Dora_PaPa_san's_Pages

アクセスカウンタ

zoom RSS デイヴィッド・ピリング「日本―喪失と再起の物語 上/下」

<<   作成日時 : 2015/01/01 18:42   >>

トラックバック 0 / コメント 0

原題は“BENDING ADVERSITY JAPAN AND ART OF SURVIVAL” で、「喪失と再起の物語」という邦題は素晴らしい。  「日本と日本人」論ではあるが、むしろ、「物語」と呼ぶのにふさわしい。 

津波、フクシマ、黒船と明治維新、戦争と戦後復興、失われた20年 ・・・・ 筆者だけでなく、多くの人々の、そのときどきの思いや批評を、その人びとの言葉のままに紹介している。  

日本病として世界から哀れみの目で見られているが、筆者は、一人当たり実質GDP成長率や失業率の数字を挙げ、実はそれほど悪くもないと言う。 「日本経済の名目GDPは過去二十年間でほとんど変わっていない。 対照的に、同じ時期のイギリス経済は152%, アメリカ経済は160%も成長している。 だがそれらの数字をよく調べてみると、大半は物価上昇と人口増によるものだ」と、外だって決してよくない。 また、「過去十年間の日本の一人当たり実質GDP成長率はイギリスやアメリカをわずかながら上回ったのである。」

「日本経済が言われているほど悲惨な状態にはなかったことを示すデータはほかにもある。 2012年末に4.1%だった失業率は、・・・真っただ中においてさえ5.5%を超えることはなかった。」 2012.3の各国の失業率は、・・・アメリカ8.1% フランス10%,  スペイン24.1%  だった。


日本人のなかには日本特殊論も多く、たとえば、藤原正彦が主張する日本人の感性論にも筆者は皮肉交じりに、日本はそれほど特殊なわけではないと反論する。 以下のような論である。

藤原の日本人の特殊性に関する意見に対して、「・・・はかなく散ってしまう桜は隠喩としてもとても美しいイメージを喚起する。 しかしそれを説明するために脳機能マッピングによる実験結果や日本人だけに固有の感性があるという主張まで持ち出す必要があるだろうか。 虫(こおろぎなど)や桜に対する反応やそれ以外の数えきれないほどの事例については、日本人の「文化的連想」として説明できるのであるまいか」と、反論する。

浜矩子「私は島国という言葉が暗示している海賊のイメージが好きなのですが、でも会話の中で何らかの記号として用いられる場合、それは間違いなく外から隔絶された社会の島国根性を意味しています。内向きで、海の向こうを見据えるような気概とは無縁の精神構造です」と語り、島国の外向き性にも期待している。

阪神淡路大震災、サリン事件の1995年が、転機だったと、そして、村上春樹は「今の日本は道を失っているがそれは必ずしも悪いことではないと言った」そうだ。 



 
デイヴィッド・ピリング「日本―喪失と再起の物語 上」(早川書房2014.10.20 )
まえがき
第1部 津波
 第1章 津波 2011年3月11日 陸前高田
 第2章 逆境をバネにする ― 被災地を歩いて
第2部 「二重に鍵のかかった国」
 第3章 島国であることの意味 ― 日本人論の虚実
 第4章 「脱亜」への決意 ― 日本外交のルーツをたずねて
第3部 失われて戻ってきた20年
 第5章 無限級数のように ― 奇跡の戦後復興
 第6章 転落の後に ― 転機としての1995年
第4部 ポスト成長神話
 第7章 ジャパン・アズ・ナンバースリー ― 日本衰退論の嘘
 第8章 リーゼント頭のサムライ ― 小泉純一郎とその時代


************************************************************************:
下巻は、若者の姿、女性の「活用」状態、安倍晋三氏と鳩山由紀夫氏の正反対の「正常化」の試み、震災、原発事故のあとに起こった「市民」としての動き・・・などを、広く語っている。

下巻まで読みとおして、たいへん幅広い話題が語られているが、語られているだけなのである。 どうすればよいとか、こうすればよいとかは、ない。  無くて当然なのだが、歴史書を読んでいるような、突き放された感覚もある。 保守主義者もリベラルも、同じ程度に、不満に思い、同じ程度に新たな発見を得る、そんな感じだ。


興味深いエピソードとしては、

・日本は特許登録件数ではアメリカさえ上回り、今でも世界をリードしている。 そのわりにノーベル賞受賞者数や被引用回数が少ないのは、日本の技術革新は漸進的な改良が多いからかもしれない

・2012年、日本企業による海外企業の買収総額は、1130億ドルで、米国の1740億ドルに次いで2位、中国の倍近く

・ロゴフ「長期的な平均所得の成長を最大化しようとする行為に永遠に熱中することには、ある種のばかばかしさが付きまとう」・・・ つまり、「成長」がそんなに大事なことか

・古市「高度成長期に構築された旧来のシステムは、あまりにもうまく機能していたので、すべてはそれを中心に固定化されてしまいました」  ・・・ 「旧システムが機能不全に陥っているという明白な証拠がないので、保守主義が幅を利かせているのです」・・・ しかし、古市の、若者の幸福感には異論も多い。 

・イラクで捕虜になった今井紀明らに対する国内の反応(それは外務省がメディアを通してリードしたらしいバッシング)は、理解しがたく、コリン・パウエルの方が理性的だ。「私は、これらの日本市民が、大義や善行のために自ら危険に身をさらしたことを嬉しく思います」

・2012年ロンドン五輪に出発したサッカーの男子チームはビジネスクラスだったのに、なでしこ・ジャパンはエコノミーだった、ワールドカップで優勝したあとなのに。

・200万人強のプレカリアート(不安定な非正規雇用の労働者階級)に占める女性の比率は大きい

・安倍は、「教育基本法の改正に成功し、改正前の1947年の法律で「教育の目的」を記した第一条から「個人の価値をたっとび」という文言を削除した。」




(下巻)
第4部 ポスト成長神話 続き
  第9章 ポスト成長期の日本 ― 少子高齢化を超えて
  第10章 約束された道 ― 模索する若者たち
  第11章 几帳の向こう側から ― 変化する男女関係
第5章 漂流
 第12章 日本以外のアジア ― 歴史問題の呪縛
 第13章 異常な国家 ― 二人の総理大臣の挑戦
第6部 津波のあとで
 第14章 福島原発事故の余波 ― それが明らかにしたもの
 第15章 市民たち ― 新たなる社会の胎動
 第16章 津波のあとで ― 復興へと歩む人々
あとがき



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
デイヴィッド・ピリング「日本―喪失と再起の物語 上/下」 Dora_PaPa_san's_Pages/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる