尹東柱ユンドンジュ「空と風と星と詩」

映画「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」や、NHKの「こころの時代」で、尹東柱を知った。詩は中学高校の頃にはよく読み、時には手慰みに書くこともあった。しかし、いまでは詩はまったく別の世界のものだ。それでも、尹東柱の詩は、どこか心に残る。それは、その澄み切った抒情性、素直さ、そして、隠れた強さと言ったものだ。

金時鐘氏は、こんな解説をしている。 

「たしかに尹東柱の詩作品は、時節や時代の状況からははずれているノンポリの作品です。 ですがその時、その場で息づいていた人たちと、それを書いている人との言いようのない悲しみやいとおしさ、やさしさが体温を伴って沁みてくる作品ばかりです」。

それにもかかわらず、尹東柱は民族詩人とか抗日の抵抗詩人と言われることもある。それは治安維持法で拘束され、獄死したからでもある。 あるいは、キリスト教の信仰に基づく信仰心に溢れた詩人だともみられる。しかし、金氏は、こんな見方を提供する。 

「あの極限の軍国主義時代、こぞって戦争賛美や皇威発揚になだれを打っていた時代、同調する気配の微塵もない詩を、それも差し止められている言葉でこつこつと書いていたということは、逆にすぐれて政治的なことであり、植民地統治を強いている側に通じる言葉を自ら断つ、反皇国臣民的行為の決意を伴っていたものです。ですので尹東柱の詩は、時節とは無縁の心情のやさしい詩であったがために、治安維持法に抵触するだけの必然を却ってかかえていた詩でもあったのでした」

時節にはるかに遠い優しさが、かえって政治的だったと、逆説的なことを言う。 しかも、あくまで朝鮮語にこだわる姿は、統治者の日本には許せない姿だったのだろう。

金氏が最後に語っています。 「遺稿詩集「空と風と星と詩」は、自己への問い返しが命題となって貫かれている詩集です。非命の詩人・尹東柱から教わったことは、顧みられない者への愛です」


尹東柱ユンドンジュ「空と風と星と詩」(岩波文庫 2012.10.16)
「空と風と星と詩」
「空と風と星と詩」以外の作品から
原詩
解説に代えて  編訳 金時鐘







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