Dora_PaPa_san's_Pages

アクセスカウンタ

zoom RSS ロバート・B・ライシュ「最後の資本主義」

<<   作成日時 : 2018/01/22 15:39   >>

トラックバック 0 / コメント 0

ライシュ氏の、何が問題なのか、という主張は明快でわかりやすい。  大企業・富裕層は、ルールを自分たちに都合の良いように変えてきた。だから、格差は広がる一方だし、それは資本主義の将来としてもまったくよろしくない、もう一度資本主義を機能するものに取り戻さないといけない。 

ライシュは、資本主義の五つの決め事、所有権、独占、契約、破産、執行について、大企業がルールをいかに都合よく変えてきたかを説明している。 


「大企業のCEOや金融界のトップトレーダーやポートフォリオマネージャーは、インサイダー情報を使って自らの取り分を膨らませつつ、企業収益を増大することができるような市場ルールを推し進め、自分たちの報酬を自分たちで効率よく決めている」

製薬会社は廉価版の発売を遅らせるために、ジェネリック薬品メーカーにカネを払っている「遅延料契約」、 提訴することを禁じるサービス契約への同意を必ず求めるインターネットや、義務的仲裁条項があり、申し立てを禁止しているアメリカン・エキスプレスの契約書、労働組合との間で締結していた契約を反故にする的で倒産を繰り返した航空会社、学費ローンも主たる住居用家屋を担保とする住宅ローンも破産を許れない破産法を改正することを阻止した金融業界、法に抜け穴を仕込んだり、法の執行資金を潤沢に与えないよう動いて事実上法を無効にする業界・・・

大企業や富裕層は、ロビイ活動や回転ドアによって、好きなようにルールを変えられるのに対して、労働者のほうは、50年代に持っていた、組合による交渉力をほとんど失っている。 彼らは頭がよかったから時給30ドルを勝ち取ったのではない。彼らの交渉力がそうさせたのである。 

そのうえ、いまは、「自分の給与は自分の「価値」に応じて決まるという考え方があまりにも深く人々の意識にすりこまれていまったため、稼ぎの少ない人の多くが、そうなったのは自分のせいだと思い込んでいる」。 

「経済について広く受け入れられている暗黙の了解の一つに、個々人は自らの努力や能力の分だけ報酬をもらえるというのがある。 つまりこの世は能力主義というわけだ。 しかし少し考えてみれば、個人の収入を決定づけているのは、その人の能力以外の多くの要素であることがわかる」。

いいにくいことを平気でライシュ氏は言う。 「社会福祉、教育、看護、高齢者介護、幼児保育といった職業」に従事する、有能で献身的な人々が生み出す社会的な恩恵は、彼らに支払われている給与の額を大きく上回る」。  「一方で、CEOやヘッジファンド・マネジャー、投資銀行家、超高速取引のトレーダー、ロビイスト、大物顧問弁護士といった人たちが社会に対して生み出す価値は、彼らが市場から得る価値よりも小さいであろう」。 だって、価値を生み出すこともなく、人の金を右から左に動かしているだけなのだから。

「米国では五人の労働者のうち一人は非正規雇用だ。 派遣労働者、フリーランス、自営の請負業者、コンサルタントなどの数は増えており、これらの職業の収入や労働時間は、毎週あるいは毎日のように異なっている。 2014年時点で、アメリカ人の66%がカツカツの生活を送っている」。 これは「価値」の問題でなく、交渉力の問題なのだ。

格差は、世代を超えてゆく。  「家族信託の期間は最長90年であったが、レーガン政権下の法改正で多くの州がこれを無期限にした。このいわゆる「王族信託」によって、超富裕一族は相続資金や不動産をほとんど非課税で後継者にゆだねることができ、それも何世代わたって可能になった」。  そして、教育。 「OECD加盟国の大多数が、すべての生徒に平等に投資をするか、あるいは恵まれない生徒により多くの投資をおこなうか、いずれかを実施している。 米国は、それと正反対のやり方をしている数少ない国の一つだ」。

このまま、「再分配のほとんどが逆の方向、すなわち消費者や労働者や中小企業、小口投資家から、大企業や金融機関の重役、ウォール街のトレーダーやポートフォリオ・マネジャー、個人資産家へと向かっている」状態が続くならば、いつか、敗者はゲームをやめるに違いない。  反体制か体制支持かの対立となる。  


方策は、いくつかあげられている。 

グラス=スティーガル法の復活、その企業の平均的労働者の賃金に対するCEOの報酬の比率と連動させる法人税率、 株主が企業を「所有」しているというフィクション、企業の取締役には、自社の株式価値を最大化する信認義務があるという考え方のフィクションをフィクションと認めること、ベーシック・インカムの支給、ステークホルダー資本主義、ベネフィット・コーポレーション  ・・・・・・  しかし、現状の分析ほどには、迫力が感じられない。


日本でも、自由市場という言葉の好きな人々が少なくない。 ライシュ氏の言葉は真っ当だ。

「自由市場」という神話は、私たちがこれらのルール変更の実態を精査したり、そうしたルール変更が誰を有利にしたのか問いかけようとするのを妨害する。だからこの神話は、精査されることを望まない人々にとってはとても便利な存在だ。 ゲームのルールに対して不自然なまでに影響力を持っている者たちが、新しく制定され運用されるルールの恩恵を最も享受するわけで、彼らこそが「自由市場」の熱狂的な支持者であり、政府よりも市場に相対的な優位性があると熱烈に主張するのも当然である」

 





ロバート・B・ライシュ「最後の資本主義」(東洋経済新報社 ”SAVING CAPITALISM” 2016.12.15)
第1部 自由市場
第1章 支配的な見方
第2章 資本主義の五つの構成要素
第3章 自由と権力
第4章 新しい時代の所有権
第5章 新しい時代の独占の形
第6章 新しい時代の契約の形
第7章 新しい時代の倒産の形
第8章 執行のメカニズム
第9章 まとめ − 市場メカニズム全般
第2部 労働と価値
第10章 能力主義という神話
第11章 CEO報酬の隠れた仕組み
第12章 ウォール街の高額報酬のカラクリ
第13章 弱まる中間層の交渉力
第14章 ワーキング・プアの台頭
第15章 働かないお金持ちの台頭
第3部 拮抗勢力
第16章 ここまでのまとめ
第17章 資本主義に対する脅威
第18章 拮抗力の衰退
第19章 拮抗力を取り戻せ
第20章 下位層から上位層への「事前配分」に終止符を打つ
第21章 企業を改革する
第22章 ロボットが取って代わるとき
第23章 市民の遺産
第24章 新しいルール









テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ロバート・B・ライシュ「最後の資本主義」 Dora_PaPa_san's_Pages/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる