角田房子「閔妃暗殺」

日本人は全ての人が読むべき本だとおもう。韓国の人ならだれでも知っている事件だが、日本では教科書にもほとんど載らず知っている人が少ない。解説の大江氏の説明がもっとも的確だ。「本書が取り上げた閔妃暗殺事件は、日本の国家を代表する朝鮮駐在公使の三浦梧楼が首謀者となり、日本の軍隊・警察、暴徒としか言いようがない民間日本人たちを朝鮮の王宮に乱入さ…
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小川糸「ライオンのおやつ」

とてもいいはなしだ。 敵に襲われる心配がない百獣の王だから、安心して、食べたり、寝たりできる、そんな「ライオン」という名の瀬戸内の島にあるホスピス。 雫は、養父にも知らせず、ひとりで入居した。30数年、短い人生だったようにも思うし、それなりによかったのかもしれないが、とにかく痛いのや苦しいのはいやなのだ。 雫と、ホスピスを運営する…
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映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

監督のグレタ・ガーウィグは、「「レディ・バード」の監督」という形容詞がつくことが多いが、私には、「「フランシス・ハ」の脚本・俳優」というイメージがより強い。もちろん、「レディ・バード」は大好きな映画の一つではあるが、「フランシス・ハ」にはかなわない。しかし、さすが、グレタ・ガーウィグである。ともすれば退屈な「若草物語」が、みごとにダイナ…
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ユヴァル・ノア・ハラリ「21Lessons」

ユヴァル・ノア・ハラリ氏が繰り広げる21分野のレッスンは、なかなか読み応えがある。 現在の課題は、ファシズム、共産主義、自由主義という3つの物語が一つずつ欠けてきて何もなくなったことや、テクノロジー、特にAIは、それによって雇用が失われるだけでなく、アルゴリズムが「国民に対する絶対的な支配力を獲得」し、個人個人を本人以上に知っていて個人…
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映画「スウィング・キッズ」

朝鮮戦争さなかの、暗い、しかし、なぜか明るい、でもやっぱり暗い収容所の物語。 1951年の朝鮮、釜山に近い巨済(コジェ)捕虜収容所で集められた北の捕虜たちに対する、共産主義に対する資本主義、自由主義の優位性を示さんとしていた新任の所長は、たまたま、日本の嫁のところに早く戻りたいと不満を募らせている黒人のジャクソン(ジャレッド・グライムズ…
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ルシア・べルリン「掃除婦のための手引書」

なぜかわからないが、すんなり読めない。読みにくい。引っかかるようでもあり、字面を負うだけで中身が頭に入らない。読み手に原因があるのは間違いないが、それだけでもなさそうだ。短編の密度が濃すぎて、私のようなうっかりした読み手では、言葉を素通りさせてしまうからだろう。「<不必要な言葉は一つとして書かれていない>。 客観性、共感、ち…
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映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

あのサブプライム・ローンの破綻という、世界経済の大事件にさいして、事前にその問題をみな機、破綻を予見し、さらに賢く、粘り強く耐え抜いて巨万の富を手にした金融人がいた。 彼らの足跡をドキュメンタリータッチで、一風変わった映画に仕立てあげた。 そのアウトサイダーと変人たちは、まずベア系のファンドを預かる変人ファンド・マネジャーのマイケ…
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映画「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」

私は寅さん映画は好きだけれど、寅さんは映画館で見ると面白いが家で観ても面白くない。同様にウディ・アレンの映画も、映画館では楽しいのに家で見ると白けっぱなしだ。 たぶん、どちらも、非日常の場で観るときに限って日常的な話が輝きを持つのだろう。 だから、昨年、待ち望んでいた当映画が上映されたとき、コロナ禍で観られなかったのが返す返すも残…
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篠原かをり・麻生羽呂「サバイブ」

「強くなければ生き残れない」、そして、強いとはどういうことかについて、15種類の属性を挙げ、それぞれの代表的な動物を漫画と解説で示している。博物学的な面白さ、意外さ、そんな動物初めて知ったという楽しさはある。 <01 負けない Power ・・・ T-Rex、シャチ など <02 あきらめない Never Giv…
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スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ「戦争は女の顔をしていない」

ひとこと。この本は全ての人が読むことをお薦めできる。スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏の本はまだ二冊目だが、いつでも読みたい本リストの上の方にある。ただ、彼女の本を読むにはそれなりのエネルギーが必要なのだ。この本は素晴らしい本だが、いろんな激しい感情を掻き立てられる。ドイツの侵攻であっというまに占領されたウクライナやベラルーシをはじめ…
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島田裕己「捨てられる宗教」

