Dora_PaPa_san's_Pages

アクセスカウンタ

zoom RSS 及川智早「日本神話はいかに描かれてきたか」

<<   作成日時 : 2018/04/07 17:35   >>

トラックバック 0 / コメント 0

「日本神話はいかに描かれてきたか」というテーマだから、神話そのものの解説でもなく、神話の政治的な利用を中心に解説するものでもない。  近代、神話がどのように描かれたかを、豊富な図像で解説するが、深く掘り下げるほどの情報に欠けるのは確かだ。

なかなか衝撃的・直接的だったのは、「三韓征伐」の神功皇后。 

神功皇后は、第14代仲哀天皇の妻、第15代応神天皇の母だが、韓国併合に関する条約の載る官報の写真に、神功皇后の写真を載せた絵葉書がある。「韓国併合が古代における朝鮮半島征服の繰り返し、再現であるというメッセージなのだ」。  

中世の「八幡愚童訓」では、神功皇后の征伐では、被征服者を犬扱いするという差別的観点が付加されていたが、江戸期の「大日本史」は、「外国の国王をこのように辱めることは認められない」と附会のものとして退けていた。 にもかかわらず、近代に入って「韓国併合へと連なる朝鮮蔑視の流れ」る。


そして神武天皇

「天皇家では天智系の天皇・皇后だけを祖先として、仏教形式で供養してきた」。 徳川光圀が、「世人神祖天照大神を拝するを知りて先王の山稜を敬するを知らず」と語るように、初代天皇である神武は忘れられた存在であった。 

明治になって、文明化と、軍を統括する戦う天皇のイメージを生み出すために、はじめから「みづら」を結った姿で形象化されたわけではなかった神武天皇の図像は、「みづら」を結った姿となる。  「古事記」「日本書紀」の物語において、「みづら」というモティーフが登場するのは、いずれも「戦いの物語」であるからだ」


そのほかの神々の神話の描き方は、ちょっとわかりづらく、インパクトに欠ける。

「そもそも、日本の伝統的な婚礼式は神々とは無縁であり、盃を交わす三々九度等、ただの家同士の契約儀式にすぎなかった。 現代の主流となっている神前結婚式は、実は大正天皇の婚礼から流行した新しいタイプのものなのである」。 結婚式の神として、さすがにアマテラスに頼るわけにもいかず、「古事記」「日本書紀」において国生み、神生みをなす神であり、「みとのまぐはひ」をはじめて記述される神であったイザナキ・イザナミ神とセキレイをもちだしたのだろう。




サルタヒコについての言及で、そもそも正統でない神々はどうあつかわれたのかという議論がある。

「本来の神々は、威力のある存在態の「カミ」であり、それは目には見えない、個別的な名称も持たない霊的な力の発現であったろう。それらを後世、名称を附して区別していったが、やはり、カミというものは目に見えない存在、描きようのない存在としてあった」

 「やがて中国からの仏教伝来とともに、仏という異国の神を象った仏像が流入してきたとき、それを模倣するかたちで、神像も例外的に作成されていったのであろうが、結局大きな流れとはならなかった」

 そのような状況において、サルタヒコ神が文章というかたちであれ、記紀の中にその肉体的特徴が示されているのは、天皇とそれに連なる朝廷の正統な神々とは異なる存在、ヤマタノヲロチのような魔に近い怪物的なそんざいとして、他の正統な神々とはレベルの違う取り扱いがなされている

「明治期の神仏分離令により廃仏希釈の標的にされたのは仏教だけではない。 天皇の国土統治の由来とその正統性を記す「古事記」「日本書紀」や延喜式神名帳などに載録された神々以外は、修験道等民衆信仰の神々をも認めないというものであった」。 それらの神々のかわりに「古事記」「日本書紀」に登場するという公のお墨付きを持つサルタヒコ神が、道祖神的性格のうちに性神的側面が観じられることにより、祭神とされることもあったのだろう」


そして、大事なことは次の三つのフレーズでいい尽される。

古事記の「序文は、古代の神話伝承を天皇にとって都合のよいものに改変することを、そして天皇の国土統治の由来とその正統性を主題として語ることを、高らかに宣言しているともいえるのだ」

「権力の座に天皇が返り咲き、己を神格化したことから、「古事記」「日本書紀」は、それを客観的、科学的に研究することが禁じられた時期であった。厳密な文献批判によって、記紀を史実ではなく皇室の由来を説くために作られた「物語」であるとした津田左右吉は、昭和15年に著作が発禁になり、同17年には禁固刑を宣告された」

「近代に入り、天皇を頂点とする体制が確立したことによって、記紀が成立した古代と同様の受容のされ方に変化した。天皇の支配の正統性を示すという本来の目的に沿った受容へと向かった」






及川智早「日本神話はいかに描かれてきたか」(新潮選書2017.10.25)
はじめに
第一章 結婚式の神となったイザナギとイザナミ
第二章 ヤマタノヲロチ退治の演出法
第三章 「ワニ」とはなにをさすのか
第四章 サルタヒコとアメノウズメは夫婦神か
第五章 つくられた神武天皇
第六章 戦う英雄、神功皇后
終章 そして漂泊の現代へ








テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
及川智早「日本神話はいかに描かれてきたか」 Dora_PaPa_san's_Pages/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる