多和田葉子「献灯使」

なかなかシリアスなディストピアの集まりだ。大震災、原発事故、大洪水・・・日本という国が消えてゆく、その後の人びとの暮らしと度重なる放射能汚染に翻弄されてゆく人びと。  多和田氏の語りたかったこと、それはわからないが、はっきりしているのは、原発に依存し続けると未来はない、ということだろう。それを非常に間接的に、寓話的に、ファンタジッ…
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リチャード・H・スミス「シャーデンフロイデ」

たいへん面白いテーマなのだが、私の頭では、幅広い話についてゆけず、また題材の多くがアメリカの有名人やTV番組だったりして、話のニュアンスもつかみづらい。そんなこんなで、久しぶりに全部読み切れない本となった。 途中飛ばしたところが少なくないから、肝心なところを読んでいない可能性は高いから、あまり得手勝手な評価につながるコメントは避け、興味…
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映画「パラサイト 半地下の家族」

たいへん期待して見に行ったのだが、もちろんよくできた素晴らしい映画だけれども、期待が大きすぎたかもしれない。それにソン・ガンホ主演だから面白いコメディだと勝手に誤解していた。コメディには違いないが結構シリアスで、ブラック度がきつい。  坂の上の高級住宅街の豪邸に、パク・ドンイク(イ・ソンギュン )、パク・ヨンギョ(チョ・ヨジョン)…
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映画「ティーンスピリット」

二歳半の、あの伝説的なブランコシーンのときから、親戚のおじさんのように可愛がって見続けていた私のようなエルのファンは大喜びだが、そうでない人で、純粋に映画だけをみている人にはどうなんだろう。 というのも、エルのための、エルだけの映画だからだ。   しかし、エルの歌が予想以上に上手だったと大喜びのエルのファンでも、マリウス・デ・ヴリ…
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マレーナ&ベアタ・エルンマン他「グレタ たったひとりのストライキ」

最近よく目にするグレタ・トゥーンベリさんだが、その主張を読んだことはなかった。巻末に「グレタの主張」として各地でおこなったスピーチが掲載されている。読んで思った。アル・ゴアの映画などを見て分かっている気になっていたが、まったくわかっていなかった。そして、読後の印象を端的に言えば、この子はすごい、この子の言葉にはまったく反論できない、この…
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映画「家へ帰ろう」

主演のミゲル・アンヘル・ソラ、かなり怖い顔で、悪役が似合いそうな人だが、ラテン系では有名俳優らしい。 その余命いくばくもない爺さんノアブラハムが、子どもたちに騙されて老人ホームに入れられる前日、遥か昔の約束を果たそうと、アルゼンチンから故国ポーランドに向かう、ロード・ムービー。 ナチス支配下のポーランド、ユダヤ人一家の仕立て屋の家…
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山本晴太・殷勇基他「徴用工裁判と日韓請求権協定」

2018年10月30日の日本製鐵徴用工事件に対する韓国大法院再上告審判決は、日本政府などに強い反発を招いたが、その流れは、2012年の日本製鐵徴用工事件大法院上告審判決で既に決まっていたことを踏襲したに過ぎなかった。つまり、文在寅政権の方針でもなく、保守の李明博政権の時に既に定まっていた。2018年まで実現しなかったのは、朴槿恵政権に忖…
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映画「500ページの夢の束」

ダコタ・ファニングは「I am Sam」(2001)から始まり、「TAKEN」(2002)、「マイ・ボディガード」(2004)までは、とにかく可愛かった。 しかし、「ハテド・アンド・シーク」(2005)、「宇宙戦争」(2005) あたりから、複雑な事情を持つ陰のある、あるいは可愛げのない嫌な感じの女の子の役が増えた印象がある。  …
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安田浩一「愛国という名の亡国」

安田浩一氏の著作は、それなりに目を通しているので、この本に格別新しく感じるトピックはなかったように思う。 「愛国」というところに引かれて手にしたのだが、殊更「愛国」について書き下ろしたものではなく、現在の右翼、政権を批判する人を貶めるデマ、沖縄や在日・中韓に向けられるヘイト、差別・・・などの広い話題を集めているが、それらが底辺で「愛国」…
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シモーナ・スパラコ「誰も知らないわたしたちのこと」

愛し合い、夫婦二人とも待ち望んだ子どもができた。29週になって、出生前診断で超音波検査をしたら、胎児の異常が見つかった。骨格異形成証と言われる。出産に耐えられるかどうかわからない、耐えられたとしても長く生きられることは期待できない、医師の一人は、イタリアの法律ではもう中絶することはできないから神様に委ねようという。別の女性医師は、生まれ…
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映画「カメラを止めるな!」

