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zoom RSS ジョセフ・E・スティグリッツ「ユーロから始まる世界経済の大崩壊」

<<   作成日時 : 2016/12/30 11:05   >>

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比較的読みやすいのだけれども、経済学は頭に入らない。極端に要約すると、政治統合をおいて通貨統合だけしたユーロは、始めから間違っていて、構造的にユーロは機能しないという。

ギリシャ危機でギリシャを悪者にしたトロイカ(IMF、欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会)は、新自由主義のイデオロギーと理屈に合わない政策を進め、一層の悪化を招いた。ギリシャへの過酷な要求は、間違っている上に、欧州グローバル企業の側に立ち、ギリシャとその国民のためには、まったく役に立たなかったと論破する。

スティグリッツ氏は、ギリシャの円満な離婚シナリオ(ユーロからの離脱)を描き、更に欧州が、提案する諸々の対応をできないならユーロ廃止も仕方ないとまで言及する。

結局、ユーロの問題も、新自由主義、市場原理主義の問題だったのかと、この口当たりのいい、経済のプロも素人も一緒になって歓迎する思潮の浸透力、怖さを改めて知る。


いくつか引用しておこう。

「ユーロ圏の失敗の大部分は、構造面においても政策面においても、ふたつの原因の組み合わせに帰せられる。 ひとつは、ユーロ構築時に優勢だった的外れな経済イデオロギー。もうひとつは、強力な政治的連帯の欠如だ。この組み合わせに導かれたユーロは、誕生すると同時にみずからを破壊する種をまいてしまったのである」

「今日では、市場原理主義者−ときとして新自由主義者と呼ばれる―でさえ、マクロ経済の安定を維持し、財産権と契約履行を保証するには、政府の介入が必要であると認めている」

「新自由主義者が好んで取り組むテーマのひとつは、民営化だ。 政府は比較優位性をもつ分野だけに集中し、のこりはすべて民間に任せるべきである、と彼らは強く主張する。これは理論としては筋は通っているが、じっさいのところ、政府が比較優位性をもつ分野を見極めるのは難しい」

(それぞれの国の)「政府は、事実上こういいふくめられていた。 ほかに選択肢はない。 条件を受け入れないなら、貴国の銀行システムは破壊され、貴国の経済は荒廃し、貴国はユーロから追放される・・・民主主義とは何なのだろうか? 最も大切な価値観や経済観について、市民が発言権さえ与えられない制度を、民主主義と呼ぶのだろうか?」 

「今回、ユーロ圏で起こった出来事は、連綿とつづく救済劇の最新版にすぎない(たいていの場合、救済には当事国の名前が冠される。メキシコ救済、韓国救済、アルゼンチン救済、ブラジル救済、インドネシア救済、タイ救済。 しかしどの例をとっても、実態は欧米の銀行の救済である。」

「ユーロ圏が強いる制約と、不合理な市場と、新自由主義のイデオロギーの組み合わせが、ユーロの為替レートの過大評価を”創出”し、最終的に危機を招き寄せたのである」

「新自由主義のイデオロギーは、激しい変動をもたらす真の原因を無視し、理解しやすく非難しやすい原因、すなわちギリシャの財政上の失敗に都合よく飛びついたのである」

以上は、新自由主義の浸透したトロイカの人々を、語っているが、ギリシャに対する、見当違い(たぶん)の施策、つまり、強制的な提案は、あまりにもばかげているようにみえる、素人の私にも。

トロイカガ求めた奇妙な論争として・・・

・本物の新鮮な牛乳から、”新鮮”の看板をはずさせ、保存可能期間の基準を緩和させた

・従来の食パンの大きさ、0.5, 1, 1.5キロの規制撤廃を要求・・・「たとえ、ギリシャの従前の規制を擁護できないとしても、国全体を人質にとって、こんなささいな点にまで要求を突き付けるのは、あまりにも非常識としか言いようがない」

・薬局以外での一般市販薬の販売が禁止されていた、その規制の撤廃要求・・・チェーンを展開する多国籍企業のためとギリシャ国民は受け取った

・”より柔軟性の高い労働市場の創出”要求・・・「労働者の交渉力を弱体化させ、賃金をさらに下落させ、企業の利益を増加させることだった。 トロイカは団体交渉権という労働基本権にまで懐疑の目を向けた」




さて、日本でも、こんな説は役に立つのではないか。

「一部の民営化―たとえば、生活に必須の基本サービスを提供する事業の民営化―は、価値観の問題を提供する。 電気や水道への最低限のアクセスを基本的人権と捉える社会は、利益の最大化をはかる独占者に事業が譲渡されれば、権利と価値観が損なわれると感じるかもしれない」

「中央銀行の運営は、鉱山の運営と変わりなく、優秀な技師(エコノミスト)に仕事を任せれば、すべてがうまくいくと考えられていた。
しかし、先述のとおり、中央銀行高官が下す決定は、単なる技術官僚があつかう問題の枠を越えている。富の分配に大きく影響する可能性があり、もしもそうであれば、技術官僚に丸投げするのはまちがっている。」

「民主的な説明責任を負っていない中央銀行は、ほぼまちがいなく、労働者よりも債券保有者や金融関係者の見解に気を配る」

「実のところ、マネタリズムは理論でも何でもなく、”経験上の規則性” ―貨幣供給量と取引量(流通速度とも呼ばれる)の比率がつねに一定となる―とやらを基盤としている」

「ユーロ圏の指導者たちは不誠実にも、構造改革が危機当事国の市民の暮らしを向上させると偽ってきた」



 

ジョセフ・E・スティグリッツ「ユーロから始まる世界経済の大崩壊」( 徳間書店2016.9.30)
はじめに ユーロという十字架に磔にされるヨーロッパ
第一部 危ういヨーロッパ
第一章 危ういユーロ
第二章 ユーロを構築した経済学の誤まり
第三章 ヨーロッパのお粗末な成果
第二部 誕生時からの欠陥品
第四章 単一通貨が機能する条件とは
第五章 不況を生み出す拡散型システム
第六章 不平等を拡大した欧州中央銀行
第三部 破滅を呼ぶ見当違いの政策
第七章 いかにしてトロイカ政策は、危機当事国を締めあげて、不況へ落し込んだか
第八章 失敗の上塗りをする構造改革
第四部 世界経済が前へ進む道
第九章 機能するユーロ圏の創設
第十章 円満な離婚は可能なのか
第十一章 “柔軟なユーロ”をつくる
第十二章 未来へ向けて



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