題名に惹かれて手にしたが、副題を見落としていた。副題は「葬式・墓・戒名を捨てた日本人の末路」とあって、つまり、死、葬式といった、ごく限定した内容における宗教のはなしだった。そこは私はあまり興味ないが、そこに興味ある人には、読みやすい本だ。 筆者は、「死生観Aは、いつまで生きられるかわからない社会での考えかたであり、生き方である。で…
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原田マハ「<あの絵>のまえで」

原田マハ氏の、珠玉の短編集。うまくいかない就活、職場での孤立、夢に向かっての歩みの失敗、早すぎる息子の死・・・などなど、哀しいことの続く日々が、一枚の絵を前にして、新たな人生のきっかけを掴んでゆく・・・ 一枚の絵は、それぞれ、ゴッホの「ドービニーの庭」(広島美術館)、ピカソの「鳥籠」(倉敷大原美術館)、セザンヌ「砂糖壺、梨とテーブ…
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安宅和人「シン・ニホン AIxデータ時代における日本の再生と人材育成」

「シン・ニホン」の「シン」は「シン・ゴジラ」同様、意図した意味はなさそうだ。語感、イメージだろうか。多くは、たいへん真っ当な正論を語っているが、読み進めるに従って徐々に疑問もわいてくる。イメージはいいのだが、何か忘れているような気がしてくる。430ページもの分厚い本だが、すいすい読める。文章が平易なのと、グラフや絵が豊富なのと、サービス…
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韓国時代劇「六龍が飛ぶ」|BS-TBS

韓国の時代劇ドラマのなかには、李氏朝鮮や高麗の朝廷に渦巻く権謀術数などを描く暗いドラマが少なくない。そのてのドラマは好きではなく見ない。しかし、時代の変動をそれなりに描くものは歴史の興味で観ることがある。もちろん、登場人物の描き方は実際とはかなり違うだろうし、実在しない人物がたくさん出てくる。高句麗建国「朱蒙」、伽耶建国「鉄の王キムスロ…
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劉慈欣「三体Ⅱ 黒暗森林[下]」

三体、三体Ⅱ上、と続いて物理的には三冊目の三体Ⅱ下、内容的には、三体、黒暗森林の二巻目、だんだん面白さが増してくる。地球文明と三体文明との隔絶した技術の差、陽子智子(ソフォン)による監視と科学技術発展の妨害、心の奥は監視の対象にならないところから編み出された面壁者(ウォールフェイサー)のユニークさと期待、その期待があえなく潰れていく悲哀…
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レベッカ・ソルニット「説教したがる男たち」

なぜ男は女に、説教したがるのか。 "Men Explain Things to Me" 「男たちは私に説明/説教したがる。そう、いまでも。そしてどの男も、私が知っていて向こうが知らない事柄について的外れな御説をぶっても、謝罪してくれたことはなかった」。その典型例がこんなエピソードだ。男が女に、彼女が著者だとも知らずに、偉そうに本を紹介し…
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在日韓人歴史資料館編「東アジアのなかの二・八独立宣言」

二・八独立宣言、三・一独立運動の100周年を記念して、2019年2月2日に、在日韓人歴史資料館において開催されたシンポジウム「東アジアにおける二・八独立宣言の意義」の発表と討議にもとづいて発行されている。主催者の狙いがもしあるとれば、二・八独立宣言が三・一独立運動に直接繋がっただけでなく、五・四運動や台湾の独立運動にまで影響を及ぼしたと…
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イーユン・リー「黄金の少年、エメラルドの少女」

私のイーユン・リー体験は、この本で4冊目になる。妙に性に合う感覚がある。気の利いた短編は物語としても面白いが、物語の内容よりも登場人物の個性がそれぞれ際立っていて、印象に残る人が多い。人との交流を拒否してきた末言(モーヤン)、男との結婚が不適切なのに慕う女性の息子との結婚を考える思余(シーユー)、死別した愛妻の願い通り女と次々会いながら…
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中野剛志「日本思想史新論」

会沢正志斎と言えば、私のわずかな知識によれば水戸の排外主義的な尊王攘夷論者で、吉田松陰らのテロリストを生み出した元凶という理解だった。私の理解が一般的な理解とどの程度一致するか知らないが、中野剛志氏は、私のそんな理解を真っ向から否定している。会沢正志斎、そして彼の水戸学は、それほど排外的でもないプラグマティズムであると。そして、彼とは正…
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村山早紀「桜風堂ものがたり」

読み始めて、この雰囲気、読んだことあるなあと懐かしくなる。「百貨の魔法」だった。もっとも創作の順番はこちらの方が先のようだが、星野百貨店の六階のフロアーに銀河堂書店があり、その書店に働く書店員の物語だ。星野百貨店の物語同様、魅力的な普通の人びとがほんわかした空気を醸し出す、ファンタジックな物語だ。とはいえ、筆者があとがきで語っているよう…
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アライダ・アスマン「想起の文化  忘却から対話へ」

