宮口幸治「ケーキの切れない非行少年たち」

売れているそうだ。おそらくタイトルに惹かれて求めたり、電車内の広告に興味を感じるのだろう。私もそのくちだが、タイトルから受ける印象よりもはるかに専門的な内容だ。筆者は知的障害があまり世に知られていないことを懸念して分かりやすく紹介したつもりだろうが、もともと興味のなかった人には、関心を持って最後まで読み続けることはむずかしい。そういう意…
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映画「RBG 最強の85才」および 映画「ビリーブ 未来への大逆転」

若い女性たちから、「RBG」と略称で慕われる、ルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事、85歳の生い立ちから最高裁判事に指名され、現在にいたるまでのドキュメンタリー(「RBG 最強の85才」)と、ルースが性差別に対して闘う最初の裁判に至る若き日を描く伝記劇映画(「ビリーブ 未来への大逆転」)。 どちらも、たいへん感動的な映画である。私は…
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堀有伸「日本的ナルシシズムの罪」

堀有伸氏は、南相馬市でクリニックを営む精神科医。 従って、精神医療に携わる、その実例をもとに「病」を語る。しかしながら、堀氏の語る「病」は、けっして個人の精神的「病」ではない。日本人および日本社会が抱え続けてきた「病」のことだ。それを堀氏は、「日本的ナルシシズム」と名づけている。 精神科医である筆者を訪れる人のなかに、職場など属す…
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オリバー・ラッゼスバーガー他「データ駆動型企業」

“THE SENTIENT ENTERPRISE" が原題でもあり、また、筆者たちが提唱するモデルでもある。 感覚がある有機体、センティエント・オルガニズムという言葉が、筆者たちに気に入られたようだ。訳者は「センティエント・エンタープライズ」を「自律的データ駆動型企業」と意訳している。私には、その意味はあまりよくわからない。 IT…
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嵐山光三郎編「文人 御馳走帖」

なかなかユニークな文庫本だ。嵐山氏が選んだ多くの「食」に関わる短編、エッセイなどを集めたもの。  まだ煮えてないと騙して少女の手を出した肉を掠め取る男・・・などの話(森鴎外「牛飼」)、、 滅菌を施していない牛乳は注意が必要だ・・・などというエッセイ(森鴎外「服乳の注意」)、文字通り闇鍋を囲む虚子や川東碧悟道・・・の姿(正岡子規…
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中山七里「死にゆく者の祈り」

高輪顕真は教誨師として、死刑囚のさいごを見届ける役割もある。通り一遍の説教では、最後の場面を迎える死刑囚の役には立たない無力感を感じてはいる。しかし、自ら志願した仕事でもある。そんなある日、千敗教誨師の代役で行った集合教誨、内容は散々だったが、正面に座っていた死刑囚に見覚えがあった ・・・・ 真宗に帰依し、教誨師迄買って出た坊…
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夏石蕃矢編「山頭火俳句集」

種田山頭火は、1882(明治15)年12月3日、山口県に生まれ、1940(昭和15)年10月10日、58歳で亡くなった。 早稲田大学を神経衰弱で退学したあと故郷で父の酒造業を手伝い、妻子をもち、29歳で山頭火の名で文芸雑誌に参加、その後終生の師、荻原井泉水に師事、自由律俳句にうちこむ。酒造経営が破産し、熊本に移住して古書店経営、上京して…
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末木文美士「日本思想史」

「日本思想史」の確立はなかなかむずかしそうだ。ともすれば、「日本思想」史に偏し、イデオロギー的な懸念がうまれやすい。それを意識しすぎると普通の歴史書になってしまう。私が知りたいのは、日本「思想史」だが、確かに西洋思想史と比べて系統立ててゆくのが難しいのかもしれない。 末木氏は、日本思想史の確立を早くから力を入れておられるようだ。私…
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映画「希望の灯り」

映画とは不思議なものだ。マーヴェルの映画とは真逆の世界、これといったストーリーも、事件も戦いもない。ヒーローもヒロインもいない、口数の少ない、どこにでもいる青年と中年の孤独なおじさん、おばさんたちだけ。そして、宇宙でも都会でもなく、巨大なスーパーマーケットの通路でささやかな希望を見いだそうとする人々の物語。 原作は、クレメンス・マ…
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映画「THE GUILTY/ギルティ」斬新な手法、最高のサスペンス、余韻或る結末

デンマークの映画という珍しさだが、この映画の作り方はデンマークという理由ではない、クリエイターの斬新さだ。あまり詳しく書くとネタバレになってしまい、この映画の楽しみ方としてはよくない。 簡単な紹介としておく。 アスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)は、警察官で、緊急通報指令室のおべーレーターとして、通報の電話を受けている。アス…
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映画「ウトヤ島、7月22日」

2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で起きた無差別乱射テロで逃げ惑う人々のドキュメンタリー的な映画。犯人の姿は見えない。聞こえるのは銃声と逃げる人々の叫びだけ。何が起こっているのかわからない、射撃を続けているのが、どこで何人がやっているのかもわからない、ただひたすら逃げるだけ、そういう怖い映画だ。生存者の証言に基づいた作ったフィク…
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原田マハ「常設展示室」

私は美術のことは皆目わからない。絵を見て感動するとか、なにかを感じるということが、皆無ではないけれど、めったにない。必然的に絵に興味はもたない。それでも、原田マハの美術にまつわる小説は、たいへん好きなのだ。自分では感じないが、絵に何かを感じたり、何か心を紡ぐ人の気持ちは理解できる。特に原田マハの短編小説は、家族の想いがしみわたっていて、…
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下重暁子「極上の孤独」

下重氏は孤独をたいへん好まれるようだ。子どもの頃からの話題や一生に一度の恋愛、そして、仕事の話・・・「孤独」の話というよりは、下重氏自身の話だ。 確かに、つまらない話題で集まって群れるよりは、ひとりでいるほうが楽しいし、気が楽だ。 ただ、下重氏は、孤独が好きであっても、常日頃、そんなに孤独感は味わっていなのではないだろうか。つれあ…
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大沼保昭「「歴史認識」とは何か」

「歴史認識」という言葉は、いまでは、1910年代から1945年終戦までの歴史をどう見るかという、特別な意味を持った言葉になっている。大沼氏と聞き手の江川氏は、幾つかの論点に絞って、その歴史のおさらいと、それぞれの立場の人々の認識のあり様を記している。研究者だけあって大沼氏の視点は、バランスに富み、決して偏った極端なものにならない。それが…
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上西充子「呪いの言葉の解き方」

「呪いの言葉」とは、「相手の思考の枠組みを縛り、相手を心理的な葛藤のなかに押し込め、問題のある状況に閉じ込めておくために、悪意をもって発せられる言葉だ」と、筆者は説明している。この説明は感覚的にわかりにくい。 私なりに補足すれば、説得しやすく反論しにくいが実は偏った言葉を投げかけて封じるものだ。  筆者が例示した「呪いの言葉」には…
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映画「ナチス第三の男」

ローラン・ビネの原作「HHhH」はなかなかの感動ものだったと記憶している、細部は忘れてしまったが。 そのベストセラー「HHhH」を脚色た映画である。だから、ハイドリヒがナチスの幹部になるまでの経緯にも詳しく、ハイドリヒ暗殺部隊の動きにも詳しい。 ラインハルト(ジェイソン・クラーク)は、優秀だが、酒と女にだらしない。海軍提督の友人の…
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メイ・サートン「74歳の日記」

メイ・サートンは1912年ベルギーに生まれ、4歳の時に父母と共に米国に亡命、成人して英語教師、劇団主宰などを経て、詩人、作家、エッセイストとして活動、多くのファンを得たが、1995年に亡くなった。鹿が庭に出るような自然豊かなメイン州に独居し、体調と相談しながら著述、朗読、講演活動などを精力的に行っている。 73歳の二月末に軽い脳梗…
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映画「バイス」、すごい映画

これは文句なくすごい映画だ。好きな映画でも楽しい映画でもなく、すごい映画だ。 まず、キャスティングがすごい。これだけ芸達者なメンツをそろえて共演させているなんて。 次いで、それがみな実在の人物で、大物政治家とその関係者で、実際の物語と銘打っているのだから、その大胆さがすごい。 そして、映画の編集、構成がユニークかつ古典的なのに斬新ですご…
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岡和田晃「反ヘイト・反新自由主義の批評精神」

何の偶然か、岡和田氏という、いまどき稀有な批評家を見つけた。まだ、こんな人がいたのかと、それは大変な驚きであり、60年代、70年代に一気に引き戻された気分だ。だが、哀しいかな、私の読解力、忍耐力は、あの当時の一割にも満たない。つまり、読み続けられないのだ。残念ながら半分も行かずにギブアップ。  そのなかで、いつか手に取って…
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映画「アリータ:バトル・エンジェル」共演陣の豪華さにびっくり

クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリという、そうそうたる顔ぶれが共演するって、なんなんだろう、こんな漫画みたいなSFファンタジーに。 イド(クリストフ・ヴァルツ)がゴミ捨て場で拾ってきたロボットのような頭部と部品を、自ら修繕して、サイボーグの少女を再生させて、アリータと名づけた。元妻らしきチレン(ジ…
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加藤陽子「天皇と軍隊の近代史」

「総論 天皇と軍隊から考える近代史」を読めば、筆者のイシューのおおよそはわかる。 第1章からの本文は、その論題を詳細に展開したもので、ある意味、かなり専門的、学術的であるから、理解しにくいところも多い。いずれにしても、汲めども尽きぬ興味の湧いてくる領域であることはまちがいない。 筆者の主要な関心は、「政治主体としての軍、特に陸軍」…
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ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

ブレイディみかこ氏は、私がかなり信頼している書き手の一人である。彼女の書き物からは、必ず何がしらの示唆や知恵を授かる。イギリスはブライトンの、まるでケン・ローチの映画を見ているかのようなリアルな格差社会の姿を知ることができる。今回は、息子が公立校の中では再上位ランクのカソリック小学校から、真逆の地元の公立問題中学に入学、多様性と格差に直…
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斎藤成也他「大論争 日本人の起源」

なかなか魅力的なタイトルに引き込まれるが、だからといって日本人の起源が明らかになるわけでもない。 最終章にフェイクと定評ある「竹内文書」があるくらいだから、常識にとらわれない「論争」を意図したのだろう。しかし、私のような無知な素人にとっては、もともと常識に欠けているので何が論点なのかもよくわからないのが正直なところだ。 それでも、…
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中原昌也他「映画のディストピア」

私のイメージするディストピア映画は、どれも似通っている。一握りの富裕層があらゆる権力を握っていて、圧倒的多数の貧民が、荒んだ狭い地区にひしめきあって貧しい暮らしをして、暴力的に管理されて働かされる。酷い場合には、彼らは殆どゾンビになっている・・・・その環境に疑問をもって戦いを挑むヒーロー、ヒロインが現れる・・・といったものだ。 し…
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映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

この映画の面白いところは、辻一弘氏(現カズ・ヒロ氏)のメイクアッブで変身したゲイリー・オールドマンの演技もさることながら、ウィンストン・チャーチルがいかに当時のイギリスで偶然生まれた首相であって、英国が徹底抗戦に傾いたのは、ぎりぎりの選択だったという事実だ。 政敵から見れば、ウィンストン・チャーチルは、口先だけでごまかす、勇ましい…
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映画「マイ・サンシャイン」

邦題を「マイ・サンシャイン」と名づけたのはどうしてなのだろうか。両親と暮らせない子どもたちを引き取って面倒見ている女性ミリー(ハル・ベリー)とその隣人オビー(ダニエル・クレイグ)の妙な男の人生に陽のあたる祝福でもしたかったのだろうか。原題は「KINGS」、これはあきらかに、ロドニー・キングとともにあると言いたいのだと思う。だから、たぶん…
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米澤穂信「Iの悲劇」

「Iの悲劇」の「I」とは、「アイ、ロボット」の「I」ではなく、何かのイニシャルでもない。いわゆる、I-ターンの「I」だった。 住民が誰もいなくなったある村に移住を呼び掛けて村を再生させようとする、Iターン・プロジェクトにまつわる悲喜劇を語っている。 移住者に起こるトラブル、事件を、ミステリータッチで謎解きをしてゆく。まあ、エンターテイ…
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湯川聡「よくわかる最先端白内障治療」

この手の実用書はあまり記録することはないのだが、よくまとまった分かりやすい本なので記録しておく。 私も眼科の医師と白内障・緑内障の手術を同時にするかどうか相談している。白内障の手術自体は比較的簡単に考えているが、それでもレンズの選択、事後のケアなど、考慮することは少なくない・ ・・・レーザーによる白内障手術の進め方 1. …
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映画「バハールの涙」

女性戦場ジャーナリストのマチルド(エマニュエル・ベルコ)は、同業の夫を地雷で失くし、娘を置いて戦場を駆け巡っている。娘との電話だけが生きがいでもある。そんなマチルドが、ISとの戦闘に果敢に挑む女性だけの部隊と出会った。隊長のバハール(ゴルシフテ・ファラハニ)は、クルド人弁護士で夫と息子との幸せな日々が、ISの来襲で一瞬で吹き飛び、夫は射…
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ブロニー・ウェア「死ぬ瞬間の5つの後悔」

「死ぬ瞬間の5つの後悔」というタイトルだけでは、想像つかない側面がある。それは、筆者ブロニーの半生記でもあるという面だ。 「5つの後悔」は、ブロニーが介護の仕事をして看取った人々の思いなどを挙げているが、それ自体は必ずしも目新しいものではない。 この本の特色は、ブロニーの並外れたポジティブな人生観、しかも不遇や孤独や鬱のときも経験したう…
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