私はゾンビ映画は嫌いで映画館では観ないので、この映画がヒットした時も見に行くことはなかった。 WowoWで早くも放映されていたので、いちおう見たのだけれども・・・はっきり言って、なんであんなに流行っていたのかいまだにわからない。 確かにゾンビ映画というよりも、映画作りを頑張る奇妙な人々のコメディとしてみれば、それなりの力作かもしれないけ…
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映画「運び屋」

クリント・イーストウッド監督の映画は、どれも、どうしてこうも見事にまとまるのだろう。 映画ってのはこういうもんだ、こういう終わり方をするもんだって、言っているように、見事に終わって行く。  デイリリーという花の栽培で名声を得ることにうつつをぬかし、妻や子供を一切顧みることのなかった男アール(クリント・イーストウッド)は、その花の商…
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映画「マイ・プレシャス・リスト」

私の好きなジャンル、ラブコメ・青春もの、といっていいけれど、主人公のキャリー(ベル・パウリー)が、超天才で飛び級を繰り返しハーバードを卒業してもまだ酒を飲めない年齢というところ、そして引きこもり気味で、父親の友人の精神科医にセラピーを受けている、といったところがちがうかな。  セラピストから指示され、仕方なく、幸せになるためのリス…
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恩田陸「祝祭と予感」

「蜜蜂と遠雷」の続編というよりは、おまけ、スピンオフといった感じの本。あまりに完成度が高く、面白かったから、その前後のエピソードを追加したくなる気持ちはわからないでもないが、同程度の続編ならすごい!と思うけれど、この短編の積み重ねでは、ちょっとねぇ・・・という感想だ。 まあ、「蜜蜂と遠雷」の余韻を楽しむにはふさわしい。 ところで、…
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ハンス・ロスリング「FACTFULLNESS」、評判通りのお薦め本

冒頭に13問の三択質問がある。三択だから正答率は33%だ。世界のビジネスマンでもジャーナリストでも学生デモ、筆者の言葉では、チンパンジーでも33%取れるのに、みなチンパンジーよりも正答率が低いという。たとえば、「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」の問いに対して、「A.20% B.40% C.60%」と…
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映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」

J.D.サリンジャーはなぜ出版をやめ、隠遁してしまったのか。それに対する答えが明快なわけではない。明快であるはずもないが、創作し始めたときから、自分の創作にこだわり、ね妥協というものは知らなかった。修正すれば出版できるという話も抵抗感が強かった。もっとも、最初にニューヨーカーに掲載された時も、修正の要求も、ひとつの視点に過ぎず、参考にす…
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映画「見えない太陽」

冒頭皆既日食があるから、「見えない太陽」という邦題にしたのかもしれない。 原題は、「夜よさようなら」の意味だが、それもよく意味が分からない。 フランスの片田舎、牧場主のミュリエル( カトリーヌ・ドヌーヴ) は、久しぶりにやって来た孫息子のアレックスがイスラム教に改宗していたと知る。 そして、恋人のリラと、カナダに行くと言っているが、それ…
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映画「スパイダーマン:スパイダーバース」

エンド・タイトルがすばらしくかっこいい。あと全編、アニメーションの映像が独特の素晴らしさがある。ストーリーは、いつものやつ、つまり、仲間がいる、ひとりじゃない、君だってできる・・・と、別に大したものではないが、この、アニメらしくない映像だけでも見る価値は或る。 ある日、放射能クモにかまれたマイルスは、スパイダーマンになっている。で…
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関裕二「検証 邪馬台国論争」

古くは松本清張などが歴史学者の世界に殴り込みをかけたかのような話題もあった、有名な邪馬台国論争だが、関連するものを読んだことはなかった。古代史は面白いとは思うが、どこかという所在地の議論にはあまり興味がなかった。 あらためて筆者がまとめた論争の経緯や、論点などを知ると、大陸・半島との関連、渡来人と縄文人、鉄の流通、出雲・吉備との関…
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今年一年のまとめ-書籍ノン・フィクション編

今年一年のまとめ-書籍ノン・フィクション編 年ごとに読書力も落ちてゆき、好奇心も長続きせず、新しい分野の本が少ない、またビジネス書、経済の書もずいぶん減った。これはまあ当然かもしれない。結果的に、人権関連の熱のこもった本が多くなった。 印象に残った本・ベスト10 1 林えいだい「筑豊・軍艦島 朝鮮人強制連行、その後」(…
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今年一年のまとめ、映画篇。

