水野直樹・藤永壮・駒込武編「日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する」

日本の植民地支配を肯定・賛美する「論」に対して、それぞれの専門家が検証・反論している。日本会議に属する人々とは限らないが、肯定・賛美論者の論は、結構大雑把で、トリックに見える。それに対するカウンターは、岩波ブックレットらしく上品で、あまり強いカウンターになっていないように感じる。もっと、徹底して叩きつぶしてほしいのだが、ページ数の制約もあるのか、なんとなく曖昧模糊とした回答だから、あらためて引用解説するものがほとんどない。

それでも、興味を惹いたポイントをいくつか挙げておく。

・ 韓国併合はやむを得ない選択・・・日露戦争前夜において、日本が朝鮮を取らなければ、ロシアに取られるという状況は存在しなかった

・ 韓国併合は合法・・・第二次日韓協約は伊藤博文が脅迫しながら締結させたとして朝鮮は国際上無効と主張するが、ただし個人の脅迫があったなら無効だが、国家への脅迫の結果なら無効とは言えないらしい。そこは明確でないという。また、略式契約だから無効という説も確実ではない。不法と断定できなくとも、朝鮮民族の相違に反して強行されたのは明白であるから不当だとは言える。この程度のカウンターでは私としては不満だが、そんなものなのか。法律上の合法という論でなく何かほしい。

・ 政治的・社会的平等を実現・・・戸籍分け、戸籍移動は認めなかったから、支配・被支配を区別・差別できた。つまり不平等だ。

・ 近代的教育の普及・・・義務教育は結局実施されなかった。また1930年の普通学校のの就学率は約16%で普及にも消極的。同化が目的だった

・ 近代的な医療・衛生の発展に寄与・・・病院や医師は確かに増えたが、外来患者の利用率は日本人は朝鮮人の20倍以上で、植民者たる日本人の健康や利害関係を重視した施策だと。

・ 植民地支配に反対したのは一部・・・賛成意見の例として挙がる一進会は植民地支配を回避するための「合邦」嘆願だった。 義兵闘争は日本の公式統計でも16700余に上るが、抗日運動を肯定・賛美者は無視する

・ 支配下で人口は急増した・・・簡易国勢調査が行われた1925年までの人口統計は、警務訪問による調査漏れが多く信用できない。以降の人口増加率は日本本土と同等の増加で朝鮮が急増とは言えない

・ 米の増産が農民を豊かにした・・・確かに米は増産されたが、それ以上に米は日本に移出され、農民は豊かになっていない

・ 慰安婦問題で日本国家に責任はない・・・戦前の廃娼運動でも公娼制度は奴隷制度の一種と認識されていた。人身売買による娼妓の身柄拘束は不法だが、娼妓・業者間の金銭貸借契約は有効という奇妙な法解釈で公娼が維持されていた。商売という説でも奴隷制になってしまう。ましてや・・・


水野直樹・藤永壮・駒込武編「日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する」(岩波ブックレット 2001.10.17)
はじめに
Q1・・・Q20


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