ブロニー・ウェア「死ぬ瞬間の5つの後悔」

「死ぬ瞬間の5つの後悔」というタイトルだけでは、想像つかない側面がある。それは、筆者ブロニーの半生記でもあるという面だ。 「5つの後悔」は、ブロニーが介護の仕事をして看取った人々の思いなどを挙げているが、それ自体は必ずしも目新しいものではない。 この本の特色は、ブロニーの並外れたポジティブな人生観、しかも不遇や孤独や鬱のときも経験したうえでのものだ。

ブロニーはオーストラリアの牧場に生まれ育ち、金融業界で仕事したあと、金融業界は自分に合わないと辞め、イギリス、中東などへの放浪の旅にでたり、オーストラリアの各地でバーテンダーやアダルトビデオ貸し出しや、その他いろんな仕事をした。1年半くらいになると新しい土地や新しい仕事に就きたくなる、そんな、自由で、ある意味勇気ある、キャリアなどにこだわらない、闊達な暮しをしていた。極論すればホームレスと言ってもいいのだが・・・。 

公衆トイレで体を洗っている私に、「この人が私をどんなにひどい奴だと思っても、私の自己評価の方が悪いはずだ。だから私は気にしなかった。そしてこれまで終末期の患者たちと過ごしたおかげで、人の評価がまったく気にならなくなっていたし。自分への批判なら、自分の頭の中で十分すぎるほどしている」

住まいや仕事だけではない、ブロニーはずっと、瞑想を続けているし、感謝日記をつけている。「私は20年前から感謝日記をつけている。一日の終わりにその日に感謝したことをいくつか書き留めておくのだ」、いわば、ポリアンナ現象のようなものだ。「「微笑とともに知る」と「感謝とともに知る」は私のおまじないになり、私はできる限り、毎日を微笑みながら過ごすようになった」という。 そして、驚くことに、アーティストとしても活動し、自作の歌を歌うステージなども催していたという。

住み込み介護の仕事にはいったのは、創作的な仕事に役立つし、家賃の心配がない、そして、こころによいことだから。 それから、8年以上も、いろいろな人の介護を続け、その都度、親身に世話するから死に面しての本当の気持ちを互いに語り合うことが出来る。

ブロニーも、ブロニーが看取った死にゆく人のなかで前向きなひとも、運命や人のせいにせず、自分で自分の人生を変えようという気持ちが強い。それでこんな言葉がある。

「私が人生について学んだ一番大切なこと、何よりも大切なことは、共感は自分からはじまるということだ」

更に、こんなことも。誰でも言いそうなことではあるけれども、死を目前にした人が言う言葉は説得力がある。

「共感と裏切られたという思いは紙一重なのよ。でも共感は自分への優しさから生まれるもので、自分を癒す力になるわ。運命を恨み続けることは自分を傷つけるし、時間の無駄ね。他人を寄せ付けなくなってしまうだけじゃなくて、本当の幸せを知る機会をなくしてしまう。どんなことも誰のせいでもないのよ」

「運命に裏切られたという態度をとりつづける人も多いけれど、それで何になるというの。自分で自分を不幸にしているだけよ。全然運命のせいなんかじゃない。誰のせいでもないわ。自分の人生に責任を持てるのは自分だけ。人生を精一杯生きるには、自分に与えられたものをありがたいと思い、不幸だと思い込まないことね」

ブロニーもさらりと付け加える。

「人生は自分のものであり、他の誰のものでもない。自分の人生に幸せを見つけられず、その状態を改善しようともしていない人は、日ごとに訪れる幸せを無駄にしている。小さな一歩やちょっとした選択、それから自分の幸せに責任を持つことが、大切な出発点だ。 幸せな人生を見つけるには、引っ越しなどの物理的に大きな変化は必要ない。物事の見方を変え、自分の望みのいくつかを尊重する勇気を持てばいいのだ」

「最期を迎えた人々が一番大切だと思うのは、愛する人をどれだけ幸せにできたか、それから自分は好きなことにどれだけの時間を費やせ高田」



タイトルの「5つの後悔」だけを知りたい人には、ブロニーの人生の話はとくに知りたくないかもしれないし、そのために、とても長い本になっている。でも、この本のポイントは、「5つの後悔」の内容よりも、ブロニーの半生記にあると、わたしはおもう



ブロニー・ウェア「死ぬ瞬間の5つの後悔」(新潮社2012.12.15)
プロローグ 人生は転換する
ヘルパーになるまで
後悔一 自分に正直な人生を生きればよかった 
期待に応える人生を 環境に染まる とらわれる
後悔二 働きすぎなければよかった 
バランス 人生の意義 シンプルさ
後悔三 思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
       現実を直視できない 罪悪感 本当の好意
後悔四 友人と連絡を取り続ければよかった
       孤独 本当の友達 友情の大切さ
後悔五 幸せをあきらめなければよかった
       幸せは選べる 今この瞬間の幸せ とらえ方の問題
その後
エピローグ 微笑とともに知る




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