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zoom RSS 宮下奈都「羊と鋼の森」

<<   作成日時 : 2016/10/05 09:00   >>

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「羊のハンマーが鋼の弦を叩く。それが音楽になる」それがピアノだ。 北海道の山間の集落に育った、外村少年はピアノを弾いたこともなかった。しかし、17歳、街の高校の体育館にあるピアノを板鳥さんが調律しているのを見て、その場で、自分が探していたものはこれだと知った。ピアノの音に森の匂いを感じた。頂いた名刺の店に行き、弟子にしてくださいと頼む。そして、勧められた調律師の専門学校に進み、板鳥さんのいる江藤楽器に就職し、見習い調律師として修業中だ。

会社のピアノを毎日調律して腕を磨く。 先輩の調律師について行き、顧客対応、調律技術、音色の作り方・・・など学ぶことばかりだ。顧客がどんなピアノを望んでいるのか。望むとおりの音にするべきなのか、顧客が望む以上のいい音にすべきなのか、とかとか、悩むことばかりだ。ピアノも弾けない、ピアノ曲も良く知らない、才能も無くてやっいけるのだろうか・・・

「才能とか、素質とか、考えないよな。考えたってしかたないんだから。」・・・「ただやるだけ」・・・「才能がなくたって生きていけるんだよ。 だけど、どこかで信じているんだ。一万時間を越えても見えなかった何かが、二万時間をかければ見えるかもしれない。 早くに見えることよりも、高く見えることのほうが大事なんじゃないか」・・・そして、「まっとうに育ってきた素直な人」が「根気よく、一歩一歩、羊と鋼の森を歩き続けられる人なのかもれない」

以前、出版社で辞書編纂の仕事を描いた小説を読んで、とても興味深かったが、この調律師の修業の物語もたいへんおもしろい。 何かの仕事をコツコツ続けて行く物語は、私は好きなのかもしれない。自分の仕事では不十分だったなと振り返るから、小説の世界では好きなのかもしれない。

章立ても無く、空白行だけで場面転換を淡々と進めている。コツコツとした内容の本には、淡々と記述するのがいい。いろんな美しい言葉に溢れていて、森の空気や星空も想像できる。お薦め本。

原民喜の言葉がいい。「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、厳しく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」


そのほかにも、いろいろ「いい言葉」が満載だ。

「ピアニストは鍵盤を鳴らすんじゃない。弦を鳴らすんだ。 自分の指先がハンマーにつながっていて、それが弦を鳴らすのを直に感じながら弾くことができる」

「天の川で、カササギが橋になってくれるっていう話があります」・・・「ピアノとピアニストをつなぐカササギを、一羽ずつ方々から集めてくるのが僕たちの仕事なのかな」

「ピアノの基準音となるラの音は、学校のピアノなら440ヘルツと決められている。」 赤ん坊の産声は世界共通で440ヘルツなのだそうだ。・・・モーツアルト時代は422ヘルツだった





宮下奈都「羊と鋼の森」(文藝春秋2015.9.15



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