多和田葉子「献灯使」

なかなかシリアスなディストピアの集まりだ。大震災、原発事故、大洪水・・・日本という国が消えてゆく、その後の人びとの暮らしと度重なる放射能汚染に翻弄されてゆく人びと。 

多和田氏の語りたかったこと、それはわからないが、はっきりしているのは、原発に依存し続けると未来はない、ということだろう。それを非常に間接的に、寓話的に、ファンタジックに、しかし、ひどく冷酷とすら言ってよいほどのクールさで伝えている、と私は思った。


多和田葉子「献灯使」(講談社 2014.10.30)
献灯使
韋駄天どこまでも
不死の島
彼岸
動物たちのバベル


<献灯使
いつからか街は汚染され、東京から人は離れ、政府は消え、国は鎖国して、食糧生産に長けた北海道や沖縄が力を持った。100歳を超える高齢者が減益として働き、子どもたちは健康に問題を抱えていた。義郎は曾孫の無命を育てている。歩行が困難な無命だが、教師の夜那谷は、無命を献灯使に推薦した・・・

<韋駄天どこまでも
東田一子は夫を癌で失い、孤独に暮らしていた。まだ一人で生きるために生け花教室に通い、そこで束田十子、テンちゃんと知り合った。二人で初めてお茶をしていた時、激しい地震に襲われた・・・

<不死の島
2013年天皇の会見のはずが怪しい男が原発を止めろと宣言、総理大臣は拉致された。日本政府は民営化された。なぜか年寄りは健康でぴんぴんし、若者がからだを壊していた。もう日本のパスポートすら放射能汚染が怖くて、入国審査で恐れられていた・・・

<彼岸
貨物や爆弾を運んでいた米軍の戦闘機が、故障か、バードアタックで墜落した。墜落場所がつい最近フランスの強力で作った原発だった。テロでなく単なる偶発的な事故だった。しかし、それで日本から何百万もの人々が、突然難民となって、船で隣国を目指した。中国は全ての避難民を受けれると表明した・・・

<動物たちのバベル
大洪水のあと、人間がいなくなった世界に集まる動物たちが、これからどうしようかと相談する芝居三幕





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