テーマ:

多和田葉子「献灯使」

なかなかシリアスなディストピアの集まりだ。大震災、原発事故、大洪水・・・日本という国が消えてゆく、その後の人びとの暮らしと度重なる放射能汚染に翻弄されてゆく人びと。  多和田氏の語りたかったこと、それはわからないが、はっきりしているのは、原発に依存し続けると未来はない、ということだろう。それを非常に間接的に、寓話的に、ファンタジッ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

リチャード・H・スミス「シャーデンフロイデ」

たいへん面白いテーマなのだが、私の頭では、幅広い話についてゆけず、また題材の多くがアメリカの有名人やTV番組だったりして、話のニュアンスもつかみづらい。そんなこんなで、久しぶりに全部読み切れない本となった。 途中飛ばしたところが少なくないから、肝心なところを読んでいない可能性は高いから、あまり得手勝手な評価につながるコメントは避け、興味…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

マレーナ&ベアタ・エルンマン他「グレタ たったひとりのストライキ」

最近よく目にするグレタ・トゥーンベリさんだが、その主張を読んだことはなかった。巻末に「グレタの主張」として各地でおこなったスピーチが掲載されている。読んで思った。アル・ゴアの映画などを見て分かっている気になっていたが、まったくわかっていなかった。そして、読後の印象を端的に言えば、この子はすごい、この子の言葉にはまったく反論できない、この…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

山本晴太・殷勇基他「徴用工裁判と日韓請求権協定」

2018年10月30日の日本製鐵徴用工事件に対する韓国大法院再上告審判決は、日本政府などに強い反発を招いたが、その流れは、2012年の日本製鐵徴用工事件大法院上告審判決で既に決まっていたことを踏襲したに過ぎなかった。つまり、文在寅政権の方針でもなく、保守の李明博政権の時に既に定まっていた。2018年まで実現しなかったのは、朴槿恵政権に忖…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

安田浩一「愛国という名の亡国」

安田浩一氏の著作は、それなりに目を通しているので、この本に格別新しく感じるトピックはなかったように思う。 「愛国」というところに引かれて手にしたのだが、殊更「愛国」について書き下ろしたものではなく、現在の右翼、政権を批判する人を貶めるデマ、沖縄や在日・中韓に向けられるヘイト、差別・・・などの広い話題を集めているが、それらが底辺で「愛国」…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

シモーナ・スパラコ「誰も知らないわたしたちのこと」

愛し合い、夫婦二人とも待ち望んだ子どもができた。29週になって、出生前診断で超音波検査をしたら、胎児の異常が見つかった。骨格異形成証と言われる。出産に耐えられるかどうかわからない、耐えられたとしても長く生きられることは期待できない、医師の一人は、イタリアの法律ではもう中絶することはできないから神様に委ねようという。別の女性医師は、生まれ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

恩田陸「祝祭と予感」

「蜜蜂と遠雷」の続編というよりは、おまけ、スピンオフといった感じの本。あまりに完成度が高く、面白かったから、その前後のエピソードを追加したくなる気持ちはわからないでもないが、同程度の続編ならすごい!と思うけれど、この短編の積み重ねでは、ちょっとねぇ・・・という感想だ。 まあ、「蜜蜂と遠雷」の余韻を楽しむにはふさわしい。 ところで、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ハンス・ロスリング「FACTFULLNESS」、評判通りのお薦め本

冒頭に13問の三択質問がある。三択だから正答率は33%だ。世界のビジネスマンでもジャーナリストでも学生デモ、筆者の言葉では、チンパンジーでも33%取れるのに、みなチンパンジーよりも正答率が低いという。たとえば、「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」の問いに対して、「A.20% B.40% C.60%」と…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

関裕二「検証 邪馬台国論争」

古くは松本清張などが歴史学者の世界に殴り込みをかけたかのような話題もあった、有名な邪馬台国論争だが、関連するものを読んだことはなかった。古代史は面白いとは思うが、どこかという所在地の議論にはあまり興味がなかった。 あらためて筆者がまとめた論争の経緯や、論点などを知ると、大陸・半島との関連、渡来人と縄文人、鉄の流通、出雲・吉備との関…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

今年一年のまとめ-書籍ノン・フィクション編

今年一年のまとめ-書籍ノン・フィクション編 年ごとに読書力も落ちてゆき、好奇心も長続きせず、新しい分野の本が少ない、またビジネス書、経済の書もずいぶん減った。これはまあ当然かもしれない。結果的に、人権関連の熱のこもった本が多くなった。 印象に残った本・ベスト10 1 林えいだい「筑豊・軍艦島 朝鮮人強制連行、その後」(…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

今年一年のまとめ-書籍フィクション編

今年一年のまとめ-書籍フィクション編 年ごとに読書力も落ちてゆき、最新の小説にはなかなか手が出ない、古典は読みたいが、やはり手が出ない、ということで、偶然、韓国の書き手の本が並んだ。 印象に残った本・ベスト10 1 ハン・ガン「少年が来る」(クオン 2016.10.31) 2 リチャード・フラナガン「奥のほそ道」(白…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

徐京植(ソ・キョンシク)「皇民化政策から指紋押捺まで」

かなり古いブックレットで、1985の外国人登録に関わる指紋押捺拒否が1万人を超えるというあたりの記事が最新の内容となっている。 で、吉田清治氏の証言など、いまでは、あまり信用できない内容も含まれているので、現在では、内容全体の信頼感は若干欠けている。 それでも、おおよそは間違いではないし、筆者の主張は、そんなことでは変わらないだろう。な…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

安東量子「海を撃つ 福島・広島・ベラルーシにて」

300ページ弱の、なかなか濃密な、陳述、告白といったニュアンスさえ感じる重く繊細なエッセイである。四分の一程度まで進んだところでは、筆者は、なんとなく面倒くさい人、理屈っぽい人という印象だったが、徐々に、筆者の語ることは、もちろん他者の影響はあるにせよ、ゼロから自分で体験し、見聞きし、考えたことであって、どんなイデオロギーにも、政治的立…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

大澤絢子「親鸞「六つの顔」はなぜ生まれたのか」

親鸞が語られるときの「六つの顔」について。それだけの顔があるということは、つまり、親鸞が何者なのかよくわかっていない、ということでもある。実在否定説まであったとか。「親鸞という実在の人物に絡みついた無数の糸を解きほぐし、「如来の化身」・「法然の弟子」・「説法者」・「本願寺の親鸞」・「妻帯した僧」・「「歎異抄」の親鸞」という、親鸞の「六つ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

姫野桂「発達障害グレーゾーン」

ライの小説を読むと自分もハンセン氏病じゃないかと疑い、ガンの話を読めば自分も癌じゃないかと思う。そして発達障害の解説書を読めば、自分にもその傾向があるあると。なんとも頼りない性癖の持ち主だが、自分も発達障害かもしれないと思う人は結構多いのではないか。 発達障害の人と健常者の境い目がはっきりしているわけじゃなく、たいへんグレーなのだ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

アリエル・バーガー「エリ・ヴィーゼルの教室から」

たいへん読み応えのある興味深い内容であるが、正直に言えば、わたしには本当のところは理解できていない。70年も生きてきて、大していいこともなかった人生だなと振り返るが、エリ・ヴィーゼル氏のような過酷な体験を味わいながらも、宗教家として、作家として、教育者として世界に貢献し続ける、そんな前向きで明るい姿に、我が身が恥ずかしくなる。 ボ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

吉見義明「買春する帝国 日本軍「慰安婦」問題の基底」

副題に「日本軍「慰安婦」問題の基底」とあるように、いわゆる「従軍慰安婦」についてはほとんど触れずに、その「基底」となる、一般の性の売買について、その制度や運用を資料で追求しながら、その根底に潜むものを追っている。 プロローグに記述された二つの文章ですべてを語っているようにも思える。 「日本は明治維新直後の1872年に「太政官…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

クレイトン・M・クリステンセン「繁栄のパラドクス  -絶望を希望に変えるイノベーションの経済学-」

イノベーションには持続型、効率化、市場創造型の三種類ある。「持続型イノベーションとは市場にすでに存在する解決策の改良」であり、効率化イノベーションは、「企業がより少ない資源でより多くのことを行えるようにするイノベーション」である。「どちらも経済の競争力と活力を維持し、将来の投資に必要なキャッシュを増やすものの」、「成長エンジンの種蒔きは…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

雨宮処凛「この国の不寛容の果てに」

2016.7.26 に相模原障害者施設、津久井やまゆり園で起こった障害者殺傷事件は、それ自体たいへん衝撃的な事件だったが、その犯人の植松聖被告の犯行の動機が、更に驚愕のものだった。日本の莫大な借金を減らすためにも、生きる価値のない障害者、生きていても不幸しか生まない障害者を殺すことは正しいことだと。 この障害者に対する驚くべき不寛…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ミシェル・ウエルベック「セロトニン」

48歳のフロラン=クロード・ラブルストは抗鬱剤のキャプトリクスを欠かすことが出来ない。キャプトリクスは次世代の抗鬱剤でセロトニンの分泌を促進するという。この薬はたぶん作者のフィクションだろう。セロトニンが吸収され減少するのを阻害する薬はあるが、分泌を増やす薬は効いたことがない。できたらよく売れるだろうが、副作用が性的不能という(小説の都…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