ホロコーストに対するドイツの「想起の文化」の成り立ち、それに対して世に存在する「不快感」の批判的分析などを経て、どういう過去との付き合い方があるかを探って行く。 第二次世界大戦が終わったあと、「ウインストン・チャーチルが、とりわけはっきりと、忘却する用意のあることを、1946年9月にチューリヒで行った演説で表明した」ように、「長い…
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アンナ・カヴァン「アサイラム・ピース」

なんとも不思議な短編集だ。 ある種の感情は強く掻き立てられるが、物語の内容は、薄いヴェールがかかったようにはっきりしない。つまりよく理解できないのだが、物語が醸し出す、不条理性、孤独感、絶望感、そういった感情は、静かで冷たい口調によって浸透していく。 理解できない物語は、不思議な独裁国家に不条理に拘束されて居たり、精神病院らしきクリニッ…
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洪華、菫軍「シャオミのすべて」

中国インターネット業界の三巨頭はBAT(Baidu 百度、Alibaba 阿里巴巴集団、Temcent謄訊)、たちはだかるBATに阻まれない道はただ一つ、迂回すること。その迂回する道を賢く進んでいる一社がシャオミだ。IoTの準備は同時にBATを迂回することでもある。 シャオミは、サムスン、アップル、ファーウェイについで、スマートフ…
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横山秀夫「ノースライト」

物静かな、柔らかな北からの光、ノースライト、そのノースライトを一番美しいと思う建築設計士、青瀬稔は、信濃追分に「あなた自身が住みたい家を建ててください」という奇妙な要求仕様で設計したY邸も、ノースライトを基調にした。そのY邸の施主吉野夫妻が失踪して、青瀬は施主の足取りを追い始める・・・ 「64」とかなり趣を変えて登場した横山氏…
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韓国ドラマ「キル・イット 巡り会うふたり」

テレビで放映している最近の韓国ドラマは16話完結が多い。 このドラマは全部録画し、各回のCMを全部削除し、それからのんびり見ていた。 オリジナルからどの位カットしているかわからないが、1話45分くらいになる。 主役は、割と好きな若手のナム・ギヨン。 ドラマの「ここに来た抱きしめて」、「マイ・ディア・ミスター」でも、不幸な子供時代を…
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ファン・ジョンウン「野蛮なアリスさん」

「誰であれ、この不幸な物語の最後のページまでついてきてくださったただ一人の人であるあなたに、どうぞこの物語が苦痛すぎないものでありますようにと、願います」と、日本の読者向けに作者が語る。確かに、不幸で、辛く、哀しい物語だ。同時に覚える怒りは、どこにも向けられずに内向する。 朝鮮戦争で多くの人びとが身ひとつで南に流れてきた。 ま…
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窪薗晴夫編「オノマトペの謎」

国語研究会とか言語学者の集まり、フォーラムの企画でまとめられた冊子である。つまり学術的なものだ。だから、決して難しい言葉で書かれたものではないけれど、関心の対象が一般人にはあまり関心を持てないようなこともある。それでも、つまり細部までは理解しなくとも、おおよそ、オノマトペについて知ることはできる。 オノマトペといわれるものは、実際…
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中田考・橋爪大三郎「クルアーンを読む カリフとキリスト」

中田氏はスンナ派のイスラム教徒らしいから、彼の語るイスラムは、中途半端な日本人研究者より、ほんとうのことが多いだろう。対談する橋爪氏は、これも信頼できる宗教社会学者だから、中田氏から、イスラムの真髄を引き出すに違いない、と期待して読んだ。 期待は裏切られなかったけれど、私のイスラムに関する知識が乏しすぎて、橋爪氏の問いについてゆけなかっ…
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加藤典洋「敗戦後論」

久しぶりに本格的な「評論」を読んだ。学生時代は、こんなのばかり読んでいたなあと懐かしむ。「敗戦後論」と「語り口の問題」の二編はなかなか読み応えのある、考えさせるいい評論だ。「戦後後論」は、太宰とサリンジャーの対比など興味深いけれども、乱暴に言えば、しょせん文学論で、いまのわたしには、どっちでもいいや、という感覚だ。 筆者はかなり初…
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カルメン・マリア・マチャド「彼女の体とその他の断片」

デビュー作品にして、ベストセラーになった、ひどく風変わりな話題の短編集だという。LGBTQなどというラベリングを不要とするほどにまったく気にしていない多様性とファンタジーに溢れた、正直言って、よく理解できない小説ばかりだ。たとえば、 作中に、夫と妻が登場しても、ふたりが男か女かよくわからない、いやどうも二人とも女らしいという自然な率直さ…
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