松田青子「おばちゃんたちのいるところ」
気楽なエッセイかと気楽に読み始めたら、なかなか、ひねりの効いた深―い趣もある短編小説集で、それぞれ落語の小話などモチーフにしている。
単独の話もあれば、妙に関連しあっていると思える話もある。ひょっとして全体がひとつの話に構成されているのかと訝しんだが、そうでもないようだ。
偶然にも同時並行して読んでいた「コースト」と似通った、死んだ人の話が多い。それも話の後半になって死んだ人じゃないかとわかる。
死んだ人々も会社つくって、生者のサポートをしている、なんて結構笑える話が、いくつかある。
題名とはかなり違う印象だが、なかなかのオススメ本だ。痛快でもあるし、幽霊話でも、いささかも湿った暗い話がない。結構つらい話が、カラリと笑い話のようにもなっている。そこがおばちゃんたるえんなのかもしれない。
松田青子「おばちゃんたちのいるところ」(中央公論新社 2016.12.10)
みがきをかける
牡丹柄の灯籠
ひなちゃん
悋気しい
おばちゃんたちのいるところ
愛してた
クズハの一生
彼女ができること
燃えているのは心
私のスーパーパワー
最後のお迎え
「チーム・更科」
休戦日
楽しそう
エノキの一生
菊枝の青春
下りない
みがきをかける(娘道成寺)
ミシェル・ウィリアムスの映画を見ながら、毛の力を強化せよというおばちゃんは、死んだおばちゃんだった。
牡丹柄の灯籠(牡丹灯籠)
失職して家にいると、二人のおばさんが営業しに来た。一人はとうとうとしゃべり続け、もうひとりはひたすらなよなよとしなだれかかる。気が付いたら牡丹柄の灯籠があった
ひなちゃん(骨つり)
繁美が川で初めての釣りをしていたら、白骨がかかった。 あくる日家に昔風の和服の女が現れ、昨日はありがとうございましたと令をいう。ひなという江戸時代の娘だった。
悋気しい(猫の忠信)
激しい嫉妬心などをもった人じゃないと、化けられない。 そう言って、子どものころから並外れて嫉妬深いあなたを勧誘に来たのは誰
おばちゃんたちのいるところ (反魂香)
母が自殺してしまった。母と不倫の愛人との子どもである茂は、母の墓に日参するほどに打ちのめされてしまった。子どもの頃、愛人が土産に持ってきた「かいじゅうたちのいるところ」を見ながら母が愛人を明るく遇するところを覚えている。茂はうちのめされて就活もできず、線香づくりのアルバイトは心が落ち着く。この会社は奇妙な変な会社だった。おばちゃんばかりいたが、男性は採用してくれた汀さんくらい。おばちゃんたちに癒やされているようだ。
愛してた (反魂香)
亡くなった父の部屋の仏壇にあげる線香がなかったので、そこにあった香を焚いた。 においの分からない私にはどんな香かもわからない。 ある日、仏壇から声が聞こえた。・・・
クズハの一生(天神山)
狐目の私はどこか引いたところのある女の子。 優秀な生徒なのに、女だからと自分でも思って大学に行かずにどうということ名手会社に就職し、どうということのない優しい会社員と結婚し、優しい息子を得て育てた。何の不満もなく幸せだった。私ならもっと簡単に仕事できるとおもったけれど特に仕事もしなかった。そんなとき、山に誘われた・・・
彼女ができること(子育て幽霊)
世間の彼らは女一人離婚して子どもを育てるために、子どもと過ごす時間のとれない女性を見ると、自分が悪いだとか、我慢が足りないからだとか、夜の仕事なんかしちゃってとか、子どもがかわいそうだとか、何も助けもしないのに悪く言うものだ。私は、そっと彼女の家にはいり、子どもの相手をして彼女を助けるのだ。それが今の仕事。子どもはすぐ気づいて一緒に遊ぶけれど親はなかなか気づかない・・・・
燃えているのは心(八百屋お七)
はやらない習字を習って好きだったものだから、八百屋お七の墓のある寺で朱印書きを含むアルバイトをしている。お七の墓にお参りに来る女性たちはどこかお七に似た人なのだろう。私は?
私のスーパーパワー(四谷怪談)
私のスーパーパワーは、人の気持ちがよくわかること。 なぜなら私はアトピーで、症状が良くなると人は近づいてきて、悪くなるとさぁーと人は引いてゆく、そういう人の心の動きにすっかり慣れて理解するようになったから。
最後のお迎え(座敷童)
虎ノ門のホテルの建て替えが迫った日、汀さんは、エントランスであるお婆さんと待ち合わせした。このホテルの最後の日、建て替えの期間中だけでも、自分の店に来てほしいからだ。そうお願いすると、快く引き受けてくれた。あの人たちは自分の力を低く評価しているのだ。・・・・
「チーム・更科」(紅葉狩)
更科さんをリーダーとする「チーム更科」は、仕事をしても、会社対抗バレーボールをしても、なにをやっても強く,早く、完璧にできる。
休戦日(忍夜恋曲者)
ガムちゃんと呼ばれるお化けカエルらしき動物と二人で、怪しい男どもから女性を守っている。クズハさんに魔法円の作り方を教えようと提案している。
楽しそう(三年目)
結婚してそう歴史を経ずに妻が死んで、夫は若いからすぐに再婚したけれど、それもいい。一度は会いに行ったけれど、私も楽しくやってるから夫も楽しくやってと・・・。
エノキの一生(乳房榎)
乳房榎の言伝えあるエノキのコブに、昔の母親たちは、母乳が出ることを祈り、乳飲み子の無事を祈ってきたが、エノキにしてみれば,いい迷惑だ。コブも乳房じゃないし、脂も乳じゃない。でも・・・。
菊枝の青春(皿屋敷)
姫路モノレールの橋脚が店に突き出ている雑貨屋を母から譲り受けて菊枝は店を営み始めた。お皿が一枚足りないと苦情を言ったので、メーカーの裕太が皿を持って訪ねてきた。感じのいい青年だ。
下りない(天守物語)
姫路城天守閣に住む富姫に汀さんから担当を引き継いだと茂は挨拶に行く。菊井戸のお菊さんは、とっくの昔に離れていたと初めて知る。 富姫も、別にここにいなくたっていいんだろうにと最近は元気がない・・・
単独の話もあれば、妙に関連しあっていると思える話もある。ひょっとして全体がひとつの話に構成されているのかと訝しんだが、そうでもないようだ。
偶然にも同時並行して読んでいた「コースト」と似通った、死んだ人の話が多い。それも話の後半になって死んだ人じゃないかとわかる。
死んだ人々も会社つくって、生者のサポートをしている、なんて結構笑える話が、いくつかある。
題名とはかなり違う印象だが、なかなかのオススメ本だ。痛快でもあるし、幽霊話でも、いささかも湿った暗い話がない。結構つらい話が、カラリと笑い話のようにもなっている。そこがおばちゃんたるえんなのかもしれない。
松田青子「おばちゃんたちのいるところ」(中央公論新社 2016.12.10)
みがきをかける
牡丹柄の灯籠
ひなちゃん
悋気しい
おばちゃんたちのいるところ
愛してた
クズハの一生
彼女ができること
燃えているのは心
私のスーパーパワー
最後のお迎え
「チーム・更科」
休戦日
楽しそう
エノキの一生
菊枝の青春
下りない
みがきをかける(娘道成寺)
ミシェル・ウィリアムスの映画を見ながら、毛の力を強化せよというおばちゃんは、死んだおばちゃんだった。
牡丹柄の灯籠(牡丹灯籠)
失職して家にいると、二人のおばさんが営業しに来た。一人はとうとうとしゃべり続け、もうひとりはひたすらなよなよとしなだれかかる。気が付いたら牡丹柄の灯籠があった
ひなちゃん(骨つり)
繁美が川で初めての釣りをしていたら、白骨がかかった。 あくる日家に昔風の和服の女が現れ、昨日はありがとうございましたと令をいう。ひなという江戸時代の娘だった。
悋気しい(猫の忠信)
激しい嫉妬心などをもった人じゃないと、化けられない。 そう言って、子どものころから並外れて嫉妬深いあなたを勧誘に来たのは誰
おばちゃんたちのいるところ (反魂香)