西野瑠美子・小野沢あかね「日本人「慰安婦」」

「慰安婦」(Comfort Woman)は、実は固有名詞で日本軍従軍慰安婦を意味する言葉と読んだことがある。「性奴隷」と呼ぶ方が一般なんだと。 そんな「慰安婦」の話題は、朝鮮人慰安婦が多い。それは、90年代に、日本政府がその存在を否定したから怒りで告白した韓国人女性が現れたからだ。それから次々と名乗りを上げる人が現れた。「慰安婦」は、日…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

三谷太一郎「近代と現代の間 三谷太一郎対談集」

東大の政治学者である三谷氏は、学者らしい学者だ。日本の近現代の政治史についての対談を記録している。三谷氏自身の政治的主張はもちろん主題ではないが、ところどころにその片鱗がうかがわれる。しごく真っ当な見解だ。 なかでも、こんな発言が印象的だ。「安倍政権について私が一番気に掛かっているのは、今樋口さんが言われたように戦前・戦中の多くの国民の…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

チョ・セヒ「こびとが打ち上げた小さなボール」

なかなか独自の雰囲気を持った、寓話的な物語だなと感じつつ読み進めていたら、この小説は最近創作されたものではなく、70年代後半に書かれたもので、それも有名なロングベストセラー作品と知って、寓話などではなく、きわめてリアルな物語なんだと理解した。 しかしリアルな物語をリアルには描くことは70年代、80年代にはできなかった。軍事独裁政権は反体…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

丸山ゴンザレス「世界の危険思想」

この方は初めて知った。 観光客があまり行かないところ、それもヤバいところを旅しているジャーナリストのようだ。それでヤバい人々についての知識が豊富なのだろう。 世界の「危険思想」とあるので、レイシズムやナチズムや優生思想、極右・極左思想などが解説されているのかと思いきや、ヤバい人々の頭の中を探るという意味らしい。  ヤバい人々とは、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

荻上チキ「検証 東日本大震災の流言・デマ」

読後、とくに印象に残ることもなかったけれども、流言・デマがこれほどたくさんあるのには、あらためて驚きだ。それらは、SNS等で収集して分析したもので、現地調査したりしたものではない。 だから流言・デマの発信元にその理由を調べるには至っていない。 東日本大震災では、後続の大地震が発生するとか、石油火災で有毒な雨が降るとか、埼玉の水道水…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

山崎雅弘「沈黙の子どもたち」

目次にあるように、日本軍の大量殺害事例として、日中戦争における上海から南京事件、シンガポール占領後の華僑殺害、沖縄戦のさなかにおける自国民(沖縄住民)の殺害を挙げ、ドイツ軍とナチの事例として、スペイン内乱のゲルニカ空爆、アウシュヴィッツ、ハイドリヒ暗殺の報復にチェコ・リディツェ村の殲滅が挙げられている。そして最後は、米軍の広島・長崎だ。…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

エトガル・ケレット「あの素晴らしき七年」

エトガル・ケレットという、イスラエルの作家。多分私には初めての体験となるが、なかなか機知とユーモアに富んだ、しかもなかなか卓越したストーリー・テラーでもある。母親の故郷でもあるポーランドで訳書が結構ヒットしたのがうれしいとも語っているように、ホロコーストの歴史や中東戦争の体験がいまも脈々と生活の中に息づいている。 息子レヴの誕生か…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

世宗大学独島総合研究所・保坂祐二編「文書・証言による日本軍「慰安婦」強制連行」

興味深いという言葉は不謹慎かもしれぬが、慰安婦を朝鮮半島や日本内地から、満州、中国、東南アジアに送るために、内務省や警察と軍とが、知恵を絞っているのが、たいへん官僚的で興味深い。内務省や警察などは、あきらかに国際条約違反や皇軍の評判や権威を落とさぬよう、内務省は無関係というスタンスをとれるよう、いろいろな手続きを定め実視させようとする。…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

山内昌之・細谷雄一編「日本近現代史講義」

自民党の「歴史を学び未来を考える本部」、いわゆる歴史本部で三年にわたって講義した内容をもとにしているらしい。それを「あとかき」で知って、なーるほど思った。どことなく史料の出所が、ウン?と思うところがあった。田母神氏だったり林房雄氏だったり。 たが、そうと知っても、内容が極度に偏向していたとは思えない。それは、私に判断評価できるほどの歴史…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

キム・スヒョン「私は私のままで生きることにした」

キム・スヒョンはイラストレーターにして作家。 この本は韓国で60万部を超えるベストセラーになった、読めば読むほど、韓国社会で生きることの過酷さを感じる。こんな文章が端的に表している。  「画一的な社会の姿は、ひとつの答えだけを追い求める  個人の姿に引き継がれた  だから私たちの社会では、体脂肪は17%、  体重は48kgで…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more