト張りの美文なのだそうだ。翻訳ではその辺のところはわからないが、確かに、文章は長く、やたらに説明が続いてゆき、ストーリーとして展開してゆくより、主たる登場人物の意…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

金城孝祐「教授と少女と錬金術師」

金城孝祐氏は初めての体験となる。このような小説を読むと、自分は「文学」というものが、やはり結局わからないとつくづく思う。始めからファンタジーならそれはそれで受け入れるのだが、普通の話に、常識の範囲を超えた不思議な出来事が続くと、なんとなく白けた気になってしまう。 脂肪酸で卒論を書いている薬学部5年生の私、久野はモグリで良質な油を作って…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

垣根涼介「信長の原理」

垣根涼介氏は私には初めての体験だ。一般にはかなり受けて読まれる作品なのだろうと思うが、私には、あまり受けなかった。歴史小説は好きなジャンルだが、基本的にみな嘘だと思っている。講釈師見てきたような嘘を言い、である。その傾向としては、司馬遼太郎氏のように自分の史観にかなうように創り上げたものか、現代社会を投影して人間関係などを創り上げたビジ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

望月優大「ふたつの日本「移民国家」の建前と現実」

日本における「移民」政策を入管法に沿って解説、その問題点を要領よく指摘している。 日本は移民政策をとらないと言うが、実態は、「どんな定義を採用するのであれ、この国にはすでに数多くの「移民」がいる (中略) この国がその「現実」を直視せずにここまでやってきた。 (中略) 「移民」という現実の否認は、この社会に生きる人々をまったく異質…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

内田樹・成瀬雅春「善く死ぬための身体論」

内田樹氏と成瀬雅春氏の対談本は二冊目だという。たいへん魅力的なお二人だけれども、この対談は私にはあまり面白くなかった。 善く死ぬためには善く生きることだと、至極当たり前のことしかないし、それは当然のことでもある。もっとも、もうすこし知性ある読み手なら二人の対談の魅力をより理解できるかもしれないが。 成瀬氏は、最後に、「少しでも、楽…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

チェ・ウニョン「ショウコの微笑」

「作家の言葉」に、最初は小説家としてあまりうまくいかないんじゃないかと、「ショウコの微笑」も予選で落ちたコンテストもあると告白している。その後、別のコンテストで新人賞を受賞したという。  クオン社の「新しい韓国の文学シリーズ」の19巻。同シリーズの15巻には「少年が来る」が掲載されている。どれも読みたい本が並んでいる。 短編集「…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

島薗進「ともに悲嘆を生きる ブリーフケアの歴史と文化」

上智大学グリーフケア研究所所長である筆者の島薗進氏が、グリーフケア全般の話題を記している。 たいへん広く「悲嘆」に関わるテーマを取り上げていて、たいへん興味ぶかいが、私には話題が広すぎて焦点がぼけてしまったように感じる。 グリーフケアは、フロイトの「悲哀とメランコリー」の時代にまで遡ることが出来るが、米国では、ビヴァリー・チャペル…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more