トニ・モリスン「「他者」の起源」

私のここ数年の最大の関心は、なぜ日本人は東アジアの人々に対する差別感情をもつようになったかという問題だ。 それとはもちろん環境も歴史もまったく違うけれども、アメリカ人、(「アメリカ人」という言葉は白人を内包している)の黒人に対する差別の「起源」が分かれば、多少は参考になるかもしれない、というのがこの本を手にした動機だ。しかし、残念ながら…
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山折哲雄「老いと孤独の作法」

山折哲雄氏の著作はよく目にしていて、基本的には信頼に足る哲学者だと思っている。 ただ、仏教哲学とそれに裏打ちされた思想を好ましいものとして受け止めてはいるが、決してよく理解しているわけではない。 この新書本は、2005年から2018年にわたって文藝春秋などに掲載されたものをまとめている。とくに根幹の議論があるわけではないので、興味を惹い…
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柚木麻子「マジカルグランマ」

柚木麻子氏はたぶん初めての体験だ。諧謔というのだろうか、ちょっと苦いところもあるが婆さん女優の、自分が有名になって好きな仕事したい、というはた迷惑な我が儘し放題だが応援せざるをえなくなるような頑張り。 「マジカルグランマ」とは、作中登場人物のある女性が、正子が大好きな「風と共に去りぬ」のスカーレットの乳母であるマミーをマジカルニグ…
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映画「いつだってやめられる} シリーズ

渋谷文化村のル・シネマで上映されていた「いつだってやめられる」シリーズ、変な題名の変な映画と思っていたが、WowoWで上映されていた。ル・シネマで上映するくらいだから一定の評価を得られている映画なんだろう。 確かに、一級のエンターテインメントといっていい。ただ、私が何よりも、この映画でびっくりしたのは、その映像の色彩感覚だ。 予算…
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映画「テルマ」

ラース・フォン・トリアー監督の親類と言われるヨアキム・トリアー監督の作品。予告編を見て、本編をみたいと思っていたが見逃していた。 Wowowで放映され、たいへんうれしい。期待に違わず、すばらしい映画だった。ホラー映画は基本的には嫌いなのだけれども、ときに美しいホラー映画が出現することがある。たとえば「私のオオカミ少年」「ぼくのエリ200…
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ポール・コリアー「エクソダス 移民は世界をどう変えつつあるか」

見かけとは異なるが、内容はたいへん学術的なものだった。移民を取り巻くイデオロギーも感情論もまったくなく、移民について、データや研究せてかに基づく実証的な方法で、政治的、経済的、社会的な影響やダイナミズムをとらえようとしている。 読みにくいわけではないが、精緻な言及でたいへん読み応えがあって、残念ながら期限内に読み切れなかった。 全…
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映画「マリッジ・ストーリー」

皮肉な警句作家なら、結婚とは、愛し合っているかどうかに関わらず傷つけ合いと罵倒し合いをゴールとする制度である、というかもしれない。そして、離婚とは、夫も妻も敗者となり、弁護士だけが勝者となる闘い、というかもしれない。もっとも、アメリカ社会では、という前提がつくかもしれない。 私の大好きな名作である「フランシス・ハ」の監督であるノア…
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映画「ジョジョ・ラビット」

ヒトラー・ユーゲントをある意味茶化したブラック・コメディと思いきや、意外にシリアスな展開になり・・・・。ウサギも殺せないと馬鹿にされながらも、立派なヒトラー・ユーゲントの団員になるのだと、尊敬するヒトラーにいつも心のなかで語りかけるジョジョ。 しかし、ジョジョの両親はドイツは愛しているが反ヒトラーの活動をしている。母親ロージイ(スカーレ…
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多和田葉子「献灯使」

なかなかシリアスなディストピアの集まりだ。大震災、原発事故、大洪水・・・日本という国が消えてゆく、その後の人びとの暮らしと度重なる放射能汚染に翻弄されてゆく人びと。  多和田氏の語りたかったこと、それはわからないが、はっきりしているのは、原発に依存し続けると未来はない、ということだろう。それを非常に間接的に、寓話的に、ファンタジッ…
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リチャード・H・スミス「シャーデンフロイデ」

たいへん面白いテーマなのだが、私の頭では、幅広い話についてゆけず、また題材の多くがアメリカの有名人やTV番組だったりして、話のニュアンスもつかみづらい。そんなこんなで、久しぶりに全部読み切れない本となった。 途中飛ばしたところが少なくないから、肝心なところを読んでいない可能性は高いから、あまり得手勝手な評価につながるコメントは避け、興味…
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映画「パラサイト 半地下の家族」

たいへん期待して見に行ったのだが、もちろんよくできた素晴らしい映画だけれども、期待が大きすぎたかもしれない。それにソン・ガンホ主演だから面白いコメディだと勝手に誤解していた。コメディには違いないが結構シリアスで、ブラック度がきつい。  坂の上の高級住宅街の豪邸に、パク・ドンイク(イ・ソンギュン )、パク・ヨンギョ(チョ・ヨジョン)…
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映画「ティーンスピリット」