今年のまとめ、映画篇。  今年はあまり映画を見なかった。値上げの影響も大きいし、あまり見たいと思う映画も多くなかった。結果的にもあまり実り多くなかった 今年観た映画、印象に残ったベストテン-フィクション 1 「記者たち 衝撃と畏怖の真実」(ロブ・ライナー)  2 「ジョーカー」(トッド・フィリップス 2019 ) …
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今年一年のまとめ-書籍フィクション編

今年一年のまとめ-書籍フィクション編 年ごとに読書力も落ちてゆき、最新の小説にはなかなか手が出ない、古典は読みたいが、やはり手が出ない、ということで、偶然、韓国の書き手の本が並んだ。 印象に残った本・ベスト10 1 ハン・ガン「少年が来る」(クオン 2016.10.31) 2 リチャード・フラナガン「奥のほそ道」(白…
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映画「スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班」

コン・ヒョジンはラブコメ女王のときとはうってかわって、アクション・サスペンス映画の時はカッコいい。 ラブコメドラマ「嫉妬の化身」で共演したチョ・ジョンソク、「応答せよ1988」が好評だったリュ・ジュンヨルが、それぞれいい味を出している。 コン・ヒョジン主演だから見に行くのであって、特にどうってことないB級アクション映画だ。 ただの…
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映画「ある女優の不在」

ジャファル・パナヒ監督役で出ている、ジャファル・パナヒ本人、どこかで見覚えあると思ったら、「人生タクシー」だった。パナヒ氏はイランでは映画製作禁止にもなった反体制作家であり、この映画が、イランにおける女性・女優の境遇、映画などの芸能・芸術の危うい地位について語っていることかわかる。 ロクな道もない田舎の村に住み女優に憧れる娘、その娘から…
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徐京植(ソ・キョンシク)「皇民化政策から指紋押捺まで」

かなり古いブックレットで、1985の外国人登録に関わる指紋押捺拒否が1万人を超えるというあたりの記事が最新の内容となっている。 で、吉田清治氏の証言など、いまでは、あまり信用できない内容も含まれているので、現在では、内容全体の信頼感は若干欠けている。 それでも、おおよそは間違いではないし、筆者の主張は、そんなことでは変わらないだろう。な…
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映画「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり」

前作があまりに素晴らしかったので、どんな続編でも見劣りしただろうと思う。 うまく前作の少年少女たちを取り入れて、変化を最小にしたことが、功を奏している。それだけ特色には欠けるが、連続性があり前作の余韻を思い出させてくれる。 デリーにただひとり残ったマイク(イザイア・ムスタファ)は、あれから27年経ったある日、ルーザーズ・クラブの面…
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安東量子「海を撃つ 福島・広島・ベラルーシにて」

300ページ弱の、なかなか濃密な、陳述、告白といったニュアンスさえ感じる重く繊細なエッセイである。四分の一程度まで進んだところでは、筆者は、なんとなく面倒くさい人、理屈っぽい人という印象だったが、徐々に、筆者の語ることは、もちろん他者の影響はあるにせよ、ゼロから自分で体験し、見聞きし、考えたことであって、どんなイデオロギーにも、政治的立…
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大澤絢子「親鸞「六つの顔」はなぜ生まれたのか」

親鸞が語られるときの「六つの顔」について。それだけの顔があるということは、つまり、親鸞が何者なのかよくわかっていない、ということでもある。実在否定説まであったとか。「親鸞という実在の人物に絡みついた無数の糸を解きほぐし、「如来の化身」・「法然の弟子」・「説法者」・「本願寺の親鸞」・「妻帯した僧」・「「歎異抄」の親鸞」という、親鸞の「六つ…
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映画「それだけが、僕の世界」

イ・ビョンホンが冴えない孤独な元ボクサーで、前半は冴えないままの映画で退屈する。ガラリと変わるのは、弟のオ・ジンテが街角におかれたピアノでショパンを弾き始めてからだ。ガラッと映画のリズム迄変わった。 「アメリカでは満38歳、この国では40歳」と、スパークリングの相手としては年寄過ぎるのではと訝しむ相手にそう答えるジョハ(イ・ビョン…
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姫野桂「発達障害グレーゾーン」

ライの小説を読むと自分もハンセン氏病じゃないかと疑い、ガンの話を読めば自分も癌じゃないかと思う。そして発達障害の解説書を読めば、自分にもその傾向があるあると。なんとも頼りない性癖の持ち主だが、自分も発達障害かもしれないと思う人は結構多いのではないか。 発達障害の人と健常者の境い目がはっきりしているわけじゃなく、たいへんグレーなのだ…
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