母が自殺してしまった。母と不倫の愛人との子どもである茂は、母の墓に日参するほどに打ちのめされてしまった。子どもの頃、愛人が土産に持ってきた「かいじゅうたちのいるところ」を見ながら母が愛人を明るく遇するところを覚えている。茂はうちのめされて就活もできず、線香づくりのアルバイトは心が落ち着く。この会社は奇妙な変な会社だった。おばちゃんばかりいたが、男性は採用してくれた汀さんくらい。おばちゃんたちに癒やされているようだ。
愛してた (反魂香)
亡くなった父の部屋の仏壇にあげる線香がなかったので、そこにあった香を焚いた。 においの分からない私にはどんな香かもわからない。 ある日、仏壇から声が聞こえた。・・・
クズハの一生(天神山)
狐目の私はどこか引いたところのある女の子。 優秀な生徒なのに、女だからと自分でも思って大学に行かずにどうということ名手会社に就職し、どうということのない優しい会社員と結婚し、優しい息子を得て育てた。何の不満もなく幸せだった。私ならもっと簡単に仕事できるとおもったけれど特に仕事もしなかった。そんなとき、山に誘われた・・・
彼女ができること(子育て幽霊)
世間の彼らは女一人離婚して子どもを育てるために、子どもと過ごす時間のとれない女性を見ると、自分が悪いだとか、我慢が足りないからだとか、夜の仕事なんかしちゃってとか、子どもがかわいそうだとか、何も助けもしないのに悪く言うものだ。私は、そっと彼女の家にはいり、子どもの相手をして彼女を助けるのだ。それが今の仕事。子どもはすぐ気づいて一緒に遊ぶけれど親はなかなか気づかない・・・・
燃えているのは心(八百屋お七)
はやらない習字を習って好きだったものだから、八百屋お七の墓のある寺で朱印書きを含むアルバイトをしている。お七の墓にお参りに来る女性たちはどこかお七に似た人なのだろう。私は?
私のスーパーパワー(四谷怪談)
私のスーパーパワーは、人の気持ちがよくわかること。 なぜなら私はアトピーで、症状が良くなると人は近づいてきて、悪くなるとさぁーと人は引いてゆく、そういう人の心の動きにすっかり慣れて理解するようになったから。
最後のお迎え(座敷童)
虎ノ門のホテルの建て替えが迫った日、汀さんは、エントランスであるお婆さんと待ち合わせした。このホテルの最後の日、建て替えの期間中だけでも、自分の店に来てほしいからだ。そうお願いすると、快く引き受けてくれた。あの人たちは自分の力を低く評価しているのだ。・・・・
「チーム・更科」(紅葉狩)
更科さんをリーダーとする「チーム更科」は、仕事をしても、会社対抗バレーボールをしても、なにをやっても強く,早く、完璧にできる。
休戦日(忍夜恋曲者)
ガムちゃんと呼ばれるお化けカエルらしき動物と二人で、怪しい男どもから女性を守っている。クズハさんに魔法円の作り方を教えようと提案している。
楽しそう(三年目)
結婚してそう歴史を経ずに妻が死んで、夫は若いからすぐに再婚したけれど、それもいい。一度は会いに行ったけれど、私も楽しくやってるから夫も楽しくやってと・・・。
エノキの一生(乳房榎)
乳房榎の言伝えあるエノキのコブに、昔の母親たちは、母乳が出ることを祈り、乳飲み子の無事を祈ってきたが、エノキにしてみれば,いい迷惑だ。コブも乳房じゃないし、脂も乳じゃない。でも・・・。
菊枝の青春(皿屋敷)
姫路モノレールの橋脚が店に突き出ている雑貨屋を母から譲り受けて菊枝は店を営み始めた。お皿が一枚足りないと苦情を言ったので、メーカーの裕太が皿を持って訪ねてきた。感じのいい青年だ。
下りない(天守物語)
姫路城天守閣に住む富姫に汀さんから担当を引き継いだと茂は挨拶に行く。菊井戸のお菊さんは、とっくの昔に離れていたと初めて知る。 富姫も、別にここにいなくたっていいんだろうにと最近は元気がない・・・
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