二歳半の、あの伝説的なブランコシーンのときから、親戚のおじさんのように可愛がって見続けていた私のようなエルのファンは大喜びだが、そうでない人で、純粋に映画だけをみている人にはどうなんだろう。 というのも、エルのための、エルだけの映画だからだ。   しかし、エルの歌が予想以上に上手だったと大喜びのエルのファンでも、マリウス・デ・ヴリ…
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マレーナ&ベアタ・エルンマン他「グレタ たったひとりのストライキ」

最近よく目にするグレタ・トゥーンベリさんだが、その主張を読んだことはなかった。巻末に「グレタの主張」として各地でおこなったスピーチが掲載されている。読んで思った。アル・ゴアの映画などを見て分かっている気になっていたが、まったくわかっていなかった。そして、読後の印象を端的に言えば、この子はすごい、この子の言葉にはまったく反論できない、この…
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映画「家へ帰ろう」

主演のミゲル・アンヘル・ソラ、かなり怖い顔で、悪役が似合いそうな人だが、ラテン系では有名俳優らしい。 その余命いくばくもない爺さんノアブラハムが、子どもたちに騙されて老人ホームに入れられる前日、遥か昔の約束を果たそうと、アルゼンチンから故国ポーランドに向かう、ロード・ムービー。 ナチス支配下のポーランド、ユダヤ人一家の仕立て屋の家…
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山本晴太・殷勇基他「徴用工裁判と日韓請求権協定」

2018年10月30日の日本製鐵徴用工事件に対する韓国大法院再上告審判決は、日本政府などに強い反発を招いたが、その流れは、2012年の日本製鐵徴用工事件大法院上告審判決で既に決まっていたことを踏襲したに過ぎなかった。つまり、文在寅政権の方針でもなく、保守の李明博政権の時に既に定まっていた。2018年まで実現しなかったのは、朴槿恵政権に忖…
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映画「500ページの夢の束」

ダコタ・ファニングは「I am Sam」(2001)から始まり、「TAKEN」(2002)、「マイ・ボディガード」(2004)までは、とにかく可愛かった。 しかし、「ハテド・アンド・シーク」(2005)、「宇宙戦争」(2005) あたりから、複雑な事情を持つ陰のある、あるいは可愛げのない嫌な感じの女の子の役が増えた印象がある。  …
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安田浩一「愛国という名の亡国」

安田浩一氏の著作は、それなりに目を通しているので、この本に格別新しく感じるトピックはなかったように思う。 「愛国」というところに引かれて手にしたのだが、殊更「愛国」について書き下ろしたものではなく、現在の右翼、政権を批判する人を貶めるデマ、沖縄や在日・中韓に向けられるヘイト、差別・・・などの広い話題を集めているが、それらが底辺で「愛国」…
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シモーナ・スパラコ「誰も知らないわたしたちのこと」

愛し合い、夫婦二人とも待ち望んだ子どもができた。29週になって、出生前診断で超音波検査をしたら、胎児の異常が見つかった。骨格異形成証と言われる。出産に耐えられるかどうかわからない、耐えられたとしても長く生きられることは期待できない、医師の一人は、イタリアの法律ではもう中絶することはできないから神様に委ねようという。別の女性医師は、生まれ…
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映画「カメラを止めるな!」

私はゾンビ映画は嫌いで映画館では観ないので、この映画がヒットした時も見に行くことはなかった。 WowoWで早くも放映されていたので、いちおう見たのだけれども・・・はっきり言って、なんであんなに流行っていたのかいまだにわからない。 確かにゾンビ映画というよりも、映画作りを頑張る奇妙な人々のコメディとしてみれば、それなりの力作かもしれないけ…
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映画「運び屋」

クリント・イーストウッド監督の映画は、どれも、どうしてこうも見事にまとまるのだろう。 映画ってのはこういうもんだ、こういう終わり方をするもんだって、言っているように、見事に終わって行く。  デイリリーという花の栽培で名声を得ることにうつつをぬかし、妻や子供を一切顧みることのなかった男アール(クリント・イーストウッド)は、その花の商…
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映画「マイ・プレシャス・リスト」

私の好きなジャンル、ラブコメ・青春もの、といっていいけれど、主人公のキャリー(ベル・パウリー)が、超天才で飛び級を繰り返しハーバードを卒業してもまだ酒を飲めない年齢というところ、そして引きこもり気味で、父親の友人の精神科医にセラピーを受けている、といったところがちがうかな。  セラピストから指示され、仕方なく、幸せになるためのリス…
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恩田陸「祝祭と予感」

「蜜蜂と遠雷」の続編というよりは、おまけ、スピンオフといった感じの本。あまりに完成度が高く、面白かったから、その前後のエピソードを追加したくなる気持ちはわからないでもないが、同程度の続編ならすごい!と思うけれど、この短編の積み重ねでは、ちょっとねぇ・・・という感想だ。 まあ、「蜜蜂と遠雷」の余韻を楽しむにはふさわしい。 ところで、…
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